認知症でも元保育士らしく子守に張り合い 「しない介護」とは

それぞれの最終楽章・ラガーマンの宅老所(2)

ジャーナリスト 古川雅子さん

 昨秋、千葉県の宅老所「いしいさん家(ち)」から天国に旅立ったお富さんこと瀧浦富子さん(享年84)は2012年5月、まず最初にデイサービスを利用し始めた。実は別の事業所から「困難事例」として引き継がれた人だった。当時は70代半ばで、認知症が進んでいるが団地の5階に一人暮らしをし、何年も風呂に入っていなかった。

 長女の市川福子さん(54)によると、「あのころ地域のデイサービスを片っ端から見学させたけど、本人は断固拒否。体操や遊戯などのレクリエーションにも見向きもしなかった」。そんな母への最後の切り札として選んだのが、いしいさん家だった。

 当初はスタッフが団地に迎えに行っても、お富さんは一歩も出てこなかった。そこで代表の石井英寿(ひでかず)さん(48)がスタッフの息子を“おとり”に使う作戦に出た。幼いタケちゃん(当時3)の手を引いて階段を上がっていく。そして玄関ベルを鳴らした後、戸口に立ったお富さんに一芝居、打った。

 「子どもを預かってるんです…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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