語り部「昔からある話かと…」創作者も戸惑う新しい民話

 東北最大級のツツジ園として知られる寒河江市の長岡山。山の頂上に立つマツの木を巡って、こんな「伝説」が語られている。

 昔、山形盆地が「藻(も)が湖(うみ)」と呼ばれる湖だった頃、東根に怪物「大とかげ」が現れた。大とかげは湖を渡り、対岸の寒河江の町を荒らした。人々は長岡山のマツ林に逃げ込んだが、大とかげはなおも追ってくる。すると林の奥から大蛇に変身したマツの精霊が現れ、大とかげと戦い始めた。大蛇は大とかげをのみ込み、マツの木に姿を変えた――。

 「大とかげ退治の大蛇松」と呼ばれる物語だ。マツの脇には看板が立ち、地元で親しまれる民話として、おはなし会や紙芝居などでたびたび披露されている。県内の民話を集めたCDにも収録されたという。 ところがこの物語、実は意外と新しい。元市職員の工藤恒雄さん(66)によると、20~30年前に工藤さんらが「寒河江新伝説」として創作した民話の一つだという。物語を考えたのは、長岡山のマツの保護や観光につなげようとの思いから。マツの形がトカゲをのみ込んだヘビのようにも見えることから着想を得て、地元に伝わる「藻が湖伝説」などを織り交ぜた。

 おはなし会の語り部の女性は「てっきり昔からある話だと思っていました」。工藤さんは「いつの間にか伝説のようになってしまった」と戸惑いつつ、「でも伝説や民話はこんな風に生まれるものなのかもしれませんね。桃太郎にだって、作者がいたのでは」。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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