謝罪の手紙、震える手で書いた 帰国かなわなかった技能実習生の悔悟

 「どうもこんにちは」

 そのベトナム人男性は昨年10月、東京都内にある出入国在留管理庁の施設でアクリル板越しに記者に一礼した。母国へと強制送還される直前のことだった。

ベトナム人男性が強制送還前に収容された出入国在留管理庁の施設=2022年1月21日、東京都港区、田中紳顕撮影

 技能実習生として来日してから約3年。男性はホッとしたような表情で「やっと帰国できます」と切り出し、日本での体験を語り始めた。

「3年の辛抱」の果てに

 20代前半の男性は、首都ハノイで生まれ育った。体が弱い父親は働けず、母親が寝具作りで家計を支えた。姉は早くに家を出ており、男性が両親を養う必要があった。そんな中で知ったのが技能実習だった。

 日本に抱いていたイメージは「高いビルに新しい車」。技術があればベトナムで稼げると思い、仲介業者への手数料として約90万円を工面した。ベトナム政府が定める上限額(3600米ドル)の倍以上だった。半年かけて語学などを学び、2018年春、3年間の予定で来日した。

 実習先は栃木県内の溶接会社で、住み込みで働いた。自室は7畳の一間。田畑に囲まれ、想像していた暮らしとは違った。職場の日本人は丁寧に仕事を教えてくれた。残業や休日勤務はなく、週末は実習生仲間と食事を作るなどして息抜きをした。

 ただ、手取り約10万円の給料には不満があった。寮費と光熱費で計4万円、借金返済と仕送りで計4万円が飛び、残りは食費に消えた。

3年間の技能実習を終え、帰国を心待ちにしていた男性。その希望を打ち砕く出来事が、生活を暗転させました。

 在日ベトナム人が使うSNS…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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