距離忘れ刻む交流 関係人口づくりオンラインで “リアル訪問”の布石に(日本農業新聞)

 新型コロナウイルスの影響で人の往来が難しくなる中、都市に住みながら農山村に関わる「関係人口」を生み出すため、インターネットを介した「オンライン交流」から始める地域が出てきた。現地に訪問できなくても、画面上で対話し、地元の生の声や農村風景の映像を届けて愛着を深めてもらう。布石を打つことで、関係人口を確保する試みだ。(石原邦子)  川沿いを歩き、草花を見つけると立ち止まってタブレット端末のカメラを向ける。「これはタケニグサ。村の子どもが手折って遊ぶ草ですよ」。説明する相手はそこにいない。オンラインで、遠隔地にいる相手に映像と音声を届ける。  群馬県片品村で、地域おこし活動に携わる中村茉由さん(31)と地元農家の星野学さん(42)が考案したオンラインツアーの一幕だ。参加したのは、中村さんが主宰する片品村地域おこし研究会と交流する成蹊大学経営学部(東京都武蔵野市)の学生7人。コロナ禍で学生が来られないため企画した。  学生は村から100キロ以上離れた東京にいながら、画面越しに村の自然を楽しんだ。参加した佐藤魁さん(20)は「映像や会話に手作り感があって、一緒に散歩している気分になれた。早く村に行きたい」と期待を膨らませる。  村の若者の多くは高校卒業後、地域を出ていく。村の高齢化率は39・6%。中村さんは「若者がいないと地域に元気が出ない。ただ、都市から現地に来て交流するのは今は難しい。まずはオンラインで村を知ってもらってファンを増やしたい」と、交流を続けていくことを重視。今後は移住希望者向けの企画も考えている。  熊本県五木村で特産品販売などを手掛ける企業、日添は、全国の地域おこし協力隊員らと協力し、各地の特産品に地元住民とのオンライン交流などを加えた商品「#旅するおうち時間」を考案した。コロナ禍で減った観光客数を回復させるには、実際に訪れてもらわない形で地元の魅力を知ってもらう必要があると考えた。  全国6地域が参加し、これまでに600セットを販売。オンライン交流には延べ300人が参加し、実際に現地に足を運んだ人もいるという。同村は地元産の豆乳や蜂蜜などを送り、オンラインで豆乳の特徴や村の暮らしを紹介。「ミツバチの巣箱を見に行きたい」「一緒に事業をしたい」といった声が届いた。  同社代表の日野正基さん(33)は「顔を合わせて話すと一体感が生まれる」と実感。オンライン交流参加者を対象に、農業体験などを盛り込んだ地元案内ツアーを準備する。  同村は人口減が進み、現在は1000人程度。日野さんは「オンライン交流をきっかけに村を深く知ってもらい、いずれは移住する人が出てきてほしい」と期待する。

地域伝える人材必要 法政大学 図司直也教授

 関係人口に詳しい法政大学現代福祉学部の図司直也教授は、オンライン交流について「顔を合わせた対話は、互いをよく知る機会になる」と評価。受け入れ側にはニーズを把握する場になり、訪問する側も交流のイメージがより明確になるといった利点を挙げる。「受け入れ側には、地域を客観視し、魅力を掘り起こし、伝えることができる人材が必要」と指摘する。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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