身元はっきりなのに「無縁」納骨堂に 核家族化のすき間を埋めるのは

 神奈川県横須賀市の丘の地形を利用してつくられた貯蔵庫の奥には、無縁者のための納骨堂があった。入り口のシャッター前に「無縁」「霊」などの文字が彫られた石像が番人のように建っている。手をあわせて中に入ると、洞窟のようにヒンヤリとしていた。真っ暗なので懐中電灯で周囲を照らした。

 コンクリで固められた広い四角い部屋に置かれた簡素なステンレス製の棚に様々な骨つぼが所狭しと並んでいる。桐(きり)製の骨つぼや菊の刺繡(ししゅう)が施されたシルバーの骨箱、紙袋に入ったままのものなど様々だ。

 江戸時代から港町の浦賀(現・横須賀市)には、村が管理する無縁者のための納骨堂があった。平成に入り横須賀海軍墓地があった馬門山墓地にも、市が新たに合葬墓をつくった。ここもやがて満杯になったため、18年に浦賀と馬門山を閉じ、一部を新納骨堂へ移し、残りは残骨灰処分事業者が処分した。

 かつては無縁納骨堂に納められるのは「行旅死亡人」と呼ばれる身元不明者がほとんどで、骨壺などには番号が振られていたという。だが、現在は、担当したケースワーカー、預かった年月日、名前などが記された紙が貼られている。身元がわかっていても引き取り手がおらず、「無縁」となっている。

 「今では9割以上、身元がわかっている人のお骨がここへやって来る」。横須賀市終活支援センター福祉専門官の北見万(かず)幸(ゆき)さんは話す。

身元がわかっているのに、無縁納骨堂に納められる遺骨が増えています。身寄りのない人たちの最期をどうサポートするか。行政の取り組みを追いました。

 墓地埋葬法では、誰も葬儀をする人がいないときは、自治体が火葬する義務を負うことが決められている。市役所の倉庫などで遺骨を数年間、保管し、市の職員が住民票、戸籍などをたどり、親族など遺骨の引き取り先を探すが、拒否されたり、行き先が見つからなかったりすると、横須賀市の場合、最終的にここにくるという。

「無縁」だと、緊急入院も断られる場合も

 横須賀市では、15年から2…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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