車いすシートベルト 現場の「盲点」、送迎者が有罪に 

 車いすの人を運ぶ「福祉車両」に車いす用のシートベルトを着けて乗っていたのに、急ブレーキなどで転倒し、けがや死亡に至るケースが後を絶たない。送迎者が、罪に問われるケースも出ている。事故から身の安全を守るはずのシートベルトがなぜ、車いすの人の役に立たなかったのか。(森下裕介)

拡大する車いす用シートベルトを、左側の手すりの上にかけると、腰の左側部分のベルトが体から離れて浮いてしまう=2021年4月28日午後2時5分、大阪府豊中市、森下裕介撮影

 2019年5月、大阪市平野区の交差点。30代のある歯科助手が、老人ホームに入所していた車いすの女性(当時70)を介護用自動車の後部に乗せ、診療所に向かっていた。歯の治療を受ける老人ホームの入所者を週2回ほど、診療所に送迎していた。

 この女性は病気のため、体勢を自分で変えたり、維持したりすることができなかった。歯科助手は、そんな女性の様子が気になり、ミラー越しに後部を確認した。特に異変はなかった。

 だが、その隙に信号は青色から黄色へ変わった。すぐにブレーキを踏んだが、車は停止線を50センチ超えて止まった。振り返ると、女性は前かがみの体勢で、車いすから落ちていた。大腿骨(だいたいこつ)が折れており、半日後に出血性ショックで死亡した。

 歯科助手は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)などの罪で起訴され、今年4月27日、大阪地裁で懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年2カ月)の有罪判決を受けた。判決では、女性にシートベルトを着けていたが、「適正に装着する義務」に違反したと認定された。どういうことか。

 判決によると、車の取り扱い…

この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。

残り:1307文字/全文:1915文字

【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment