軽バンに本どっさり 街の本屋が届ける「偶然の出会い」

 週末は軽バンにどっさり本を積み、マルシェへ。インターネットの時代に、岡山県玉野市で書店を営む根木慶太郎さん(60)は「本との偶然の出会いを届けたい」と走り回る。

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 軽バンの荷台を開けると、約500冊の絵本や専門書がぎっしり。折りたたみ机に本を並べてテントを張れば「旅する本屋」のできあがりだ。

 玉野市八浜町見石で書店を営む傍ら、昨秋、本の移動販売を始めた。週末、マルシェなどに赴き「本との偶然の出会い」を届けて回る。「偶然が良い。感心がないところへも、自分の見える世界が広がるから」

 岡山市出身。文庫本に没頭し、中学ではSF小説を中心に読書量は年間300冊を超えた。「知らないことを知る『違和感』が楽しかった」。食卓に並ぶ調味料の説明書きを目で追う「活字中毒」ぶりだった。

 大学では建築を学び、卒業後は岡山の住宅会社で働いた。20年を超す会社員生活を経て2005年、洋書やアート本など気に入った本だけを扱う書店「451BOOKS」をオープン。店名は、本を禁じられた社会をテーマとしたレイ・ブラッドベリのSF小説「華氏451度」からとった。

 ネット通販や電子書籍の台頭で、まちの本屋が減っている。大きさや重さ、質感。紙の本は手に取るだけで、かけがえのない体験になるのに。本の魅力をたくさんの人に知って欲しい。お気に入りの本との「旅」に出たのはそんな理由だ。

 県内中心に10カ所ほど回った。車を止めると、自然と人が集まる。熱心に本を見つめる人には、そっと作品の魅力を語りかける。「特別な1冊との出会いが、記憶に残る場所にしたい」。問い合わせは451BOOKS(0863・51・2920)。(華野優気)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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