除夜の鐘が響くその前に 物言わぬ陶製の鐘が語る「あの時代」の記憶

 大みそかに厳かな音を響かせる除夜の鐘。陶磁器の街として知られる愛知県瀬戸市の法雲寺に、全国でも珍しい陶製の梵鐘(ぼんしょう)がある。境内に置かれた「鳴らない鐘」が伝えるものは、約80年前の戦争の「記憶」だ。

 資源不足を補う目的で、政府は太平洋戦争開戦前の1941年8月に金属類回収令を公布。官民の持つ鉄や銅などが対象で、溶かして武器などの材料にするため、寺の梵鐘のほか、家庭の鍋釜や古くぎなども供出させた。

 瀬戸市によると、法雲寺の鐘も42年10月に供出された。同月に代用品として作られたのが陶製の鐘だ。高さは115センチ、直径79センチ。柵で囲まれ、台座に置かれている。鐘の側面には「米英撃滅ノ武器作製ノ為メ第二ノ御奉公ニ應召セリ」と刻まれている。

 「特異な時代の遺産として歴…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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