青森から新幹線で駆け巡った No titleは高校生

 オーディション最終審査の演奏の舞台は、東京だった。三沢市の高校生3人が結成したバンド「No title」。2017年11月、ボーカル・ギターのほのかさん(18)はメンバー2人と八戸駅の改札を通り、東北新幹線に乗り込んだ。

 3人はオーディションで総合グランプリを勝ち取り、いきなりメジャーデビューが決定した。それまで東京は「人がたくさんいて、未知で、自分とは全然関係ない場所」だったが、週末になると新幹線に乗って上京しては、曲作りなどのためにスタジオに入る日々が始まった。

 東京との行き来を重ね、今では都内での乗り換えにもすっかり慣れた。新幹線ではさまざまな曲をシャッフルして聴きながら、思いついた詞を書きとめるなどして過ごす。

 新幹線で訪れる東京には、自分でも想像していなかった多くの人たちとの出会いがあった。その一方で、「地元のほうがいいな」と気づいたこともある。「吸っている空気の鮮度が違うのがわかる。東京にいると、空の星や月を見上げない」

 地元の三沢では、友人たちと「今日は月がでかい」などと話しながら、自然に空を見上げていた。「もし東京に住んでいたら、そういうふうに感じることもなかった」

 自身が作詞した楽曲にも、空の色などの風景を描写したフレーズがいくつかある。「(東京と比べ)不便なこともあるけど、空のこととか気づかせてくれるのは青森ならでは。自主性を保って、自分と向き合うことができます」

 メンバー3人は受験シーズンが近づいた夏前から活動を抑え、大学進学をめざして勉強中。活動を再開した後は東京で活動する機会を増やす予定だが、ミュージックビデオは引き続き県内で撮影したいと考えている。「作詞や映像などに、青森の要素を入れていく。それを感覚で感じ取ってもらえたらいいなと思います」

 3カ月後には「高校生バンド」ではなくなるが、改めて「青森のバンドとして認識してもらえるよう活動する」と決意している。そのために、これからも新幹線で青森と東京を往復するつもりだ。(吉備彩日)

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 No title 三沢市の高校生3人が2016年に結成したバンド。17年に「LINEオーディション2017」でバンド、ソロも含めた総合グランプリに輝き、18年に「LINE RECORDS」の所属でメジャーデビュー。同年6月にリリースした「超えろ」は、青森朝日放送の高校野球特番「めざせ甲子園2018」のテーマソングに選ばれた。


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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