リニアを読み解く【上】
リニア中央新幹線の静岡工区が未着工になっている問題で、品川―名古屋間の2027年開業が困難になった。静岡県とJR東海の対立をめぐっては、早期の開通に期待する声と、「水や環境問題が解決されなければ工事は認められない」との慎重論がぶつかる。「夢の超特急」を取り巻く議論を、どう読み解けばいいのか。リニア沿線や大井川流域を歩き、当事者や専門家の意見を聞いていく。まずは開業に期待を寄せる愛知県や岐阜県と、仲介役の国土交通省の計5人の意見を紹介する。
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①「27年開業は9都府県の総意」愛知県知事・大村秀章さん
1996年に衆議院議員になったころから、沿線9都府県でつくるリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の顧問をやっていた。2011年に知事になり、同盟会の会長として、旗振り役をやっている。
リニアは21世紀の日本を引っ張る数少ないプロジェクトで、必ず達成しなければならない。愛知と言うより、9都府県の総意として、なんとしても27年開業を実現してほしい。特に中間駅では、地域の活性化の起死回生の一打だ。
静岡の県民と経済界にも計り知れないメリットがある。今はひかりが1時間に1本程度だが、大増発される。愛知県の豊橋駅も同じで、大きな期待がある。
名古屋駅の「スーパーターミナル化」も進んでいる。名古屋市内の用地買収も大変な難事業だが、順調に来ていると思う。
名古屋駅から40分で行き来できる圏域を増やそうとしている。産業の拠点である豊田市にも40分、中部国際空港へのアクセスも向上させ、2本目の滑走路も27年に向けて加速している。
27年を前提にいろいろな事業を組み立てている。遅れれば、投資回収に影響が出る。緊張感をもって進めている。完成時期が動いてしまうのは、非常に大きな問題だ。
到達点を確定した上で、関係者が努力するということで初めて事業効果が期待できる。期日が決まらないと、企業誘致と言っても、来てくれない。
静岡工区の南アルプスの環境の保護と大井川の水問題はずっと心配していた。去年の春から夏にかけ、国土交通省が間に入ってJR東海と静岡県の関係を取り持つようにと、だいぶ強く言った。国交省は、最初は尻込みする感はあったが、いまは仲裁に入っている。事業者(JR東海)と許認可権者(静岡県)が一対一でガチンコでやっても折り合いがつかない。
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客観的なデータや科学的なエビデンス(証拠や根拠)に基づいて、JR東海は仕事をしなければならない。国交省の有識者会議ではそれらをもとに評価や検証、分析をする。その上で対策を講じれば、必ず折り合いがつけられると思っている。会議を加速して、方策を議論してほしい。
利水は重要だ。飲み水としての水道のほか、工業、農業も大井川から引いて牧之原台地で利用している。私は農林水産省出身で農水省とも話をしている。大井川の利水には全面的に協力すると言っている。
JR東海はひたすら客観的なデータやエビデンスを関係者の方々に説明するということ、それにつきると思う。大井川水系の市町にしっかりと説明をし、いろんな疑問や質問や意見にきちんと答え、説明する。対話を積み重ねていくことだ。
私は愛知県内でも環境の重要性を繰り返し、訴えてきた。「環境首都あいち」というスローガンも掲げている。一方、27年度の東京―名古屋開業は私たちの総意。南アルプスの環境保全では、「こういう措置を講ずれば及第点」という水準は必ずあるはずだ。折り合いをつけていただきたい。
昨年、建設促進期成同盟会に川勝平太知事も入りたいと申し出があった。各都府県に照会しているが、いろいろな意見がある。「賛成なら入れてあげたら」という話もあれば、「建設促進の趣旨を文書で確認しなければいけない」との意見がある。私は川勝知事が入りたいというのだから、いいじゃないかと思う。今後の調整が必要だ。
リニア中央新幹線をめぐるインタビュー。今回はこの後さらに、推進の立場に立つ自民党リニア特別委員会や、沿線の経済界にも話を聞きました。また、溝が深まる静岡県とJR東海を取り持つ国土交通省鉄道局の技術審議官も登場します。次回以降は、自然環境への影響に懸念を強める静岡の地元の声や、解決を提言する人たちの意見を紹介します。
■②「皆が納得するため背中押す…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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