風化してゆく「生きた証し」 瀬戸内のハンセン病療養所、世界遺産へ

 岡山県瀬戸内市沖に浮かぶ長島にある、国立ハンセン病療養所「長島愛生園」と「邑久光明園」。二つの施設には、国によるハンセン病患者の強制隔離という記憶を伝える資料や遺構が今も数多く残されている。だが、入所者の「生きた証し」であるそれらの遺産は、時の流れとともに風化しつつある。

 愛生園にある築60年以上が経つ古い木造平屋建ての建物。その一室の押し入れを開けると、そこには無造作にキャンバスが積み重ねられていた。肖像や静物など、描かれた絵は湿気や熱で劣化しているのが見て取れた。

 この部屋は、数年前まで入所者がアトリエとして利用していたというが、現在は保存調査のために学芸員が出入りするだけで、人の出入りはほとんどない。乾燥してひとかたまりになった絵の具のチューブや、ほこりをかぶった数十本の絵筆が時間の経過を物語る。

 1996年に「らい予防法」…

この記事は有料会員記事です。残り1096文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment