高校に「折り紙部」なぜ 1枚の癒やし、大作への責任感

高校の「折り紙部」顧問の学校司書 林田嘉乃さん(62)

 愛知県の公立高校で学校司書をしている林田嘉乃さん(62)は、全国でも珍しい「折り紙部」の顧問だ。生徒との折り紙を通じた相談活動が評価され、県教委から教職員表彰も受けた。折り紙が得意だったわけではない林田さんが同部を創設したきっかけとは……。

 授業が終わると、図書室まで全速力で走ってくる生徒がいた。呼吸を整えると、一心不乱に折り紙に向かった。「ここがなかったら学校は続かなかったかも。僕が僕でいられたし、必要としてくれる人たちがいた」。卒業間際にこう言われた。

 愛知県立刈谷(かりや)東高校の図書室には、数万個のパーツを使った平等院鳳凰(ほうおう)堂や凱旋(がいせん)門といった折り紙アートが並ぶ。昼間定時制で学ぶ「折り紙部」の部員が手がけた。

 「殺風景な図書室を飾りたい」と、折り紙でアジサイを作っていたら、生徒が集まってきた。2008年、校長から「折り紙は日本の文化だから」と強く勧められ同好会をつくり、11年に部に昇格した。毎年秋に市の施設で作品を展示し、今年はゴッホの「ひまわり」や葛飾北斎の「富士越龍図(ふじこしのりゅうず)」をモチーフにした力作が並んだ。

 過去には様々な事情を抱えた生徒もいた。「向かい合って話さなくても、一緒に折り紙に集中する時間がセラピー効果を果たすこともある」。折り紙が持つ「癒やしの力」について説く。

 手順通りに折れば誰にでも作れ、達成感を得られるのが魅力。どんな大作も、パーツが一つ欠ければ成り立たない。「部員同士でお互いの得手不得手を尊重して、自分の引き受けたものには責任を持つ。その経験は、社会に出てからもきっと生きるはず」(文・佐藤剛志 写真・河合真人)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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