高裁、捜査機関の「捏造」に踏み込む 冤罪救済の仕組み弱さ浮き彫り

 強盗殺人事件で死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す決定が出た。犯行時の着衣とされた「5点の衣類」をめぐり、揺れに揺れた裁判を「決着」させたのは「血痕の色の変化」だった。事件発生から57年。捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)にまで踏み込んだ決定は、冤罪(えんざい)を救済する再審制度の脆弱(ぜいじゃく)さを改めて浮かび上がらせた。

 血の色は主観的なもので明白な新証拠になりにくい――。弁護団自身が当初、血痕の色の変化についてはそう考えていた。だが、これが再審開始の決め手となる新証拠になった。

 元になったのは、2008年の第2次再審請求にあたって、支援者らが実施した再現実験だった。1年以上みそ漬けになった後に突然「発見」され、袴田さんの犯行着衣とされた5点の衣類の写真の血痕には赤みがあった。しかし、再現実験では赤みは消えた。

血痕の色、最後に残った「唯一の争点」

 それでも弁護団は、DNA型鑑定による無罪の証明により注力していた。最高裁でDNAは再審開始の根拠にならないと退けられ、結果的に「唯一の争点」として残ったのが、血痕の色の変化だった。

 今回の東京高裁での審理では、「赤みは消える」とする弁護側と「赤みは残る」とする検察側から、計5人の専門家の意見や再現実験の結果が提出され、証人尋問も実施された。

 高裁が軍配を上げたのは弁護側の専門家だった。

 みその高い塩分濃度と弱酸性…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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