鳥インフル、平穏を奪われた 養鶏農家が廃業を選ばなかったわけ

 愛媛県に2カ所の農場を持つ冨田養鶏(今治市)の冨田泰広さん(49)は戦前から続く家業の3代目。「安い量産品よりも、よそよりおいしい卵をつくるのが繁盛のコツ」と、餌にこだわってきた。

 おいしい卵をつくるには――。欧州では鶏に小麦を多く食べさせているのをヒントにした。知り合いのラーメン店やケーキ店を巡り、麺の生地やケーキのスポンジの切れ端を集めた。いずれも小麦が含まれていて、独自に配合した飼料は卵の価格を抑えることにもつながった。

 卵は白身ごと箸でつかめる弾力があり、味にコクも出た。直売店に1日200~500人が買い求めにやってくる人気ぶりだった。

 ところが昨年の暮れ、平穏な日常が一変した。西条市の冨田さんの農場近くで、高病原性鳥インフルエンザが疑われる鶏が見つかった。

 「どうなるのだろうか」。不安な日々が続いた。

 年が明けた1月4日朝、同業のいとこから「30羽が死んでいる」と電話があった。いとこの農場は、冨田さんの隣にある。

5羽が死んでいた

 冨田さんは自分の農場に行き、7棟の鶏舎を見て回った。ある棟の中央付近で5羽が死んでいた。赤いとさかが紫に変色していた。

鳥インフルエンザが確認されたら、廃業しようと決めていた冨田さん。ついに「その日」が訪れますが、思わぬ言葉に我に返ります。記事後半で紹介します。

 県の簡易検査は陽性。死んだ…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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