鳩山元首相「共和党」結成に向けた講演の要旨(産経新聞)

 旧民主党を率いた鳩山由紀夫元首相は25日、新たな政治団体「共和党」の結成に向けた初の準備会を東京都内で開き、「日本の政治に一言、二言、申さなければならない。次の日本の姿を皆と一緒に考えていく」と意気込みを語った。

 同党では鳩山氏が代表を意味する「棟梁(とうりょう)」に、首藤信彦元衆院議員が党首を指すという「物差(ものさし)」に就く見込み。

 党への参加については、「共和党理念および日本の幸福への同意」30点▽「日本の独自外交戦略およびアジア重視外交姿勢」20点▽「死刑廃止」5点-など、加点方式の項目を掲げ、党員は計60点以上、候補者は計80点以上が必要とした。

 講演の要旨は以下の通り。

 「鳩山由紀夫と申します。今日は天皇陛下が即位の礼を終えられて、饗宴(きょうえん)の儀があって、私もそこに参加してきた。このようなときに、いや、新しい政治勢力を結党するのかと判断した方もいるかもしれない。これは山を登り詰めて『こういう方向で行こう』と多くの皆さん方の声が結集されたときに、その活動が本格的になり得るということだ。今日は基本的には『共和主義』という考え方を皆さん方に披露させてもらう」

 「『鳩山、お前が今の政治に対して責任があるんじゃないか。そんな人間がまた新たな政治勢力を作ろうというのはけしからん』と思う人もいるかもしれない。ある意味でその通りだ。私は7年前に政治家を辞めた人間だ。首相を経験させていただいた。本来ならば政官業の癒着に染まった日本の政治、行政を根本的に変えていきたい。そのためには皆さん方が中心となる、国民が主権となる本来の意味での政治を取り戻そうということで、政治主導という話も申し上げた。『官から民へ』ということも申し上げてきた。その結果、官から、大変な、ある意味で表、裏で、さまざまなことがあり、私自身もやりたかった、いわゆる米国に依存しすぎている、この国を、より本当の意味で独立国に変えるための努力をしたつもりだが、その嚆矢(こうし)となる米軍普天間基地移設問題、これを『最低でも県外』『できれば国外に移設しよう』という思いで努力したが、残念ながら思いは届かず、みなさま方に大変な迷惑をおかけして、結果として名護市辺野古に戻るということになり、その責任をとって首相をやめた人間だ」

 「『こんな人間が今更何を申すのか』というお気持ちの方もたくさんいると思う。ただ、この7年間、日本の政治がどうなってきたのか。どんどんと日本が、世界に向けて、ある意味で、名誉ある地位を占めることができるような国家になっていっているならば、私などは引っ込んでいたほうが良かったんだと思っている。しかし残念ながら、今の安倍晋三政権、国会の中では多数を握っているようだが、果たして本当の意味で国民の皆さん方の政治となっているのかどうかということに対しては、今日、お集まりの多くのみなさん方も多くのクエスチョンマークを付けているのではないかと思っている」

 「そういう中で、勉強会を2年あまり続けていく中で、コミュニタリアニズムというものの良さ、コミュニティーというものを大事にするということが1つの答えとしてあり得るなということになった。ただ、コミュニティー、あるいはコミュニタリアニズムという言葉自体がなかなか分かりにくいというか、言うときには舌をかんでしまう可能性があるようなことであり、なかなか、それでは理解はいただけないだろうということで、さらに勉強を進めていくなかで、今日、共和主義という考え方を、これは重要ではないかという思いに至ったわけだ」

 「地球環境の問題が大変、厳しい状況であることは、今日、お集まりのみなさん方にも、自然エネルギーをどんどん利用しようではないか、作ろうではないかという方々がたくさんいるので、お分かりだと思っている。急激に劣化し、悪化していく、地球環境への日本の対応は極めて遅いと思っている。このままでは21世紀末には私たち、世界の人間の9割が生きていけなくなるのではないかという識者の判断も出てきているくらいだ。そうなってはいけないことは言うまでもないが、そうならないために、たぶん人間は大変な努力をこれからしていくことになろうかと思うが、このまま行くと地球の気候変動、地球の温暖化に歯止めがかけられないのではないか。一説には、排出される二酸化炭素というものをクリアするためには、1千年かかるといわれる。一旦、閉じても1千年かかるということなので、今すぐに二酸化炭素をゼロにしたとしても、1千年間、その影響が続くとしたときに、今、私たちがどんな行動をすべきかということが、最も早急に行わなければならないことではないか。それに対して、大企業などにある意味でおんぶに抱っこされてしまう政治となると、なかなか大きなこと、大胆なことが言えない。そんな日本の政治ではないかとも思っている」

 「『激変する東アジアに対応がきちんとできているのか』というと、私は極めて稚拙で対応ができていないと言わざるを得ない。『ようやく日中関係は良くなった』といわれている。本当の意味で、日中関係も習近平主席と安倍首相が信頼を100%取り戻したかというと、そうは簡単に言えない状況ではないか。一方、経済においては握手をしようと、しかし、南西諸島、沖縄の与那国島などには自衛隊をどんどん増派して、また、ミサイル基地を作ろうという発想になってしまっている。一方で握手をして、他方では拳骨を握っているような状況で、果たして中国の多くの方々の共感を得られる日本になり得るのだろうかと大変、心配もしている」

 「それ以上に日韓関係が大変、ひどい状況であることは言うまでもない。この最悪の状況になった日韓関係は、いわゆる徴用工問題を指摘せざるを得ない。徴用工問題に関して、日韓基本条約あるいは日韓請求権協定で、国と国の間では問題は解決したんだということ、その部分に関して安倍首相がおっしゃっていることは間違いではない。しかし、その後、国際人権規約ができて、日本も1979年に批准している。とすれば、日本はこの国際人権規約に沿わなければならない。この国際人権規約によれば、元徴用工の人たちが訴訟を起こした。それはもう解決済みだという話ではないのであり、例えば国が法的な、あるいは国際的な機関が結論を出したとしても、個人の請求権というものが、決してそれによって奪われるものではないというのが国際人権規約の中に書かれているわけだ」

 「そのことを知っている外務省であるはずなのに、表に一切出さないで『国際法を守っていないのが韓国だ』と言わんばかりに主張していることは、必ずしも正しい見方ではない。このようにして日韓関係が厳しくなっていく中で、私どもは果たして日韓関係をこのまま続けていいと思う人は、そんなに多くはないのではないか。隣国とはもっと友好関係を築いていく必要があると私は思う。そういう中で、東アジアの大きな変化が起きていく中での日本の対応が問われている」

 「北朝鮮問題についても一言だけ申し上げれば、安倍首相は『無条件に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談したい』ということを希望されているが、『無条件で』と言うなら、『なぜ経済制裁を科したままなのか』というのが、北朝鮮側の意見だ。もし本気で、この問題を解決したいのであれば、制裁を解いて、そして、条件抜きで一対一で議論しようじゃないかというのが、金委員長の考え方であり、そういう方向に必ずしもなっていない。本気で、それならば北朝鮮問題を解決するお気持ちが安倍総理にあるのだろうかということが私たちは大変、気になるわけだ」

 「米国の武器は、言われればイージス・アショアも買い、F35も大量に購入するということを進めていく。米国に常に依存するのが日本の政治だ。(日米貿易協定をめぐる)畜産問題も、これから厳しいことになるのではないかと思うし、自動車に関してもトランプ米大統領の行動を見れば楽観を許されない状況だと思う。今までは『守ってあげるからね』と言っていた米国が、自動車や畜産問題を見てみれば、むしろ収奪者へと変貌している。にも関わらず、米国に追従していていいのかというのが、私たちの思いだ」

 「行政は政治もそうだが、ウソや隠蔽、捏造(ねつぞう)がまかり通っている。そのことは学校法人『森友学園』『加計学園』問題を見れば、おわかりだと思うし、私自身もかつて外務省が作ったペーパーによって辺野古に戻されたわけだが、そのペーパーの存在すら外務省は認めていない。隠蔽工作がまかり通っているわけだ。こういった状況はまさに本来、三権分立していなければならない日本なのだが、分立どころではなく、すべて官邸を向いてしまっている手法、行政になってしまっている。こういった問題を私どもは、このまま、まかり通っていいのかという気持ちを大変、強く感じている中で、米国、政治の現実から遠ざかって、東アジア共同体を作りたいという思いで、頑張ってきた私自身であるが、日本の政治に対してやはり一言、二言申さなければならないのではないかということで、首藤(信彦)さんと一緒に共和主義を学ばせていただいているところだ」

 「私は共和主義が4つの公準というものを大事にしなければならないということに気付いた。日本の政治、行政、経済に最も欠けているのはこの正義だ。正義の面からみて政策をどう作るのかが、真っ先に求められることではないか。美徳という考え方も重要で、徳を持った者が、それなりの力というものが備わっているわけだ。いまの政治、行政に致命的に欠如しているのが美徳ではないか。また卓越という考え方、よりすぐれたものをつくる必要性、より高いものを求めていくという姿勢は常に必要なのではないか。富国強兵から富国有徳に行こうとしている中で、日本の信用や技術、評価を取り戻すのは、よりすぐれたもの、日本はこれが卓越しているぞというものを求めていく必要があるのではないか」

 「友愛という考え方は最も重視したい。自由が行きすぎても弱肉強食になる。平等が行きすぎてしまうと無気力な社会になる。働いても働かなくても同じだけ所得が得られるというような社会になると、やる気がどこまで呼び起こされるかということが怪しくなる。この自由と平等という2つの違う理念を結びつける発想に、友愛、人間同士の愛情が大変重要だ。自立と共生。一人一人が自立する心を持つということ、自己の尊厳を尊重するということと同時に、他者の尊厳を尊重する友愛精神、自立と共生の考え方が大変重要だ。祖父の鳩山一郎は青年活動をしていく中で、友愛とは相互尊重、相互理解、相互扶助という言葉で表した。その方が分かりやすいかとは思うが、お互いに理解しあいながら、お互いに足りないところを助け合っていこうという精神が友愛精神だ。こういった考え方、正義、美徳、卓越、友愛という観点から一つ一つの政策を作り上げていこうではないかと。徳を持った方々が議論して、それを進めていく、よりよい政策に高めていくということこそ、共和主義の神髄ではないかと思っている。皆さん方が参加してもらうということを強く求めていきたい」

 「私は共和党代表になったわけでもない。私が代表であるかどうかも、また共和党ができるかどうかも皆さん方次第で、そのためには準備運動をもっとしていかないといけないと思う。今日はまさにその一歩を踏み出したということで、これから皆さん方が協力して、共和主義をさらに正当化していく必要があるのかという議論まで行っていくことが大事ではないか。共和主義というのは、みんなが共に和しながら、しかしながら和して同ぜず。そういう世の中をどうやって作っていくかという中で、例えば安倍政権を終焉(しゅうえん)させていくために、野党をどういうふうに結集させていくかと考えたときに、自分たちが先鞭を切って政党を作るのが正しいのか。そうではなくて、より多くの人たちが集まれるような舞台を提供していくことが大事なのか。そのあたりの議論もこれからあると思っている。大いに議論してもらいたい」

 「正義や美徳、あるいは卓越、友愛という基準に合わせて、どういう考え方が望ましいかを考えれば、まず一つは、私がこれまで数年間、一番行動してきたのは友愛外交で、国家としてより自立する、米国から自立する国家にしていきながら、アジアの周辺諸国とはもっと協力関係を高める。次の日本の姿をみんなと一緒に考えていこうではないか」

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

Japonologie:
Leave a Comment