デビュー作「小説 ヘッジファンド」、日本の財政に警鐘を鳴らした「日本国債」など、金融の世界を舞台に話題作を次々に発表してきた作家・幸田真音さん。臨場感あふれる描写は、債券ディーラーとして、修羅場をくぐり抜けてきた経験に裏打ちされている。そんな幸田さんには、逆境に立たされるたびに心の中でつぶやくある言葉があった。
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20代後半だった1970年代末、東京・丸の内の米国系投資銀行のディーリングルームに配属された。瞬時に数百億円単位の売買をする国際金融市場の最前線。怒声が飛び交い、殺気立つのは当たり前だった。
値が下がり始めた。そんなバカな?
米国人の上司のアシスタントを懸命に務めていたある日「自分でポジション(建玉(たてぎょく))を持って売買しなさい」と言われた。ディーラーとして一本立ちしろという命令だった。
生まれて初めて自分の判断と責任で売買する。様々に分析し「下がる要素はない」と確信して、日本国債に最小単位10億円の買いを入れた。
だが直後から値が下がり始めた…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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