16日から共通テスト 個別試験の中止や変更が相次ぐ

 16日から大学入学共通テストが始まり、受験シーズンが本格的に到来する。大半の国公立大学は、共通テストの後に個別試験を実施し、2段階で入学者を選抜する。だが、コロナ禍の急速な悪化を受け、個別試験の中止や試験内容を変更する動きが広がりつつある。

 共通テストには約53万人が志願し、全都道府県に計約700カ所の試験会場が用意される。多くの受験生は自宅近くで受けられる。一方、大学の個別試験は、受験生が全国から各キャンパスなどに集まって受ける。飛行機や新幹線による長距離移動を伴い、宿泊するケースも少なくないため、新型コロナウイルスの感染リスクは高まる。

 全国で感染が急拡大するなか、山口県の山陽小野田市立山口東京理科大は、2~3月に予定していた個別試験を取りやめ、共通テストの成績で合否を判定する方針に急きょ切り替えた。山口のほか、岡山や広島、福岡など7県で試験会場を確保していたが、受験生の安全を優先するため、初めて個別試験の中止に踏みきった。昨年末から議論を続け、「感染が止まらないなかでの個別試験の実施は、受験生にとってリスクだと判断した」という。

 電気通信大(東京)も、感染状況により、個別試験ができないと判断した場合には、共通テストの成績と高校から提出された調査書で合否判定する可能性があるとホームページで公表。受験生に注意を促した。

 いち早く個別試験の取りやめを決めていたのが、横浜国立大だ。原則として共通テストの成績で合否を判定する。例年、神奈川県外からの受験生が約5千人と全体の3分の2を占め、遠方からの志願者も多い。「移動中の感染リスクに配慮した」と説明する。

 個別試験の実施方法を見直した大学も出ている。

 東京外国語大は、多くの受験生が日帰りで受けられるように、午前10時だった試験開始時間を、前期日程は午後1時、後期日程は午後1時半にそれぞれ遅らせた。また、前期に150分で行う予定だった英語の試験時間を90分に短縮した。担当者は「昨年12月の急速な感染拡大を受けて対応を検討してきた。重要視する英語の試験時間を短くするのは苦渋の選択だが、安心して受験してもらうために決めた」と話す。

 広島県の尾道市立大は、緊急事態宣言下の地域に自宅や高校がある受験生については、感染していなくても個別試験の受験を断る方針だ。代わりに3月に共通テストと調査書で合否を決める。大阪府立大は、受験生が感染して個別試験を受けられない場合、共通テストの結果で合否を判定する。(阿部朋美、増谷文生、花房吾早子)

多くの国立大は個別を実施、でも…

 一方で、大多数の国公立大は今のところ、個別試験を予定通り行う方針だ。「共通テストのみで、本学に入るのにふさわしい人材を選抜するのは難しい」(東京大)など、独自に試験をする意義を強調する。

 東京大をはじめとする旧帝国大や医科単科大など難関とされる大学の場合、志願者の多くはマークシート式の共通テストで高得点をとるため、差がつきにくい事情がある。こうした難関校は合否判定で個別試験の点数配分を大きくしている。

 しかし、感染の急拡大が収まらなければ、個別試験を見直す大学が増える可能性があると、河合塾の富沢弘和教育情報部長はみる。特に全国から広範囲に受験生を集める大学には注意が必要だという。「今年の受験生は、個別試験の実施直前まで志望校のホームページをよくみて、情報収集に努めてほしい」

 駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は、状況が急変するコロナ禍の下では、学内調整に時間のかからない小規模な大学のほうが臨機応変の対応をしやすく、個別試験の中止などに踏み切りやすいとみる。

 そのうえで、個別試験を急に中止して共通テストだけでの合否判定に切り替えると、合格ラインの見極めが難しくなり、混乱を招きかねないと指摘。「全国でさらに感染が悪化する場合には、全体として時期をずらして個別試験を実施する選択肢も、考えるべきではないか」という。

 私立大の個別試験は国公立大より早い2月上中旬に本格化する。現状では、首都圏や関西圏などの主要私立大は予定通り実施する方針だ。(鎌田悠、土屋亮)

大学入試の流れ

1月16、17日 大学入学共通テスト第1日程

  30、31日 共通テスト第2日程(第1日程の追試験も兼ねる)

2月上中旬 主な私立大の個別試験

  13、14日 共通テスト第2日程の特例追試験

  25日以降 国公立大の個別試験の前期日程

3月8日以降 公立大の個別試験の中期日程

  12日以降 国公立大の個別試験の後期日程

※共通テスト:志願者数53万5245人、利用大学数866校

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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