ALS嘱託殺人罪の医師「覚悟の上」、「捕まりたくなかった」とも

 2019年11月、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者(当時51)に対する嘱託殺人などの罪に問われた医師、大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判が23日、京都地裁であった。被告人質問が続き、事件までの経緯を証言した。

 大久保被告は女性と18年12月からSNSでやりとりを始めたとされ、19年10~11月には殺害を考え始めたと述べた。事件当日は打ち合わせのために訪ねる予定だったが、その日に実行する可能性もあると考え、薬物を持参したと説明した。

 女性の京都市内の自宅マンションを訪問後、大久保被告は自身の手帳にあらかじめ記した「今日じゃないとダメか」「親御さんに連絡しなくていいか」という文言を女性に見せたという。すると、女性は文字盤を使い「死なせて」と意思表示をしたという。

 殺害方法は胃に直接栄養を送る「胃ろう」に薬物を注入したとされる。大久保被告は「(女性が)満足そうに見えた。次第に反応がなくなった」とし、「見届けるのが義務」と考え、しばらく経ってから女性宅を後にしたと説明した。

 弁護側が「犯罪だとわかった上でなぜ実行したか」と問うと、大久保被告は「困っている女性を放っておけず、何かしてあげたいと思った」と述べた。逮捕されることは「覚悟の上だった」とする一方、SNSのやりとりを消去するよう女性に求めた点を尋ねられると、「捕まりたくなかった」とした。

 一方の検察側は、大久保被告が作成したとされる、医療行為に紛れさせて殺害する「マニュアル」の目的を質問。大久保被告は「生きることに悩む人の心の支えになればと。(マニュアルを読んで)命を終わらせられるのは悔しいと思い、拒否する人がいると思う」と述べた。

 大久保被告は11年3月、知人の元医師、山本直樹被告(46)と共謀し、山本被告の父(当時77)を殺害した罪にも問われ、無罪を主張している。現場のアパートに呼び入れられた時、山本被告と心肺停止状態の父がいたと主張しており、この日の公判では「大変なことに巻き込まれたと思った」と述べた。(光墨祥吾、関ゆみん)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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