LGBT法案の「国民の安心に留意」 なぜトランス男性は憤ったのか

 性的少数者に対する理解を広めるとする「LGBT理解増進法案」が15日、参院内閣委員会で賛成多数で可決された。16日の参院本会議で可決、成立する見通しだが、法案は修正のたびに「後退」し、「むしろ差別を増進する」として、当事者らは「廃案もやむをえない」と抗議している。トランス男性で「トランスジェンダー・ジャパン」共同代表の浅沼智也さん(34)に話を聞いた。

「社会が後退する恐れ」

 ――法案について、最も問題だと思うのはどんな点ですか。

 マイノリティーは長い間、不平等な社会の中で生きることを強いられ、ひっそりと生活してきました。

 そんな中で、少しずつ声をあげられるようになり、存在が可視化され、理解したり寄り添ったりしてくれるマジョリティーが増え、自治体にパートナーシップ制度ができたり、企業が性的少数者を支援してくれるようになったり、ようやく社会に変化が出てきたと思っていました。

 ところが今回の修正案に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するものとする」という条文が盛り込まれたことによって、差別を訴えてもマジョリティーが「これは差別ではない」と言えば、認められないことになる。

 教育現場でもせっかく近年、「いろんな性的指向、性自認があっていい」という空気が広がっていたのに、「家庭および地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う」という条文が加わったことで、理解が追いついていない保護者が「その教育は子どもにふさわしくない」と言えば、指導できなくなるかもしれない。

 「マジョリティーがまだ理解していないから」という理由で社会が後退し、男女二元論や従来のジェンダー規範が戻り、マイノリティーはまたひっそりと生きていかなければならなくなるかもしれない。今回の法案からはそんなメッセージを受け取っています。

世界的な流れに逆行する「病理化」

 ――超党派による合意案では「性自認」と表現されていたのが、与党案で「性同一性」になり、維新・国民とすり合わせた修正案では「ジェンダーアイデンティティー」へと変わりました。背景をどうみていますか。

 世界保健機関(WHO)が性…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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