SNS時代に「表現の自由」を守るには 専門家2氏が語る真の問題点

 米国の実業家イーロン・マスク氏による米ツイッター社買収の動きに世界の注目が集まっている。巨大SNSなどネット上の「場」をつくるプラットフォーマーの動向が、言論空間に大きな影響を及ぼす時代。民主主義の基盤である「表現の自由」を守るには何が必要なのか。(聞き手 編集委員・豊秀一

プラットフォーマーという巨大な「場の管理者」の上では、表現の自由の「もう一つの側面」こそが問題になっていると、関西大准教授の水谷瑛嗣郎さんは言います。慶応大教授の鈴木秀美さんは、欧州で「国家による自由」を担保している存在に触れ、日本社会が真に問われているものを指摘します。共に憲法やメディア法を専門とする2氏に、詳しく話を伺いました。

問われるエコシステムの再構築 関西大准教授・水谷瑛嗣郎さん

 ――マスク氏は買収の理由に「表現の自由」を掲げ、ツイッター社が、支持者が議会乱入事件を起こしたトランプ前大統領のアカウントを永久凍結したことを批判しています。

 「米国憲法が『表現の自由』を保障した修正1条で厳格に禁じているのは、政府による表現内容の規制です。逆に修正1条のもとで、企業には、自社のルールに従って投稿をチェックしたり、制限したりする『モデレーション』を行う自由があると考えられています。暴力を賛美し、扇動するような投稿をしたトランプ氏のアカウントを凍結することは正当化されます」

 「真意はわかりませんが、マスク氏は、現代の表現環境で支配的な地位にあるプラットフォーム企業が、自社の『場』を管理する強力な力を持ちつつあることを問題視したのかもしれません。そこから彼が『モデレーション』を緩める方針を打ち出す可能性があるために、注目が集まっています。彼の意図とは別に、現代の情報流通・表現活動にとって重要なツールとなっているSNSの環境が、買収による経営方針の転換で大きく変わる可能性は見過ごせません」

 ――プラットフォーム企業には言論空間の健全さを維持する責任がありませんか。

 「プラットフォームの性質に…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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