造形物と判明した「人魚のミイラ」 秘蔵してきた住職が今思うこと
高井里佳子2023年2月26日 17時00分 岡山県浅口市の円珠院(えんじゅいん)が秘蔵してきた「人魚のミイラ」は、倉敷芸術科学大(同県倉敷市)による科学的調査で「造形物」だと結論づけられた。寺の住職を務める柆田(くいだ)宏善(こうぜん)さん(62)は今の心境について「(人魚に)申し訳ない」と語る。 主要な骨格がない、造形物だ――。同大の研究者らが調査結果を発表したのは2月7日。「ゆっくり眠っていたのに、人の目にさらされて『本物だ』『偽物だ』と言われて……」。柆田さんは朝日新聞の取材にそう漏らした。 寺に来た経緯は今も分かっていない。桐(きり)の箱に一緒に収められた文書には、元文年間(1736~41)に土佐の海で漁網にかかった、とあった。約200㌔の防火金庫で保管 1970年代に新聞やテレビで取り上げられると、一目見ようと人々が押し寄せた。このため、先代の住職がガラスケースに入れて公開を始めた。 2014年に住職を継いだ柆田さんは、よりよい保管を検討。滋賀県の寺にあった「人魚のミイラ」が火事で焼けたことを知り、約200キロの防火金庫を買って守ってきた。 今回調査を受けたのは「詳しいことが分かれば、保存する上で役に立つと思ったから」だった。 今回、「造形物」と結論づけられたが、研究によって、中身が布や綿で、強いものではないと分かった。 いまはこう思う。「命あるもので作られた人魚。今後はもっと大切に、慎重に扱っていきたい」(高井里佳子)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル