直木賞・澤田瞳子さんに先輩作家が与えた金言 面白さに不可欠なもの

 幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(きょうさい)の娘の一代記『星落ちて、なお』で今夏、直木賞を受賞した澤田瞳子さん。書き慣れない近代を舞台にした作品づくりにおおいに苦労したという。その悪戦苦闘を支えてくれたのは、デビュー時に出会った先輩作家の何げない言葉だった。5回目の挑戦で栄冠を手にした舞台裏とは。 澤田さんが奈良時代の青春群像を描いた長編『孤鷹(こよう)の天』でデビューしたのは2010年のこと。だが正直なところ、プロの小説家になろうとは思っていなかった。大学院まで専攻した歴史の面白さをどう伝えるか、試行錯誤する中で取り組んだ一つの試みが小説だったという。ところが翌年、この作品で歴史小説を対象とする福島県白河市など主催の中山義秀文学賞を最年少受賞する。34歳だった。 白河市で開かれた授賞式。編集者から「選考委員は親も同然」と聞かされて臨んだ晴れの舞台に、選考委員を代表して作家の安部龍太郎さん(66)が出席した。列車が遅れて取材先から駆けつけたという安部さんは、雪にまみれて泥だらけの長靴姿。澤田さんは度肝を抜かれながらも「外見を飾らず目の前の仕事にまっすぐな方なんだ」と感じ入った。 澤田さんにとってこのときの安部さんは、大人になって初めて出会ったプロの作家だった。母親の時代小説家、澤田ふじ子さん(75)を通じて作家という職業を知ってはいたが、母は「しんどい業界だから」と娘が同じ仕事に就くことを勧めてはいなかった。 式の後、宴(うたげ)の席で安部さんは気さくに励ましの声をかけてくれた。その一つが直木賞受賞作を生み出す大きな力になった言葉である。 ――作家が苦しむほど、小説…この記事は有料会員記事です。残り1043文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

吾輩は社猫である 所属は「癒し課」 笑顔あふれる会社の日々を本に

 東京都足立区に、猫を社員として迎えているユニークな会社がある。同人誌などの印刷を担う「しまや出版」だ。「事故に遭わないように」と招き入れた野良猫たちが、いつしか会社を支える重要な存在になっていった。そんな「社猫」たちとの日々を、フォトブック「私たち『癒し課』に配属されました」として出版した。 しまや出版は、荒川と隅田川に挟まれた、町工場や住宅が立ち並ぶ地区にある。同社代表取締役の小早川真樹さん(49)によると、周辺は交通量が多く、車にひかれる猫が後を絶たなかった。そんななか、従業員が同社の向かいの空き家に住み着いていた野良猫2匹と仲良くなった。 「せめてこの子たちだけでも事故に遭わないように」と、時間をかけて2匹と距離を縮め、事務所に招き入れた。そして、2010年、猫の日の2月22日、社内に「癒し課」をつくり、社員として「とら」と「タンタン」を迎えた。 あえて「社猫」として扱ったのは、「ちょうど猫の日が近かったし、ブログのネタになっていいかなと思って」と小早川さん。しかし、次第に保護猫の相談を受けることが増え、現在は小早川さんの自宅にいる「リモート社猫」3匹を含めた8匹が、癒し課に配属中。飼い主が見つかるまでの一定期間だけ入社した「インターン生」もいた。 猫たちの世話は、休日も猫好きのスタッフが交代で行う。「癒し課」ができ、繁忙期にはスタッフが猫たちとじゃれることで癒やされたり、真剣な会議中でもぴょんとテーブルの上に飛び乗る猫たちに思わず笑みがこぼれたり。小早川さんも「忙しい時期でも、殺伐とした感じがなくなりました」と評価する。原稿を持ってきたお客さんへの「接客」も得意だ。 フォトブックは、昨年2月に「癒し課」が設立10周年を迎えたことを記念して企画された。猫たちの様子は日々SNSでも発信してきたが、製本業の会社として、本を手に取ったときの感動を大切にしてほしいとの思いもあった。 出版時までに会社と関わってきた全18匹の猫たちを登場させ、掲載する写真はすべて従業員が撮影したものから厳選した。 同人誌の印刷が9割以上占める同社にとって、コロナ禍でコミックマーケット(コミケ)が中止や延期になったことは大きな打撃だった。しかし、「フォトブックづくりによってスタッフのモチベーションを維持できた」と小早川さん。「猫に優しい会社だから」と同社を選んでくれる客もいるといい、「コロナ禍でもつぶれずにいるのは、この子たちのおかげかも。癒し課がなかったらと思うと、ぞっとします」と話す。 小早川さんは、フォトブックを通して、「人と動物が共存する優しい世界につながれば」との願いを込める。保護した猫には、人からの虐待で傷ついた猫もいた。「かわいい猫たちの様子を通し、何か気づきがあったらうれしいです」 フォトブックは、税抜き1500円。区内の小中学校や大学、図書館などにも寄贈している。(塩入彩)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

自然・文化体験多い小学生、高校生で自尊感情高まる 文科省調査

 小学生のころに自然や社会、文化的な体験を多くした高校生は自尊感情が高い――。そんな調査研究報告を文部科学省が8日、発表した。家庭の収入水準が違っても同じ傾向だった。文科省は「体験活動が子どもの成長に大切であることを確かな分析方法で裏付けできた」としている。 報告のもとになったのは、2001年に生まれた子どもと保護者の計2万人以上を対象に、厚生労働省と文科省が毎年1回、追跡調査してきた「21世紀出生児縦断調査」。質問内容は年によって異なるが、文科省は、子どもが12歳(小6)の13年に行った調査で自然、社会、文化的な体験の回数を尋ねたことに着目。17歳(高2)になった18年の調査で尋ねた自尊感情の回答状況と重ね合わせて分析した。 それによると、12歳でキャンプや登山、川遊びなどの「自然体験」が多いと答えた保護者の子どもほど、17歳の調査で、自身の価値や肯定感、満足感などを点数化した「自尊感情」の得点が高く、体験が少ないほど得点が下がった。農業・職業の体験、ボランティアなどの「社会体験」、動植物園・博物館・美術館の見学や音楽・演劇の鑑賞、スポーツ観戦などの「文化的体験」についても同様の結果だった。 一方、子どもの自尊感情は家…この記事は会員記事です。残り78文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

Yu Darvish strikes out seven to help Padres beat Angels

San Diego – Yu Darvish earned the win Wednesday in a bounce-back start, striking out…

実刑判決は「結論ありき、承服できない」 秋元司議員が会見

阿部峻介2021年9月9日 12時30分 カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる事件で、東京地裁から7日に懲役4年の実刑判決を受け、同日保釈された衆院議員・秋元司被告(49)が9日、東京都内で会見を開いた。判決について「秋元は悪であるという結論ありきで承服できない」と批判し、控訴審でも無罪を主張すると語った。 収賄と組織犯罪処罰法違反(証人買収)の罪に問われた秋元議員側は公判で、議員会館での現金授受について、事務所の日程表やスマートフォンアプリの記録をもとに贈賄側と「会ってない」と訴えた。だが、判決は「日程表の記載漏れ」「アプリの正確性が不明」と退けた。「次の衆院選出る」意向も表明 会見に同席した弁護人の弘中惇一郎弁護士は、「日程表に記載がなければ贈賄側と会っていないということ。アプリも世界中で使われている」と判決の不当性を指摘。秋元議員も「もっと真剣に(現金授受があったとされる)当日の私の行動を検討してほしかった。高裁では先入観なしに判断してほしい」と述べた。 次の衆院選で東京15区(江東区)から立候補する意向も示し、「もう一度審判を仰ぐなかで次の選挙の準備をしたい」と話した。(阿部峻介)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

愛知リコール署名巡り津田大介氏ら書類送検 県警、起訴求めぬ意見か

2021年9月9日 12時44分 愛知県の大村秀章知事へのリコール署名活動をめぐり、美容外科医の高須克弥氏から地方自治法違反容疑で刑事告発されていたジャーナリストの津田大介氏、精神科医の香山リカ氏ら4人について、愛知県警が名古屋地検に書類送検していたことがわかった。起訴を求めない意見を付けたとみられる。 リコール活動を率いた高須氏が昨年8月、津田氏らのツイッターでの「リコールに参加した人たちは県公報で住所や氏名が告知される」などという内容の書き込みやリツイートが、活動への協力をちゅうちょさせるものだとして、刑事告発していた。刑事訴訟法の規定で、警察は告発を受理した事件について検察に書類や証拠物を送付しなければならない。 津田氏は9日、自身のツイッターで「警察が必要な捜査を終え、検察に関係書類を送ったという意味でしかないので、特にコメントはありませんが、被疑者として捜査の対象になった場合たとえ不起訴になっても『前歴(前科ではない)』が付くので、理不尽だなと思います」と投稿。香山氏は代理人弁護士を通じて「手続き的なことだと理解している。捜査には協力している」とコメントした。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「なんやこの街!」 夢を再び見せてくれた国への恩返し ベトナムくん

撮影で使うカメラを手に、大阪・ミナミの戎橋に立つベトナムくん。動画のオープニングは戎橋で撮ることが多いという=2021年7月29日午後5時1分、大阪市中央区、添田樹紀撮影 関西ゆかりのインフルエンサーはどんな人? どんなことを考えて投稿しているの? 最近、思っていることは? そんな、こんなを、今回は人気ユーチューバーのベトナムくんに、お聞きしました。 ベトナムのヒット曲のカバーや、ベトナムに関する街頭インタビューをユーチューブで配信している。27万人(取材時)いるチャンネル登録者のうち、9割超がベトナム人だ。 活動拠点は大阪市内。ベトナム人の視聴者を意識し、動画の内容すべてにベトナム語字幕をつける。インスタントフォーを食べる早さを競争する動画のサムネイル=ベトナムくん提供 独特の香りが特徴のベトナムの調味料「マムトム」のにおいを日本人に嗅いでもらったり、バドミントンのシャトルのような羽根を蹴り合うスポーツ「ダーカウ」をしてみたり。大阪・ミナミの繁華街で道行く人にベトナムの人気歌手のミュージックビデオ(MV)を見せる動画は、100万回以上再生された。 「納豆を食べている外国人の反応が見てみたい、それと同じような心理なのかも」と笑う。 大阪府四條畷市出身。大学生のころ始めた歌手活動を卒業後も続け、アルバイトをしながら路上やライブハウスでギターを片手に歌い続けた。「大好きなエンタメで食べていくことに挑戦したかった。親には猛反対されましたけどね」 なかなか芽が出ず焦り始めた2017年、ユーチューブの活用法を知った。「バズれば色んな人に見てもらえる!」。ただ、ひとと同じことをしても埋もれるだけ、と頭を巡らせた。ベトナムの歌を日本語でカバーしている動画のサムネイル=ベトナムくん提供 浮かんだキーワードは「ベト…この記事は会員記事です。残り597文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

Yankees great Derek Jeter closes book on playing career with induction into Hall of Fame

The first Baseball Hall of Fame induction ceremony in over two years was worth the…

橋から身を乗り出す女性 「だめですよっ」 必死の説得が自殺防いだ

上田真仁2021年9月9日 8時45分 【福島県】会津若松署は3日、主婦の山内英子さん(75)=会津若松市=と会社員の斎藤正行さん(34)=喜多方市=に対して、人命救助にあたったとして感謝状を贈った。 山内さんは8月26日朝、会津若松市内を車で走っていた。橋から半身を乗り出さんばかりの高齢の女性を見つけ、「おやっ」と不審に思ってすぐに車を止めた。 「死ぬんだ。自殺するんだ」。そう口走る女性を、「だめですよっ」と山内さんが必死に止める。山内さんの後ろを走っていた斎藤さんも、車を止めて説得に加わった。 女性から目を離さないよう介抱しながら、斎藤さんが110番通報した。「30分ほどして警察の方がきてくれた」と山内さん。自分と同じ世代の女性が、なぜ死のうとしたのか。「家族の悲しみを考えたら、もう少し長生きしてほしい。切なさを感じた」 感謝状を受け取った山内さんは「斎藤さんに協力してもらい、たいへん助かった」。斎藤さんは「命は大切。助かってよかった」と話した。女性の家族から2人に感謝の電話があったという。(上田真仁)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

元に戻ったように見えるけど 北海道地震で被災の田畑で続く収穫減

 北海道胆振東部地震による山腹崩壊で、北海道厚真町では約155ヘクタールの農地に大量の土砂が流れ込んだ。道と町は今年6月までに積もった土砂を撤去し、田畑は元の姿に戻ったかのように見えるが、農地には火山灰を中心とするやせた土が残ったままだ。被災した農家は、先祖が苦労してつくった良質な土を取り戻そうと歩みを進めている。 2018年9月の震度7を記録した地震で、厚真町では山の斜面が多くの場所で崩壊し、土砂がふもとの家屋や田畑を襲った。農地の表土を覆うように土砂が流入した場所もあれば、ふもとの土地に流れ落ちた後、そこからジャンプするように農地に押し寄せた場所もあった。圧力はとても強く、表土の下に潜り込んだり、めくりあげたりするほどだった。 被害を受けた農地所有者は301人。崩れた土砂は59万5千立方メートルで、札幌ドームの容積の約4割に達した。土砂に埋まった農地のうち、水田は約130ヘクタール、畑は約25ヘクタールだった。 町によると、町内の山の表土…この記事は会員記事です。残り784文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル