リニアを読み解く【上】 リニア中央新幹線の静岡工区が未着工になっている問題で、品川―名古屋間の2027年開業が困難になった。静岡県とJR東海の対立をめぐっては、早期の開通に期待する声と、「水や環境問題が解決されなければ工事は認められない」との慎重論がぶつかる。「夢の超特急」を取り巻く議論を、どう読み解けばいいのか。リニア沿線や大井川流域を歩き、当事者や専門家の意見を聞いていく。まずは開業に期待を寄せる愛知県や岐阜県と、仲介役の国土交通省の計5人の意見を紹介する。 拡大する山梨リニア実験線で走行試験を始めた新車両=2020年8月17日、山梨県都留市、小渕明洋撮影 ①「27年開業は9都府県の総意」愛知県知事・大村秀章さん 1996年に衆議院議員になったころから、沿線9都府県でつくるリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の顧問をやっていた。2011年に知事になり、同盟会の会長として、旗振り役をやっている。 リニアは21世紀の日本を引っ張る数少ないプロジェクトで、必ず達成しなければならない。愛知と言うより、9都府県の総意として、なんとしても27年開業を実現してほしい。特に中間駅では、地域の活性化の起死回生の一打だ。 静岡の県民と経済界にも計り知れないメリットがある。今はひかりが1時間に1本程度だが、大増発される。愛知県の豊橋駅も同じで、大きな期待がある。 名古屋駅の「スーパーターミナル化」も進んでいる。名古屋市内の用地買収も大変な難事業だが、順調に来ていると思う。 名古屋駅から40分で行き来できる圏域を増やそうとしている。産業の拠点である豊田市にも40分、中部国際空港へのアクセスも向上させ、2本目の滑走路も27年に向けて加速している。 27年を前提にいろいろな事業を組み立てている。遅れれば、投資回収に影響が出る。緊張感をもって進めている。完成時期が動いてしまうのは、非常に大きな問題だ。 到達点を確定した上で、関係者が努力するということで初めて事業効果が期待できる。期日が決まらないと、企業誘致と言っても、来てくれない。 静岡工区の南アルプスの環境の保護と大井川の水問題はずっと心配していた。去年の春から夏にかけ、国土交通省が間に入ってJR東海と静岡県の関係を取り持つようにと、だいぶ強く言った。国交省は、最初は尻込みする感はあったが、いまは仲裁に入っている。事業者(JR東海)と許認可権者(静岡県)が一対一でガチンコでやっても折り合いがつかない。 拡大する会談する静岡県の川勝平太知事(左)と国土交通省の藤田耕三・事務次官=2020年7月10日午後5時2分、静岡県庁、宮川純一撮影 客観的なデータや科学的なエビデンス(証拠や根拠)に基づいて、JR東海は仕事をしなければならない。国交省の有識者会議ではそれらをもとに評価や検証、分析をする。その上で対策を講じれば、必ず折り合いがつけられると思っている。会議を加速して、方策を議論してほしい。 利水は重要だ。飲み水としての水道のほか、工業、農業も大井川から引いて牧之原台地で利用している。私は農林水産省出身で農水省とも話をしている。大井川の利水には全面的に協力すると言っている。…
4 ans Il y a