トランスジェンダー自覚し「生きていけない」 中山咲月を救った言葉
性的少数者について語られる機会が増えてきている。そんな中、モデルで俳優の中山咲月(さつき)さんはトランスジェンダーとアセクシュアルであることを公表し、10月出版のフォトエッセーで心情をつづった。悩んだ日々や社会に対する思いを聞いた。(編集委員・後藤洋平)中山咲月さん=馬場磨貴撮影 「同世代の俳優陣と共演している時にかけられた『今回は、紅一点ですね』という言葉。また心の瘡蓋(かさぶた)が剝(は)がれた」 フォトエッセー「無性愛」で、ジェンダーレスな雰囲気の写真とともに、女性の体で生まれた自身の性に悩んできたこと、周囲の何げない言葉に傷ついたことを赤裸々に記した。 元々目立つことが好きではなく、授業で発言するのも苦手だった。コンビニで買い物をする時にも、店員の目を見て話せなかった。10年前、ティーン誌のオーディションに応募したのは、親戚に勧められてのことだった。少女向けの雑誌とわかってはいたが、フリルのついた服やスカートを着るのに抵抗感を覚えていた。モデル仲間が好きな服の話をしている時も、会話に入れなかった。 他者に恋愛感情を持つことがなかったのもあって、その抵抗感が性自認から来るものと自覚する機会がなかった。「自分はモデルの仕事は向いていないんだろうと思っていた」映画「彼らが本気で編むときは、」が契機に 自身の性について明確に認識したのは今年に入ってからだ。コロナ禍のため、自宅で映画を見る機会が増え、何げなくトランスジェンダーをテーマにした「彼らが本気で編むときは、」という作品を見て、震えた。 「自分もそうじゃないか……いや、そんなはずはない、という葛藤が1カ月ほど続きました。でも最終的に、この心の中のモヤモヤみたいなものに名前をつけるとしたら、トランスジェンダーなのだろう、と落ちつきました」中山咲月さん=馬場磨貴撮影 自分の性を認識した直後、色んなことを一気に思い出した。「中性的」であることを魅力と言われて仕事を続けてこられたが、それは「女の子なのに、男の子みたい」という付加価値であり、ベースとしては女性であることが前提になっていること。何かの拍子で「女性なのに」と言われたこと……。背を押した友人の言葉「死ぬぐらいだったら…」 悩みに悩んで、「この世界で…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル