「輝」という文字から「車」がなくなったら――。そんなクイズのような自動車教習所のポスターについて取材しました。制作したのは ポスターを制作したのは、東京・神奈川に5校を展開している「コヤマドライビングスクール」。 年4回のペースでポスターを発表しており、過去にはこんなキャッチコピーが話題になりました。 「はじめての運転。助手席に誰を乗せたいですか? 恋人? 家族? 友だち? 残念ですが…それ…教習所の先生です」 今回注目したのは、石神井校(東京都練馬区)にアートボードとして掲げられているポスター。 黒く塗られた背景に、大きく黄色で書かれた「輝」のような字。文字の中から「車」の部分だけがなくなっています。 横には、こんなキャッチコピーが添えられています。 「車がないと輝かない。」 答えを聞いてなるほど、自動車教習所らしい広告だと納得できるつくりになっています。企画したのは ポスターを企画したのは、広告制作会社「アイム」(東京都港区)。 社長の長井和子さん(73)は、コヤマドライビングスクールの副社長も務めており、1985年から35年以上にわたってアイムがイメージポスターを担当しています。 「当初は私がコピーライターでしたが、ここ20年ほどはコピーとデザインのディレクター役に回っています」と長井さん。 大学卒業とほぼ同時に結婚し、34歳でフリーのコピーライターとして仕事を始めて、40歳で東京コピーライターズクラブの新人賞を受賞。 その経験を生かして1989年に女性のためのビジネススクール「アイムパーソナルカレッジ」も立ち上げています。ターゲットは ポスター制作のきっかけは、経営手法として「コーポレート・アイデンティティー(CI)」を採り入れたこと。 教習所の「暗い、怖い、ダサい」というイメージから脱却しようと、校舎や教習車、ユニホーム、インストラクターのマナーなどを刷新してイメージを統一することにしました。 メインターゲットの年齢は18~22歳で、コアターゲットは17歳の女子高校生です。 「高校卒業前、18歳の誕生日前に入校される方が多いんです。そうした方々に響く内容を心がけています。コアターゲットを女子としたのは、女の子が集まる教習所なら男の子は黙っていてもついてきてくれるからです」教習生からの反応は ポスター制作にあたっては、コピーライター4人で50~100案ほどを出して、議論をしながら10案ほどに絞り込んでプレゼンテーションをします。 提案を受けたコヤマドライビングスクールの担当者たちが3案ほどに絞り、教習生の意見も参考にしながら最終的に役員会で決めています。 2010年春に発表された「車のない輝」のポスターについては、社員だけでなく教習生からの反応も良く、すんなり決定したそうです。 「言われてみれば納得ですが、なかなかそこに気づくことは難しい。シンプルだけどわかりやすい点も評価されました」 過去のポスターの中でも特にネットやテレビで話題になり、人気が高いことから、石神井校のアートボードの交換時期に合わせて採用したそうです。 ポスターの一覧はホームページでも公開しており、過去作品がテレビや雑誌などで紹介されることもあります。 「もともとは業界全体のイメージアップを目指してやってきました。最近は教習所の良くないイメージもやっと変わってきたように思います。『教習所らしくない教習所』と言われてきましたが、それが当たり前になって、『さすが、教習所らしいね!』と言われるようになるまで続けていきたいと思っています」(若松真平)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル
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