手堅く早く合格を…難関受験控えも コロナ禍の中学入試
コロナ禍による緊急事態宣言のもと、10日の埼玉県から首都圏の中学入試が本格的にスタートした。各校の受験動向からは、チャレンジは控えめにして、手堅く早めに合格を手にしたいという受験生の思いが伝わる。続く千葉、東京、神奈川の状況も似た傾向になると、専門家は予想している。(柏木友紀、宮坂麻子) 埼玉、2回目以降の受験者減る 拡大する栄東中の入試では、密を回避するため会場を3会場に分散した。会場入りした受験生らは、手指を消毒して検温を受けた=2021年1月10日午前9時16分、さいたま市、藤原伸雄撮影 開智中(さいたま市岩槻区)では10日朝、今年度1回目の入試が行われた。校門や校舎入り口にできた受験生や保護者の列は例年より短かった。会場は本校舎とさいたまスーパーアリーナの2カ所で、本校舎は試験開始時刻に1時間の差を設けて受験生を2回に分けた。例年は入試に使わない高等部校舎の教室も使って1部屋あたりの人数を減らし、密を避ける態勢を整えた。 昨春は定員を約80人超過して生徒が入学したこともあり、今回は定員を240人から40人増やした。1回目の入試は最も出願数が多く、計1448人が出願して1396人が受験、昨年度比で微減だった。 だが2回目以降、特待入試なども含めた全体の出願者数は4341人で前年度より1172人減少、受験者数は3263人で同670人減少した。東京都や神奈川県からの受験生の減少が大きいという。企画広報室の瀬賀亜弥子さんは「例年は首都圏入試の最初が埼玉なので、遠方からの『お試し層』も多い。今回は初日で合格を決めたら、後は感染リスクを避けたいと考えたのかもしれない」と話す。 拡大する受験生のかばんに下げられた合格守り=2021年1月10日午前9時4分、さいたま市、藤原伸雄撮影 例年、初日の10日だけで6千人を超える受験生が集まる栄東中(さいたま市見沼区)。感染予防のため、今回は試験日を10日と12日の選択制にした。2日間の受験者数は、帰国生も合わせると約5800人で、前年度比で300人弱減った。地元からの受験者は約100人増えたが、東京と神奈川からの受験者減少が大きかったという。 他府県の中学の東京会場入試や埼玉の初日入試の合否が出始めた後に行われた、12日の入試の欠席者は約160人にのぼった。「コロナの影響で遠方の受験生は敬遠したのかもしれません」と井上和明・入試広報センター長は話す。 大宮開成中(さいたま市大宮区)も10日の1回目入試の受験者数1606人はほぼ前年度並みだったものの、2回目以降は減少幅が大きく、12日の受験者数は前年度の6割弱、全体では約8割の2774人となった。松崎慶喜教頭は「前年度は受験者が急増して倍率が上がった。今回は1回目は挑戦しても、繰り返し受験するのは控えた可能性がある」とみる。 拡大する栄東中の入試会場で、検温するために設置されたサーモグラフィーでチェックを受ける受験生たち=2021年1月10日午前7時56分、さいたま市、藤原伸雄撮影 一方で、城北埼玉中(川越市)は10、12日の入試の受験者が前年度比2割増となった。15、18日の出願状況も同様の勢いで増えている。出合英之・入試広報部長によると、東京や神奈川からの受験生が増えており、「スクールバスの発着駅を一つ隣の急行停車駅にし、通いやすくなったことも要因かも」と分析する。 浦和ルーテル学院中(さいたま市緑区)も定員45人と小規模校ながら受験者数を伸ばした。10、12日の2回の入試ともに前年度の1・5倍超の受験者を集めた。特に女子の増加率が目を引く。2019年度から青山学院大学の系列校となったことが大きいとみられ、福島宏政校長は「付属校志向が広がる流れの中で、認知度が高まった」とみる。 近距離で手堅く…中堅校が激戦か 拡大する栄東中の入試で、受験生に無料で配られたペン型の除菌スプレー=藤原伸雄撮影…