劇団ノーミーツ、NO密で濃密な「会わない」若者の挑戦
コロナ禍の逆境を逆手にとり、若者たちが新しいエンターテインメントを創造した。劇団ノーミーツ。三密回避の「NO密」で「濃密」なひとときを、そして「会わない」の英語表記「no meets」を掛け合わせた名称である。演劇は、役者の演技や台詞(せりふ)を劇場で生に体感するのが醍醐味(だいごみ)だが、彼らは違う。企画会議も稽古も本番もすべてズーム上というオンライン演劇なのだ。 拡大するズームを使った芝居はこんな風に表現される(劇団ノーミーツの短編から) すべては4月5日夜のズームで始まった。 その日、広屋佑規(29)は旧知の林健太郎(27)にメッセージを送った。 「どこかで時間をもらえない?」 浅草生まれ浅草育ちの広屋は根っからのエンタメ好きで、広告会社でイベント制作に携わった後、劇場から飛び出し街中でミュージカルをする新しいタイプの劇団「アウト・オブ・シアター」を主宰していた。これが思わぬ評判となり、広告主から大口の注文が相次いだ。そこで会社組織にしようとした矢先、コロナ禍に見舞われて予定は相次いでキャンセルに。登記もまだで、人を雇わず、オフィスも借りていない状態だからこそ、意外にすぐ切り替えることができた。 拡大するズームのインタビューにこたえる広屋佑規さん 「いま、話しましょう」 林は広屋のメッセージに即答した。慶応大在学中に映画の自主制作にかかわってきた林は、大手映画会社に就職していた。学生時代から広屋の才能を「革新的」と敬愛し、横浜・元町の商店街を突然ミュージカル舞台に変えた昨年の広屋の仕事を「見たことのない光景でした」と興奮気味に語る。 林はちょうど勤務先で担当していた映画のクランクインが延期になり、ひまをもてあましていた。 広屋が続けた。 「ズームで芝居を作るのはどう?」 ウェブ会議システム「ズーム」を使った他の劇団が誕生したばかりでもあった。林は広屋に言われ、このとき初めてズームを使ってみた。 拡大する企画・プロデュースを受け持つ林健太郎さん 「演劇なら、いいやつがいますよ」…