今国会で可決・成立するものとみられていた「種苗法改正案」。「種苗法」とは、文字通り種と苗の扱いを取り決めたもので、新しい品種の開発者の権利を守る、いわば農業における著作権、特許権を守る法律だ。
【映像】柴咲コウのツイートが話題に ニッポンの農業を窮地に追い込む? “種苗法“って何だ?
一般に新しい品種は国に登録することで日本国内では保護対象となるものの、海外においては国ごとに品種登録を申請することが必要だ。例えばシャインマスカットの場合、国内では登録品種となっている一方、中国や韓国などでは期限までに日本側が申請を行わなかったため、無断で増殖してしまっているという実態がある。また、イチゴ「とちおとめ」の場合、韓国で無断に他品種と交配され、“新品種”として出回るという問題が生じている。
今回の種苗法改正案では、こうした日本ブランドの農産品の海外流出を防止するため、開発者が輸出・栽培可能な国や地域を指定することができるようになる。それにより、指定された以外の地域への持ち出しを防ぐことができるという狙いだ。
ところが先月末、柴咲コウが「種の開発者さんの権利を守るため、登録品種の自家採種を禁ずるという認識だが、何かを糾弾しているのではなく、知らない人が多いことに危惧しているので触れた」というツイート、これを機に「日本の農家にとっては死活問題だろう」「これって日本の農家を守るためのものではないのか?」といった声が上がり、野党も反発。自民党の森山国対委員長は「むしろ日本の農家の皆様をしっかり守るという法律だが、逆に伝わっているところがある」と述べ、検察庁法改正案と同様、政府与党は成立を見送る方針を固めた。
22日の『ABEMA Prime』に出演した、100年以上続く農園で100種類以上のぶどうを育てる「林ぶどう研究所」の林慎悟氏と、農家ジャーナリストの松平尚也氏は、“日本ブランドの海外流出は防止しなければならない”という点にいおいては一致しているものの、改正については賛成派・慎重派の立場に分かれている。
松平氏が懸念を示すのが、農家が収穫物から種などを採種(自家採種)して次の栽培に使う「自家増殖」を制限するという点だ。コストをかけて新品種を開発した人の権利保護の強化は必要にも思えるが、どういった問題があるのだろうか。
「まず種苗法は1978年に国際条約に日本が入る時に、農産種苗法を全面改正してつくられたものだ。当時は農家の自家採種の慣行に配慮し、種からではなく、根・茎・葉から植物を繁殖させる方法(栄養繁殖)のみ、自家増殖を禁止していた。しかし近年と今回の改正では、稲や野菜も含む、種子繁殖の品種まで禁止対象品目リストに入ってきている。つまり、利害関係にある農家が近年非常に増えているという状況があるということだ。また、農林水産省が昨年6回ほど検討会を開いているが、農協からは“多様な農家がいる中で、育成権者の許諾を取るということが本当に可能なのか”“農家の自家増殖は継続して認めて欲しい”という意見が出ていた。私自身もそうだが、98%が小さな家族農家という中で、改正案の中身が周知されないまま、許諾制を一気に導入できるのか、懸念が残る」(松平氏)。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース