「まだ続けるんですか」と税理士は言った 老舗和菓子店は決心した

 「令和」で名をはせる太宰府天満宮の参道で地元に愛されてきた老舗和菓子店が、苦境に陥っている。幕末志士ゆかりの木造店舗を改修したのに、長引くコロナ禍で客足が戻らず、なかなか借金を返せない。「まだ店を続けるんですか」。税理士に言われ、店をたたむことも考えた。だが、お得意さんたちの言葉に背中を押され、生き残りをかけた挑戦を始めることにした。いつかまちに活気が戻る日を待ちながら。

 「太宰府天満宮御用達」をかかげる「梅園(ばいえん)菓子処」(福岡県太宰府市)。ぎゅうひに若草色のそぼろをまぶした「うその餅」は、菅原道真公ゆかりの鳥にちなんだ銘菓。吉田茂元首相や川端康成も好んだという卵風味の「宝満山」や、和三盆でつくる「飛梅(とびうめ)」は、皇室にも献上された。機械化はせず、支店も出さず、一つひとつ手作りしている。

 「3代にわたってご愛顧くださるお客様もいる。私たちだけの問題じゃない。この味をつなげていきたい」。3代目社長の佐藤真理さん(51)は力を込める。

 店は佐藤さんの祖父が1948年に開いた。手作りの優しい味は地元の人たちに愛され、観光客や修学旅行生、海外の客にも人気だった。特に2019年春は「令和」ゆかりの地として太宰府が注目され、観光客が急増。佐藤さんと夫の弘人さん、両親を中心に、従業員十数人フル稼働でお菓子を作り続けた。

 だが翌春、状況は一変。人があふれていた参道は、しんと静まりかえった。

 戸惑いつつも、その夏、店の改修に踏み切った。借りている築180年余の木造建築は、かつて「泉屋」という旅籠(はたご)だった。土佐の志士の定宿で、坂本龍馬の盟友、中岡慎太郎が泊まった記録も残る。市の歴史的風致形成建造物に指定されているが、かなり老朽化していた。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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