「県警として承服しがたい」は削除 無罪否定の書面、滋賀県が訂正

安藤仙一朗

 滋賀県の湖東記念病院で2003年に死亡した男性患者への殺人罪で服役後、昨年に再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)が国と県に国家賠償を求めた訴訟で、県が5日、大津地裁に提出していた書面の一部訂正を申し立てた。西山さんの弁護団が明らかにした。書面には無罪判決を否定する表現があり、知事や県警本部長が謝罪する事態になっていた。

 訂正申立書によると、訂正は7カ所。昨年3月の再審判決は患者が病死した可能性を指摘していたのに、「心肺停止状態にさせたのは、原告である」と断定した部分については、末尾に「と判断する相当な理由があった」を加えた。県警によると、有罪判決が言い渡された当時の認識だと分かるように訂正したという。

 また、「取り調べ担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害行為を自白することなど、根本的にあり得ない」としていた部分は削除。再審判決の際、刑事司法関係者に捜査の改善を求めた裁判長の説諭について、「県警として承服しがたい」と主張していた部分も削除した。

 西山さんは「批判を受けた部分の表現を訂正しただけで、県警の認識は何ら変わっていないとしか受け止められない。余計に傷つけられた思いだ」とのコメントを発表。代理人を務める井戸謙一弁護士も、取材に対し「書面の表現を改めたところで、県警が西山さんを犯人視する認識は変わっていない」と批判した。

 問題の書面は、先月15日に提出された。2日後、三日月大造知事が会見を開き「西山さんの心を深く傷つける極めて不適切な表現があった」と謝罪。さらに28日、滝沢依子・県警本部長も県議会で「書面の表現に不十分な点があった」と訂正する考えを示し、報道陣の取材に「再審無罪判決は重く受け止めている」と釈明した。県警監察官室の担当者も「判決を真摯(しんし)に受け止めている」としており、再審無罪判決の内容については争わない方針という。(安藤仙一朗)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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