「金色」に輝く干潟、諫早湾干拓事業で陸地に 衰退していく豊かな海

 1枚の写真がある。

 黒々とした泥干潟を流れる澪筋(みおすじ)が朝日に照らされ、金色に輝いている。写真撮影が趣味だった長崎県諫早市の医師、志波慶一さんが昇る朝日を写したものだ。慶一さんは2012年に他界。長男の前久留米大学病院長、直人さん(66)が大学の自室に飾っていた。失った故郷の原風景だという。

 写真の裏に「平成2年(1990年)10月」とあった。91年に雲仙・普賢岳で大火砕流が起きる直前だ。97年には諫早湾が潮受け堤防で閉め切られるなど国営諫早湾干拓事業が本格化し、風景は激変する。撮影地点は諫早市高来町の深海(ふかのみ)地区。干拓事業によって解散した深海漁協があったあたりだ。現場に立つと泥干潟は陸地になっていた。遠くには火砕流をもたらした溶岩ドーム(平成新山)も見えた。

 写真を鹿児島大名誉教授、佐藤正典さん(67)に見てもらった。泥にすむゴカイの専門家で有明海の干潟に30年通う。

 「静かな干潟の秋の日の始まり。場所は深海川の河口あたりでしょうか」と、干潮時の輝く干潟を解説してくれた。

 「朝日が当たって光っています。諫早湾の奥部に典型的なソフトクリームのように軟らかい泥の干潟で、表面で繁茂する潟華(がたばな)が光合成を始めている」

 潟華とは底生ケイ藻の増殖で…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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