なくせぬ命失い30年 捜査1課、受け継ぐ「常山之蛇」



 常山之蛇(じょうざんのへび)――。誘拐や立てこもり事件を担当する愛知県警捜査1課特殊犯罪捜査室の壁に、毛筆で書かれた額がある。「事が起きれば一心同体、臨機応変に対応せよ」。捜査1課には新たな捜査員を迎えるたびに、その意味を教える習わしがある。始まりは30年前に起きた誘拐事件だった。

 1989年10月11日、愛知県豊橋市に住む小学2年生、小林美幸子ちゃん(当時8)が何者かに誘拐され、犯人が電話で身代金1千万円を要求した。受け渡し場所に指定されたのは静岡との県境付近。愛知、静岡両県警が犯人の行方を捜した。

 当時捜査1課の一員として、犯人の行方を追っていた小西靖之さん(61)が振り返る。

 事件発生を受け、小西さんは静岡県に向かった。捜査車両に乗り込んで犯人の車を捜したが、無線が届かない場所が多く、仲間の配置場所が分からなかった。静岡県警とは無線の周波数が違うため、連携も難しかった。犯人の車を見つけたことは1回あった。だが、秘匿を命じられていたため緊急走行で追いかけることができなかった。

 10月12日午後、捜査員が静岡県湖西市の山中で、追跡していた車が放置されているのを発見。近くにいた男を任意同行し、愛知県警が翌日未明、身代金目的誘拐の疑いで逮捕した。

 犯人逮捕の翌日、県警は記者会見し、捜査の不備を明らかにした。

 犯人は美幸子ちゃんをトランク…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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