多摩川に娘と通った写真家の50日 「教科書なかった」

 新型コロナウイルスの感染が広がった4月上旬、写真家の千倉志野さん(43)=東京都狛江市=は2人の娘を水辺へ連れ出した。

 千倉さんの撮影の仕事はなくなっていた。小学校も学童保育も休みになり、みんな、手持ち無沙汰だった。4年生の雫(しずく)さん(9)と1年生の響さん(6)と一緒に自宅近くの多摩川へ向かった。

 子どもたちの多い公園で遊ばせるのは気が引けた。

 娘2人は拾い集めた枯れ木を組み合わせ、家を作った。母は一つだけ、ルールを決めた。「外から物を持ち込まない」

拡大する家を作り始めた子どもたち=4月4日、千倉志野さん提供

 「いまあるもので、新しいものを作ってほしかったから」

 辺りには昨年10月の台風19号の爪痕が残っていた。流木、バーベキューの鉄板、水筒……。「がれきの山はリサイクルショップだった」

 切り株はテーブルやいすになった。料理ごっこを始めると、土はティラミスに変わった。

 「こんなものを作るんだ、と。豊かな発想力に驚かされた」

拡大する木に登って遊ぶ娘たち=5月31日、千倉志野さん提供

 横浜市で生まれ育った千倉さん。高校卒業後、学習院大の写真部に入った。一眼レフカメラや暗室での作業に夢中になり、留学したロンドンで写真を仕事にしようと決めた。

 東京のスタジオで働いた後、26歳でドイツへ。3年間、修業を積み、帰国して独立した。俳優や歌手、アスリートといった著名人から七五三の記念写真まで、たくさんの人を写してきた。

 仕事も学校もない日々がいつまで続くのか。2人の娘は「学校で友達と遊びたい」と繰り返した。母も子もストレスに押しつぶされそうだった。

 「ゴールが見えないって、本当につらいんだな」

 そんな思いに少しずつ変化が生まれていく。

 野の花が咲き始める時期を迎え…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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