大人になっても生きづらい 映画で伝えたい施設育ち、虐待経験の現実

 児童養護施設で育ったり、親などの身近な大人から虐待を受けたりしながらもなんとか成長した子どもたち。でも……。

 「大人になれたからもう大丈夫、ではないのです」

 生後4カ月から乳児院や施設で育った東京都杉並区山本昌子(まさこ)さん(29)は語る。

 大人になって1人で生活できるようになっても、長くトラウマを抱え、生きづらさにさいなまれることが少なくない。仕事や学業など生活上の困難も続きがちだという。

 そんな実態を伝えようと、山本さんは3月から、ドキュメンタリー映画「REAL VOICE(リアルボイス)」を撮り始めた。

振り袖を着る機会を

 施設を出て、保育士として働いていた山本さんは2016年、施設や里親など社会的養護下で育った若者たちの成人を祝い、振り袖やはかまを着る機会をつくる「ACHAプロジェクト」を主催した。

 その後、保育の仕事をやめ、19年からはほかの児童養護施設出身者2人とともに情報発信したり、自宅を開放して毎月15日にみんなで集まれる居場所「まこHOUSE」をオープンしたりしている。

 そんな山本さんが映画を撮りたいと感じるきっかけとなった出来事があった。

 収束が見えないコロナ禍のなか、山本さんがオンラインで全国の若者と話すと「親からの虐待がフラッシュバックする」「気持ちを安定させるため、薬を飲み過ぎてしまう」との声が相次いだのだ。人と会いづらい環境下で悩みが増えているように感じた。

 思い当たることはあった。

山本さん自身も抱えていた思い

 山本さん自身も施設を出た1…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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