岡口裁判官を提訴 投稿は「被害者の尊厳への配慮欠く」

 2015年に東京都江戸川区の女子高校生が殺害された事件をめぐり、仙台高裁の岡口基一裁判官からSNS上で侮辱されたとして、遺族の両親が岡口氏に165万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。25日に第1回口頭弁論があった。

 原告は娘の岩瀬加奈さん(当時17)を失った両親。岡口氏は17年、「首を絞められて苦しむ女性に性的興奮を覚える男に無残にも殺されてしまった」と投稿し、判決文が閲覧できるサイトに誘導した。両親が抗議すると、18年に「単に因縁をつけているだけ」、19年には「俺を非難するように洗脳されている」と書き込んだ。

 訴状で両親は「被害者の尊厳や遺族の心情に対する配慮を著しく欠き、多大な苦痛を与えた」と主張した。この日に合わせ、岡口氏は「遺族を傷つける意図はなかった」、両親は「都合の良い言い訳をしているだけだ」とコメントした。

 岡口氏のこうした投稿をめぐり、国会の裁判官訴追委員会は今月16日、罷免(ひめん)(免職)を求めて弾劾(だんがい)裁判所に訴追すると決めた。

娘の命日に投稿、「必ず思い出す」 両親がコメント

 東京都江戸川区で2015年に高校3年の岩瀬加奈さん(当時17)が殺害された事件をめぐり、SNSへの投稿を繰り返した岡口基一裁判官を、遺族の両親が提訴した。父の正史さん(52)と母の裕見子さん(53)が25日の第1回口頭弁論に合わせて発表したコメントは以下の通り。

 今回の訴訟につきまして一番の原因としている事実は、岡口裁判官が2019年11月12日の娘の命日にフェイスブックに投稿した件についてです。

 もちろん、厳重注意処分を受けた17年12月15日に判決文のURLを貼りツイッターにより発信をしたことも原因としている事実ですが、この他、18年10月5日のブログにおいて「遺族には申し訳ないが、これでは単に因縁をつけているだけですよ」と投稿したことも原因としている事実として明記し訴状を提出しています。

 この背景には、今回の訴状にも記載してあるとおり、17年のツイッターでの投稿について厳重注意処分の際に岡口裁判官が、「ご遺族のお気持ちをお聞きして、年末の投稿によってご遺族の気持ちを深く傷つけたことが分かりました。配慮が足りずに申し訳ないことをしたという気持ちであり、深く反省しています。謝罪させていただきたい。また年明けにaskfmに投稿したことは、ご遺族の方がご覧になると思っていませんでしたが、今は、やってはいけないことをやってしまい、申し訳ない気持ちであり、深く反省しています。この点につきましても謝罪させていただきたいです。今後は、本件判決及びこれに関するもろもろ一切について投稿や書き込みをしないことをお約束いたします」「今後は真面目な投稿を心がける」と言ったとされることが、何一つ守られていないことにあります。

 具体的には、岡口裁判官は、書面による厳重注意処分後わずか2週間でこの件に関する書き込みをし、裸に見えるような自身の身体の写真の投稿や「あの時は厳重注意されたけど~ 見慣れてしまえば、たいした話ではない、俺のモッコリ~」などの投稿をしました。

 1回目の分限裁判後の記者会見においても、「あの程度で処分された」と言い、私たちは削除して欲しいなどとは一度も言っていないにもかかわらず、私がツイートを削除しろと言ったから削除をしたと言いました。

 先日の「訴追」の決定の際の報道でもそうですが、今までの報道では、本来の申し立ての理由が正しく報道されず、ツイッターで判決文のURLを貼って投稿をしたことだけを理由として訴訟を起こしているとの誤解を招く記事が多く、こういった記事に対するコメントを見ると、「何が悪いのだ」というコメントが嫌というほど書かれています。

 私たちは、厳重注意処分後、岡口裁判官について、一度は人の痛みがわかる人ではないと思い諦めようと思いました。

 ですが、岡口裁判官は、因縁をつけているだけなどと投稿し、すぐに削除をして訴追委員会の聴取を受けるとブログを閉鎖、洗脳発言についてもそうですが、自分に都合の悪いものは削除をし、それ以外については自分に都合の良い言い訳をしているだけです。

 娘の命日というのは、加奈が何時…何分まで生きていたのか…

 私たちにとっては、そのことを一番考える、「悲しい」や「苦しい」の言葉だけでは言い表すことが出来ない切ない日です。

 そのような日を選び、「洗脳」されていると投稿するこの岡口裁判官の行為は、これからの加奈の命日に必ず思い出すと思いますし、忘れることは出来ません。

 今回の裁判に関して訴状にもあります、「あたかも原告らが自ら判断をする能力がなく、東京高裁事務局と毎日新聞の思惑どおりに不合理な非難を続けている人物であるかのような印象を与える侮辱的なものである」というのは最高裁が、分限裁判により認定された事実でもあります。

 報道が正しく伝わらないことで、報道による被害が大きく負担となることも多々ありました。

 娘が殺害された時にされた事実無根の報道も、言葉のナイフとして胸に刺さったままです。

 死ぬまで忘れることは出来ません。

 裁判官訴追委員会の「訴追」も決定しましたが、岡口裁判官は「罷免(ひめん)事由に該当するような行為は全くない」と主張しています。

 今、SNSでの誹謗(ひぼう)中傷はとても大きな社会問題になっています。

 指先一つで人の命を奪ってしまうことができる今の社会だからこそ、これからの未来のためにも、司法においてはもちろんですが、報道する側は報道に責任を持ち、真実を確かに伝える努力をして欲しいと強く願っております。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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