復興計画混乱、生活再建めどたたず 熱海土石流災害2年で追悼

青山祥子 村野英一 床並浩一

 災害関連死1人を含む28人が死亡した静岡県熱海市土石流災害から2年を迎えた3日、被災地では市主催の追悼式があり、遺族らが犠牲者を悼んだ。一帯は警戒区域に指定され、立ち入り禁止となってきたが、不安定な盛り土の撤去が終わり、9月1日に解除される。一方、市の復興計画が定まらず、多くの被災者は生活再建のめどが立っていない。

 式は、被災した伊豆山地区にある伊豆山小学校であり、13世帯28人の遺族ら72人が参列。斉藤栄・熱海市長は「多くの方々の住まいや財産が失われ、いまだ応急的な住まいで生活を余儀なくされている。復旧・復興への歩みを着実に進めていく」とあいさつした。静岡県川勝平太知事は「不適切な盛り土行為に毅然(きぜん)として対応していく」と語った。

 土石流発生の最初の通報があった午前10時28分には市内でサイレンが鳴り響き、黙禱(もくとう)が捧げられた。被災者らでつくる「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(55)は、母親が犠牲となった場所で弟夫妻と3人で手を合わせた。「この時間、この場所で母が最後の苦しみを味わっていたことを思い出すと、また苦しくなる」。被害者の会は盛り土があった土地の前・現所有者、県、市を相手に損害賠償訴訟を起こしている。「真相究明と責任追及に向け、決意を新たに気を引き締めていく」と話した。

 一方、避難生活を送る被災者はなお124世帯217人(市まとめ、6月末現在)。市の復興計画には混乱がみられ、被災者の反発を招く事態になっている。

 市は県とともに、土石流が発生した逢初川の川幅を広げて市道を整備する予定だが、被災者でもある地権者の同意が得られず、用地買収は全体の3割にとどまる。また、被災した土地をいったん買い上げて造成し、被災者に分譲する方針だったが、この方針を5月下旬に撤回し、擁壁や地盤の復旧工事費用の9割を補助すると決定。被災者には不安や反発が広がり、市は6月議会で補正予算案を取り下げた。

 自宅が全壊し、母を亡くした太田朋晃さん(57)は自宅があった場所が、拡幅する逢初川と新設する市道の用地に決まり、再建が見通せない。「家族で暮らした場所に戻りたい」と市には伝えているという。(青山祥子、村野英一、床並浩一)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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