母は言う「娘の借金を返すためには」弟は台湾へ向かった

 「こんなことになるのなら、日本になんて行かせるんじゃなかった」

 ベトナム中部クアンビン省。山あいにあるフンチャック村で暮らすフオンさん(45)は、後悔を募らせている。

 娘(22)は2020年3月、技能実習生として日本に渡った。「ここは本当にステキな場所だよ」。日本に着いてすぐに電話してきた娘の弾む声を、いまも覚えている。翌月になって静岡県焼津市の水産加工会社で働き始めてからも、毎日のように元気な連絡が届いていた。

 「仕事は8時間立ちっぱなし。でも、きつくはない」

 「生魚のパック詰めはやったことがないけど、そのうち慣れると思う」

 しかし、5月に入り、状況は一変した。

 電話をかけてもめったに出なくなった。かかってもこない。その状態が続いている。

 日本で新型コロナウイルスの感染が広がった時期とも重なった。

 まさか――。不安にかられたが、どうしようもなかった。

 今年1月半ば。記者はフンチャック村を訪ねた。

 技能実習生として来日したあるベトナム人女性が、名古屋市内のシェルターに身を寄せている。なぜ、実習先を離れることになったのか。送り出した家族はいま、何を思うのか。彼女の「失踪」を通じて、日本とベトナムで技能実習の現場に迫った。

 娘は、日本で実習生を受け入れ…

2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment