首相、実感しましたか 星野源にみた「連なる」文化の力

 新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が呼びかけられる中、星野源さんがインターネット上で弾き語りを披露した「うちで踊ろう」の動画。多くのミュージシャンらが反応し、その中には議論を呼んだ安倍晋三首相の動画もありました。音楽担当の編集委員が、この曲が巻き起こしたものについて、考えました。

謙虚で繊細な曲のメッセージ

 安倍晋三首相が自身のメッセージを伝えるべく「引用」し、話題を集めた星野源さんの「うちで踊ろう」を改めて聴いてみた。

 サビの部分はほぼ、「ミソラシ」の四つの音のみで歌われる。隣り合った音同士が互いに手を差し出し、触れ合うかのように親密に行ったり来たり。過剰なアクセントも跳躍もなく、温かく寄り添う手触りだけがほんのり残る。もちろん、音域の限られている子どもの声でもすぐに歌える。

 ベースやハーモニーの動きも、実に謙虚で繊細だ。いたずらに共感や感動をあおらず、心地良く流れて消えてゆく。ギターのささやかな音量にも、声なき声に耳をそばだててみようという心持ちになってくる。

連歌、連句…西洋と対照的な豊かさ

 「おうちで踊ろう」ではなく「うちで踊ろう」としたのは、様々な理由で踊れない人が胸の中、つまり「うち」で踊ることができるように、という配慮あってのことという。そんなところにまで思いを至らせる星野さんの人間性の前に、首相の想像力の欠如っぷりがあぶり出されてしまったのは皮肉なことである。

 「うちで踊ろう」はそれぞれの…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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