SFと対極の世界 松本零士さんが描いた戦場の「リアルと悲哀」

松本零士さん追悼 編集委員・中村俊介

 天文少年だったころ、星空を見上げては銀河を駆ける列車を夢想した。松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」は、限りない宇宙への道しるべだった。

 少年誌の連載を何度読んだことだろう。本屋での立ち読みは学校帰りの日課。謎めいた黒衣の美女メーテルに、誰もが恋をした。

 ふるさとの映画館で見た劇場版。きらめく無窮の星々は観る者の心を躍らせ、999号が降り立つ未来都市の赤く染まった空に感傷の涙を流した。疾走感あふれるゴダイゴのテーマ曲に、僕らは奮い立った。

 松本作品ととも育った世代である。アウトローな宇宙海賊キャプテンハーロックやクイーンエメラルダスはもちろん、「セクサロイド」のお色気に胸はときめき、学生時代の下宿は「男おいどん」さながらのわびしさ。4畳半ではなかったけれど。

 SFのイメージが強いが、個人的に言わせてもらえばその本領は、戦場を舞台にした「ザ・コクピット」シリーズではないか。夢あふれるSFとは対極の、あまりにもリアルな世界。そこには運命に翻弄(ほんろう)される人々の悲哀が漂う。

 「松本さんは等身大の人間に…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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