有料記事 池田良、宮脇稜平2022年12月17日 15時00分 クマが人のいなくなった地域に行動範囲を広げ、川を伝って市街地に入る――。宮城県が公開しているツキノワグマの出没場所と、国勢調査による人口データを分析したところ、そんな動きが浮かび上がった。専門家から「アーバン・ベア」と呼ばれる都市型のクマによる人的被害が全国的に増える中、どうすれば共存できるのか。 仙台市青葉区のJR陸前落合駅前に広がる住宅街で9月6日夜、メスのクマが目撃された。周辺では8月以降、クマが人を襲う被害が続いていた。緊張が走ったが、街路樹に登っているのを発見され、約5時間半後に捕獲された。 宮城県では今年度、クマによる人的被害が9月時点で統計を取り始めた2001年以降で最多となる5件7人に上っている。 「動くクママップ」では、宮城県内の人口が減った地域に、クマが行動範囲を広げていく様子が分かります。人口の推移は、2010、15、20年に実施された国勢調査を使用。クマの出没場所は、宮城県が公表している2012~22年のデータをもとにしています。県のデータには詳しい住所がないものもあり、実際の出没場所とずれている場合もあります。(朝日新聞メディア研究開発センター・新妻巧朗、石井奏人) 環境省によると、日本に生息するクマによる人的被害のうち「住宅地・市街地」で発生したのは16年度の12件から20年度の28件と、2・3倍に増え、全国的な問題になっている。 背景にあるのは、クマの生息… この記事は有料記事です。残り1456文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
クリスマスツリーを彩る幻想的でエコな光 電飾使わず廃棄プラ再利用
三宅梨紗子2022年12月17日 16時00分 廃プラスチックを再利用した環境にやさしいクリスマスツリーが、名古屋駅近くの商業施設「KITTE(キッテ)名古屋」に展示されている。電飾ではなく、光を放つ「蓄光プラスチック」を使用。緑や赤のほのかな光が幻想的な空間を生み出している。25日まで。 高さ約10メートルのクリスマスツリーには、一つの大きさが約5センチで、石のような形をした約5万個の「蓄光プラスチック」が光る。太陽光や発光ダイオード(LED)などの光を1時間当てると20分ほど発光する。 電気代の高騰や電力不足への懸念などを背景に、「電飾ではない新たな価値観を提案しよう」と企画した。KITTE名古屋では午後5時以降、アトリウムの照明を落とす「ライトダウン」を1日に6回行う。イベント担当の板津雅史さんは「ささやかな明かりを通し、電気がある日常や省エネについて考えるきっかけにしてほしい」と話す。 蓄光プラスチックは、愛知県豊川市の自動車部品メーカー「プラセス」が開発。車の部品をつくるときに出る廃プラスチックを減らそうとの思いから生まれたもので、プラスチックの一種であるアクリル樹脂に蓄光材を混ぜて作られる。 同社の甲村尚久社長は「生まれ変わったプラスチックが暗がりで放つ幻想的な光をぜひ楽しんで欲しい」と話している。(三宅梨紗子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
【祈りの1日】「今も時間止まっている」 大阪のクリニック放火1年
大阪市北区のクリニックで26人が犠牲になった放火殺人事件は、17日で発生から1年となりました。オフィスや飲食店が集まる街で、多くの人の心の支えとなっていたクリニック。関わりのあった人たちの表情などを随時、お伝えいたします。 12:45 元患者の女性「先生、元気でやっています」 大阪市平野区の原田真紀さん(55)は、「このクリニックは憩いの場だった」と話した。煙に巻き込まれた人たちを思うと、「苦しかったに違いない」と胸が締め付けられる思いがした。 この1年、他のクリニックに行ったり、仕事をしたりして充実した日々を送れているのは、院長の西沢弘太郎先生(当時49)のおかげだという。いまの農業の仕事は、西沢先生に紹介してもらった。「元気でやっています、と伝えたいです」 11:55 増える献花 元患者女性「1年、早かった」 雨が降ったり、やんだりする空模様。現場ビル前の道路脇のスペースには、バラやユリ、キクなどの花束が少しずつ増えていく。 クリニックに通っていたという大阪市の会社員女性(26)も現場に花を手向けた後、「この1年は早かった」と話した。 亡くなった西沢弘太郎院長(当時49)には、会社の人間関係の悩みを伝え、いつも心配をかけていたという。「転職して、環境を変えて、いまはちゃんとやれています。だから、安心してください、と語りかけました」 11:40 休職中の公務員「復職に向け、がんばる」 大阪市の公務員男性(49)は花を手向け、ビルに手を合わせた。事件後、自身もうつ病になって、いまも休職中という。 「火事で犠牲になった人たちは、あきらめずにクリニックに通って、再起を誓った人たち。事件でその希望も打ち砕かれた。ご本人やその家族の無念の思いが伝わってくる。その人たちの分まで、というのはおこがましいかもしれないが、自分も復職に向かってがんまりますと伝えました」 11:00 元患者の女性「ただ、よくなること念じて」 過去にクリニックに通っていたという女性は、現場ビルの前に花を手向けた後、雨でぬれたクリニックの看板をタオルで拭き、ビルに向かって祈った。 「いまも実感がわかず、時間が止まっています」 事件当日、受診予定だったが、整形外科に行かなければならなくなって、クリニックには行かなかった。帰宅後にニュースで事件を知ったという。 事件後、亡くなった西沢弘太郎院長(当時49)の同級生が「院長は患者さんがよくなることを望んでいるでしょう」と話していたのを報道で知った。それからは、「ただよくなることを心に念じてやってきました」。 この女性は、西沢院長に伝えたい気持ちを手紙にしたという。「いまはかける言葉が見つかりません。やっていきます、としか言えません」と話した後、「事件に関心を持ち続けて欲しい。事件を風化させないでほしい」と訴えた。 10:45 会社員男性、初めて花を手向けに 大阪市の会社員男性(65)… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「おい西沢、やっと来れたわ」 事件現場に立った友、取り戻した思い
「おい西沢、ここか。やっと来れたわ」 10日午後、「西梅田こころとからだのクリニック」の看板が今もかかる大阪市北区の8階建てのビルの前で、スーツ姿の男性(50)がつぶやき、手を合わせた。 緊張で表情はこわばった。テレビニュースなどで見慣れていたビルはJR大阪駅から歩くと想像よりずっと近かった。ここに立てるまで1年近くかかった。 26人が犠牲になった大阪・北新地のクリニック放火殺人事件から、12月17日で1年となる。オフィスや飲食店が集まる街で、多くの人の心の支えとなっていたクリニック。あの日からの1年をたどる。 男性はクリニックの西沢弘太郎院長(当時49)の高校時代からの親友だ。あの日、同級生仲間から「『重体の院長』は西沢のことじゃないか」というメッセージが回ってきた衝撃は今も忘れられない。 数日後、家族と親友ら十数人だけでとり行われた通夜や葬儀に参列した。 眠っているようにきれいな遺体を対面しても、「まるで映画を見ているようで現実と思えなかった」。 事件現場前に献花台ができたと聞いても、足が動かなかった。「死を受け入れることで、高校時代のごく平凡な、でも、かけがえのない思い出まで消えてしまう気がした」からだ。 「こうちゃん」「のぶさん」で呼び合った日 大阪府内の私立の中高一貫校に通い、「こうちゃん」「のぶさん」と呼びあう西沢さんと親しくなったのは、高校2年生のとき。国公立大文系と国私大理系を志望する生徒が集まるクラスで、席が近くになったのがきっかけだ。 西沢さんが開業医の家系で、医師を目指していることは知っていた。付き合うほどに「放浪癖があり、いたずら好きのおもろいやつ」だとわかり、心が近づいていった。 放課後に突然、「神戸に行こう」と言いだし、三国志の関羽をまつった関帝廟(神戸市中央区)を訪ねたり、酷寒のなか、制服の肩に雪を積もらせながら平城京跡(奈良市)を縦断したり。 校外学習で京都市郊外の山に登ったときには、こっそり遠足のコースを抜け出してボウリングし、何食わぬ顔して点呼に戻った。教師に「自分ら靴がきれいや」と嫌みを言われた。 「彼のおかげで、学校と家の往復がすべてだった10代のぼくの世界がぐっと広がった」 背中を押した「頑張りや」の電話 友情のありがたさを実感した… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
避難民に働く場を、新橋にウクライナ料理店 「おいしい」は心の支援
ウクライナから戦火を逃れて避難してきた人たちに働く場を提供しようと、東京・西新橋にウクライナ料理店が開業して3カ月になる。店の名前は「スマチノーゴ」。ウクライナ語で「おいしく召し上がれ」という意味だ。現地風の料理や接客を通じて避難民と客が触れ合い、支援の輪が広がればとの思いが込められている。 オフィス街のビル2階。20席の明るい空間は、ウクライナ国旗にちなみ青と黄であしらわれた壁の色が印象的だ。日本人シェフのもとで、ウクライナの女性スタッフ数人が常時働いている。 オーナーは、都内在住で俳優や美術家として活動するTAKANEさん(本名・江副敬子〈たかね〉)。欧州に何年も住んだことがあり、日本に避難してきたウクライナの人々の暮らしが気になった。 「避難が長期化して手持ち資金に限りがある中、働きたくても仕事がなかなか見つからないと聞きました。言葉があまり障害にならずに人と接する仕事を提供できないかと、飲食店を思いつきました」 春から物件を探し始め、国内の避難民が集まるSNS経由でスタッフを募集。避難民7人を含むウクライナ人9人を雇った。 ただ、TAKANEさんはウクライナとの縁はなく、「ボルシチがウクライナ料理だとは知りませんでした」。自身も含め、客の大半を占める日本人の口に合い、通ってもらいやすいメニューにしたいと考えた。 知り合いの京都の料理人に和食のだしを使った味付けのレシピを相談し、和風とウクライナ風の融合を目指した。壁の色も、青と黄の反対側は日の丸の赤と白。日本とウクライナの融合、両国の友情を願ってのデザインにした。 9月の開業時のランチは、ロ… この記事は有料記事です。残り1157文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
仕事と未来の赤ちゃん まだ来ぬ「両立」に悩む私 女子大学生と就活
結婚予定の相手がいないうちから出産や子育ての不安を胸に抱き、やりたい仕事を目指すのをためらってしまう――。就職活動を機に、そんな悩みを抱える女子学生は少なくありません。社会学者の藤田結子・明治大教授は「興味ある仕事に挑戦を」と背中を押します。(上野創) 見つけた夢と、「28歳で1人目」の希望と 東京都内の私立大保育系学部に通う3年の女子学生(21)はこの秋、千葉市のZOZOマリンスタジアムにいた。ホームのロッテが佐々木朗希投手の好投もあって勝利した試合だ。 「野球場で素敵な思い出を作ってほしいな」。最近、試合を見ながらそんなことを考える。 大学3年になった今春、就職活動が始まった。「プロ野球に関わる仕事がしたい」と思うが、球場のバイト先の社員から「球団は新卒をほぼ採らない」と聞いた。それならば、とスポーツ新聞などの説明会に参加してきた。 枠が狭いのは分かっている。実際、インターンシップに応募しても落とされ続けた。それでも夢に向かおうと思っている。 そしてもう一つ、夢がある。「できれば3人子どもがほしい。1人目は28歳あたりで」 高校時代、保健の授業で、加齢とともに妊娠しにくくなると教わった。大学では、「子育てには体力と経済力が必要」ということを知った。 22歳で就職して、3年ほど社会人スキルを磨き、人脈も作りたい。球団で働けるのはいつから? 転職となると25歳ごろ? 子育ての夢も同じ時期だ。「… この記事は有料記事です。残り982文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「スーパーヒーロー」小学校の教室に市議たたえる掲示物 作成者不明
垣花昌弘2022年12月17日 8時22分 山口県周南市立桜木小学校の一室に、地元の市議をたたえる内容の掲示物が置かれていたことが16日の市議会で指摘され、その影響で議案の審議が紛糾する事態になった。市側は「確認できていなかった。調査に時間を要する」と答弁した。 島津幸男議員が入手した、室内で2年ほど前に掲示されていたという写真が示された。掲示物の作成者や掲示されていた期間は不明という。別の議員によると、1週間前にも室内に置かれ、外から内容が確認できたという。 この部屋は空き教室で、地域の住民らがコミュニティースクールの活動で使っている。掲示物は、田村勇一議員(81)=5期目=の名前や写真の他、「スーパーヒーロー」「やさしいリーダー」「がんばっている人」など議員をたたえる言葉が記されている。 取材に対して、田村氏は「全く知らない。答えられない」と述べた。部屋の利用受付の業務を担う桜木市民センターの所長は「見た覚えがない」と話した。 今議会に同センターに関連した議案が出されており、掲示物を問題視した複数の議員が議案に反発し、審議は夜まで続いた。(垣花昌弘) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「地下シェルターほしい」相次ぐ問い合わせ 想定は「戦争」
【動画】扉の中は?地下シェルター「戦争」で増える受注=斉藤佑介撮影 ミサイル保有は抑止力になるのか。政府は16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を盛り込んだ安保関連3文書を閣議決定した。戦争を身近に感じ始めた市民も少なくないようだ。 「シェルターが欲しい」。愛知県豊橋市の土木建設会社には、そんな問い合わせが増えている。会社側が「どんな災害を想定していますか」と尋ねると、返ってくる言葉は「戦争」が多いという。 「戦争を身近に経験したご年配の世代からの問い合わせも増えています」 芳賀土建専務の芳賀数正さん(36)はこう語る。ミサイル攻撃や地震などから身を守る住宅用の「地下シェルター」の開発を今年2月から始めている。 シェルターは鉄骨造りで幅と奥行きが6・3メートル×2・2メートル、高さ3メートル。周囲をコンクリートで覆う。核シェルターが普及しているというイスラエルの換気システムも採り入れている。 シェルターを連結させれば、広い地下空間にもなる。2023年春をめどに、建設上の必要な手続きを終え、自社の事務所や長野県の住宅など3軒で施工する予定だ。費用は「1500万円~」と想定するが市民に手の届きやすい価格帯をめざすという。 開発のきっかけは今年2月… この記事は有料記事です。残り495文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
敵基地攻撃?戦争被害を忘れてないか 置き去りの戦争体験者が怒り
有料記事 編集委員・伊藤智章2022年12月17日 7時00分 「先の戦災被害の救済の議論も全くないまま、次の戦争への道を走り始めている。このままでは、また切り捨てられてしまう」 東京大空襲で母と弟2人を失った千葉市の河合節子さん(83)は軍事優先の「国防議論」をハラハラしながらみている。政府は16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を盛り込んだ安保関連3文書を閣議決定した。 政府は戦後、旧軍人軍属に恩給などで延べ60兆円を支給した。だが、空襲など戦災被害を受けた民間人は被爆者らを除き、救済の対象とされてこなかった。 河合さんら遺族らが空襲被害を訴えて国家賠償を求めた訴訟はこれまで、東京、大阪、名古屋で起こされたが、いずれも敗訴した。その際、国が主張してきたのは「戦争という非常事態下、身体や財産の被害は、国民が等しく我慢しなければならない」という「受忍論」だった。 河合さんは「次の戦争で私と同じ目に遭う。それでもいいのか。国民は気付いてほしい」と嘆く。 実際、武力攻撃を受けた場合の行政の役割を定める現行の国民保護法には民間被害の補償の文言はない。 同法を所管する内閣官房副長… この記事は有料記事です。残り663文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 安保3文書・防衛費増額 外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など3つの文書を改定は、日本の安全保障政策の一大転機となりそうです。多角的にお伝えします。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「愛国心」も明記 新しい国家安全保障戦略、前回から内容一部変更
成沢解語2022年12月17日 7時00分 16日に閣議決定された安全保障関連3文書の最上位文書「国家安全保障戦略」に、愛国心に関する記述が前回に引き続き盛り込まれた。 政府は今回の国家安全保障戦略で、2013年の前回と同様、自衛隊に協力的な世論形成をめざす取り組みを記しているとみられる「社会的基盤の強化」という項目で、「諸外国やその国民に対する敬意を表し」と触れた上で「我が国と郷土を愛する心を養う」と記述した。その記述の前後は、前回と今回で少し変化している。 前回は記述の前に、「国民一人一人が、地域と世界の平和と安定及び人類の福祉の向上に寄与することを願いつつ、国家安全保障を身近な問題として捉え、その重要性や複雑性を深く認識することが不可欠」とあった。今回は「平素から国民や地方公共団体・企業を含む政府内外の組織が安全保障に対する理解と協力を深める」との内容になっており、自衛隊が有事の際、自治体や民間企業に国民保護や物資輸送などで協力を求めることがあることを念頭に置いたとみられる。 また、前回は「愛する心を養う」の記述の後に「領土・主権に関する問題等の安全保障分野に関する啓発や自衛隊、在日米軍等の活動の現状への理解を広げる取り組み(を進める)」と記されていたが、今回は「自衛官、海上保安官、警察官等我が国の平和と安全のために危険を省みず職務に従事する者の活動が社会で適切に評価されるような取り組みを一層進める」と変わった。 また、前回の「これらの活動の基盤となる防衛施設周辺の住民の理解と協力を確保するための諸施策等を推進する」は今回、「これらの者の活動の基盤となる安全保障関連施設周辺の住民の理解と協力を確保するための施策にも取り組む」になった。 前回にない「海上保安官」などが入り、「防衛施設」が「安全保障関連施設」に表現が変わった背景の一つには、取り組む施策の中に、海保施設を含む安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する土地利用規制法に伴う対応があるためとみられる。(成沢解語) 安保3文書・防衛費増額 外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など3つの文書を改定は、日本の安全保障政策の一大転機となりそうです。多角的にお伝えします。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル