今月3日、88歳で亡くなった作家の大江健三郎さんは、戦後文学を牽引(けんいん)しただけでなく、一貫して反核・反戦のメッセージを発信し続けた。功績をたたえ、悼む言葉が各界から寄せられた。 文芸評論家の蓮實(はすみ)重彦さんは「大江さんはノーベル文学賞を取ったから偉いのではありません。ノーベル賞とは関係なく、元々偉い作家なのです」と悼んだ。 平野啓一郎さん「小説を書くのが嫌になるぐらい」 作家の平野啓一郎さんは「本当に大きな影響を受けた作家で、言葉が見つからない。大江さんがいらっしゃること自体が、日本の文壇に大きな緊張感を与えていた。その時代にデビューできたことは自分にとって大きなことだった。とくに『万延元年のフットボール』『セヴンティーン』などは、小説を書くのが嫌になるぐらい圧倒的。小説ってこういう人が書くんだろうなと思い知らされるような作品だった」と話した。 映画監督の山田洋次さんは松竹を通じてコメントを発表した。以下の通り。 ◇ 物事を考える上で、正しい指針を与えてくれる人がいなくなってしまった不安と悲しみに包まれています。 加藤周一さんと大江健三郎さんの存在が長い間日本人にとってどれほど大切だったかを思いつつ、今大江さんを失うことが、現在のような混沌(こんとん)としたこの国の、さらに世界の状況にとって大きな損失だということを考えます。 心ある日本人にとって、羅針盤を失ったような気持ちではないでしょうか。 小森陽一さん「ノーベル文学賞を受賞後、何度も駒場で」 「九条の会」事務局長の小森陽一・東京大学名誉教授が追悼文を寄せた。 ◇ ノーベル文学賞作家で、「九条の会」呼びかけ人の大江健三郎さんが御逝去された。 大江さんとは、加藤周一さんや井上ひさしさんとの御縁で、「九条の会」を発足させるにあたって、当初から御相談にのっていただいていた。私が最初に就職したのが成城学園だったので、同窓生である大岡昇平さんの御紹介で、「御近所づき合い」をされている大江さんとも親しくさせていただくことが出来た。 東京大学教養学部に、私が転職した二年後に、大江健三郎さんがノーベル文学賞を受賞された後、何度も駒場で学生相手の講演をしていただいた。そうした御縁が重なり、井上ひさしさんと司会をつとめていた「座談会昭和文学史」では、御自身のことを思い切り語っていただいた。そして「九条の会」発足において、中心的な役割を担っていただくことになった。全国の講演も快く引き受けて下さった。 あまりにも大きな喪失である。しかし、時々の大江さんの言葉を想起しながら、しっかりと「九条の会」運動を前に進めていく決意である。 落合恵子さん「背中を押してもらった宝物の言葉」 作家の落合恵子さんの話 あまりに大き過ぎる存在でした。東日本大震災の後、「さようなら原発1000万人アクション」のデモでたびたび一緒になり、隣で歩く時もドキドキしました。でも「子どもの本は今、何がおもしろいですか」などと気さくに話しかけて下さった。スピーチをする時、それが5分であっても、しっかりと原稿を用意されていました。原発はだめなんだという思いを届けようと懸命に話して下さった。心から感謝しています。その思いを私たちはしっかり握りしめていかなくては、と胸に刻みました。 以前、イサク・ディネセン作品の原書をいただき、「小説を書きなさいよ」と言って背中を押していただいたこと。(主宰する子どもの本専門店)クレヨンハウスでの講演を快く引き受けて下さったこと。宝物です。 原広司さん「よく電話がかかってきて、ダンテやスピノザの話を」 大江さんの小説に登場する建築家のモデルになるなど親交の深かった原広司さんの話 あらゆる分野が細分化した現代において、僕らの世代は、世界を考えるためには同時代性を探ることが必要だと考えてきたが、大江さんはその中心にいたと思う。 「個人的な体験」以後、光さんと生きることを主題に、四国・大瀬の谷を舞台として演劇を繰り返し上演するように、人間の生死の問題を形而上(けいじじょう)学的に考え続けた。こういう実験的な態度を貫いた人は大江さんしかいない。 神なき時代に絶望することなく、人間の存在、世界モデルを捜し求め、世界的に不動の位置を占めている。文学の世界のできごとだったが、建築的に解釈することもできた。 とにかく人を笑わせようとする楽しい人柄で、以前はよく電話がかかってきて、ダンテやスピノザなど、そのとき関心を持っていることについて話してくれた。覚悟はしていましたが、もう少し生きてくれると思っていました……。 文学の世界での尊敬にとどまらず、大きな文化の歴史に大江さんを位置づけることがこれからの若い人たちの課題だと思う。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高裁、捜査機関の「捏造」に踏み込む 冤罪救済の仕組み弱さ浮き彫り
強盗殺人事件で死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す決定が出た。犯行時の着衣とされた「5点の衣類」をめぐり、揺れに揺れた裁判を「決着」させたのは「血痕の色の変化」だった。事件発生から57年。捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)にまで踏み込んだ決定は、冤罪(えんざい)を救済する再審制度の脆弱(ぜいじゃく)さを改めて浮かび上がらせた。 血の色は主観的なもので明白な新証拠になりにくい――。弁護団自身が当初、血痕の色の変化についてはそう考えていた。だが、これが再審開始の決め手となる新証拠になった。 元になったのは、2008年の第2次再審請求にあたって、支援者らが実施した再現実験だった。1年以上みそ漬けになった後に突然「発見」され、袴田さんの犯行着衣とされた5点の衣類の写真の血痕には赤みがあった。しかし、再現実験では赤みは消えた。 血痕の色、最後に残った「唯一の争点」 それでも弁護団は、DNA型鑑定による無罪の証明により注力していた。最高裁でDNAは再審開始の根拠にならないと退けられ、結果的に「唯一の争点」として残ったのが、血痕の色の変化だった。 今回の東京高裁での審理では、「赤みは消える」とする弁護側と「赤みは残る」とする検察側から、計5人の専門家の意見や再現実験の結果が提出され、証人尋問も実施された。 高裁が軍配を上げたのは弁護側の専門家だった。 みその高い塩分濃度と弱酸性… この記事は有料記事です。残り3042文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
前文を中高生が作成、その中身とは? 武蔵野市子どもの権利条例
東京都武蔵野市議会で13日、子どもの権利条例が可決・成立した。子どもの権利とは何か。それが尊重されるまちの姿とは――。条例案作りの過程では、「子ども」の当事者である10代が数多く参加し、考えた。条例の前文には、その成果として「子どもたちのことば」が盛り込まれている。 条例の前文に盛り込まれた「子どもたちのことば」は589字を数えます。その全文を後半で紹介しています。 武蔵野市子どもの権利条例は、主に18歳未満の市民を対象とし、安心して生きる権利や自分らしく育つ権利、休息する権利などを保障するべき権利として掲げる。4月に施行するが、子どもの権利擁護の仕組みについては今後2年以内に定めるとしている。子どもの権利に関する条例は、都が「こども基本条例」を2021年4月に施行したほか、都内の区市でも制定の動きが広がりつつある。 市が有識者らによる検討委員会を立ち上げ、条例案作りを本格化させたのは21年度。併せて中学・高校生世代によるワークショップでも、子どもの権利条例をテーマに議論を始めた。 意見を尊重された経験、頭ごなしに否定された経験語り合う 議論の舞台となったのは「Teens(ティーンズ)ムサカツ」。市内在住、在学の希望者が地域活動に関心を深め、街づくりについて提言するために市が設けてきた場だ。実行委員会のメンバー(21年度15人、22年度34人)を中心に、日本が1994年に批准した国連の子どもの権利条約などを参考に「子どもの権利とは?」を考えるところから始めた。 過程では熱い議論が交わされた。市の検討委で「子どもの参加(意見を表す権利)」が重点項目にあがると、ムサカツのメンバー同士で自分の考えや思いを尊重された経験、頭ごなしに否定された経験などを語り合い、大人と子どもの関係性について考えた。 その後は市の検討委と意見交換をしたり、より多くの中高生が参加するワークショップを催したり。ムサカツをサポートする市子ども子育て支援課の福原綾乃さん(29)は「条例作りに生かすため、『自分たちが大切にしたいこと』は何だろうと、考えてもらった」と振り返る。 22年度の実行委が担ったのは、前文に入れる「子どもたちのことば」の文案作り。検討委が昨年5月に出した中間報告へのパブリックコメントで寄せられた、高校生世代までの自由意見881件も参考にした。「わたしたち子どもは」との主語で始まる文章で、昨年11月に示された条例素案に盛り込まれ、寄せられた意見を受けて微修正されたものがこの日、成立した。 実行委のメンバーで、都立武蔵野北高校2年の宮城結生(ゆい)さん(17)は「何年後かの社会を担うのは、子どもたち。その可能性を否定せず、伸ばしていけるまちであってほしい」と話す。その思いは、条例の前文に掲げた文章にある「わたしたち子どもは、未来の希望となる種」という表現に込められているという。 条例が成立したことで、「大人も子どもも、『子どもの権利とは』と考え、行動していくきっかけになってほしい」と願っている。(井上恵一朗) ■■武蔵野市子どもの権利条例… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
私有地の情報などを知人2人に漏らした疑い 福岡市職員を逮捕
有料記事 福井万穂 西岡矩毅2023年3月13日 20時04分 福岡県警は13日、住所不定の福岡市職員の野中俊秀容疑者(33)を地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕し、発表した。認否を明らかにしていない。野中容疑者は、中央区役所地域整備課に勤務。県警は同日、同区役所など関係先を家宅捜索し、押収した資料の解析を進めている。 捜査2課と中央署によると、野中容疑者は昨年3月ごろ、中央区内の飲食店で、職務上知り得た複数の「市道内私有地」に関わる相談内容や相談者名などが記載された資料を知人2人に手渡した疑いがある。 市によると、野中容疑者は2… この記事は有料記事です。残り177文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
墨田区の住宅に複数人押し入り、女性に暴行 強盗事件か、警視庁捜査
遠藤美波2023年3月13日 20時23分 13日午後3時15分ごろ、東京都墨田区八広1丁目の戸建て住宅で、住人の60代女性が複数人に襲われ、血だらけになっているという趣旨の110番通報が近隣住民からあった。警視庁によると、女性は粘着テープで目隠しされ、腰の骨が折れるなどの重傷を負った。室内が物色された跡があり、同庁は強盗致傷事件とみて、逃げた複数人の行方を追っている。 向島署によると、女性は一人暮らしで、住宅の2階にいたところ1階から物音がしたため、階下に降りると、見知らぬ複数人と鉢合わせし、顔を殴られるなどの暴行を受けたという。その後自ら目隠しを外し、屋外に出て近隣住民に助けを求めた。署が被害品などの特定を進めている。 現場は京成曳舟駅から北東に約500メートルの住宅街。(遠藤美波) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Australia extends best-ever WBC run with win over Czech Republic
Australia’s national baseball team has already been in Japan for over two weeks. Its stay was extended for a few days on Monday afternoon, thanks to some clutching hitting by Logan Wade. Wade connected on a tiebreaking, two-run double in the seventh inning, and Australia’s best-ever run at the World […]
難聴女児の遺族側が控訴 逸失利益「平均賃金の85%はおかしい」
松浦祥子2023年3月13日 16時30分 大阪市生野区で2018年、聴覚支援学校に通う井出安優香(あゆか)さん(当時11)が重機にはねられて死亡した事故を巡る訴訟で、遺族側は将来得られたはずの「逸失利益」を平均賃金の「85%」が相当とし、重機の運転手側に約3770万円の賠償を命じた一審・大阪地裁判決を不服として大阪高裁に控訴した。10日付。 逸失利益は、障害がある場合は低くされることが多い。訴訟で、遺族側は「健常者と同水準」、被告側は平均賃金の「6割」を主張していた。遺族側は、控訴理由を「15%を削られたのはおかしい」としている。 地裁判決は、難聴によって他者とのコミュニケーションが制限されうるが、安優香さんは学習に支障はなく、様々な就労の可能性があったと認定。音声認識アプリなどで難聴の影響を小さくできるとし、逸失利益を、聴覚障害者の平均収入(平均賃金の約7割)よりも高く算定した。(松浦祥子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
今年5月の英国国王の戴冠式に秋篠宮ご夫妻参列で準備 宮内庁が発表
多田晃子2023年3月13日 16時45分 宮内庁は13日、5月6日に英国で開かれるチャールズ国王の戴冠(たいかん)式に秋篠宮ご夫妻が参列する方向で準備を進める、と発表した。今後、閣議了解を経て正式に決定する。 同庁の池田憲治次長が13日の定例会見で発表した。同庁によると、外国王室の戴冠式には、これまで皇太子が参列してきたことなどを考慮し、天皇、皇后両陛下と相談して決めたという。 1953年の英国のエリザベス女王の戴冠式には皇太子時代の上皇さまが参列した。2008年のトンガ国王の戴冠式には皇太子時代の天皇陛下が、13年のオランダ国王の即位式と15年のトンガ国王の戴冠式にはいずれも皇太子ご夫妻時代の両陛下が参列した。同庁によると、外国王室の戴冠式に天皇陛下が参列した例は過去にないという。(多田晃子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「伝えたい音出し切る」 全国に挑む朝日大の3人 アンサンブルコン
浜松市で19日に開かれる全日本アンサンブルコンテストに、朝日大学吹奏楽部(岐阜県瑞穂市)の木管三重奏が出場する。フルートの滝口七海さん(3年)、オーボエの山田伊織さん(2年)、クラリネットの古川由依さん(3年)の3人。「さらに音楽性を高めて、伝えたい音を出し切りたい」と意気込む。 3人は2月11日に津市で開かれた東海大会で、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県の代表9チームの中でトップに選ばれた。創部4年の同大の吹奏楽部で、初めての全国切符をつかんだ。 演奏するのは難曲の「木管三… この記事は有料記事です。残り389文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
L’écrivain japonais Kenzaburo Oé, Prix Nobel de littérature, est mort
L’écrivain Kenzaburô Ôe en 2012. AFP/FRANCOIS GUILLOT Rarement un auteur fut plus viscéralement de son époque. Par sa carrière littéraire et par les combats qu’il mena, Kenzaburo Oé fut une incarnation de l’histoire intellectuelle du Japon de l’après-guerre dans ses espoirs comme ses désillusions. L’écrivain est mort « de vieillesse aux […]