戸村登2023年3月11日 14時00分 会いに来てくれる観音様――。愛知県豊川市の財賀寺が、秘仏の本尊前に立つ仏像を1カ月ほど、企業や一般住宅に「出張」させている。来年の開創1300年を記念した事業の一つで、「どんなところでもお持ちしてお参りいただける」と呼びかける。 【動画】旅する千手観音様 企業へ、民家へ大忙し 寺では、2024年に本尊の千手観音菩薩(ぼさつ)像を御開帳する予定。開創1300年を盛り上げようと、始めたのが「地域巡行プロジェクト」だ。本尊の身代わりの「お前立(まえだち)様」を期間限定で貸し出すことにした。 巡行のためワンボックスカーも購入して、内部を改造。西本全秀住職(65)の友人・知人らでつくる「お運び隊」が、仏像の運び出しや安置の作業をする。 2018年から始まった巡行は、今月1日に47カ所目の豊橋市の企業から、次の豊川市の豊川信用金庫牛久保支店へと移された。4月5日までロビーで展示される。巡行は24年10月まで続けるという。 希望する場合は、運搬や設置などにかかる経費として3万円が必要。問い合わせは財賀寺(0533・87・3494)。(戸村登) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
3人の子を奪った津波 「生きる意味」見失った夫婦に差した一筋の光
飛び散る木くずに、銀色の吐息が混じる。 2月中旬の夜。室温2度に冷え込んだ宮城県東松島市の作業場で、木工作家の遠藤伸一さん(54)は本棚を制作していた。 手元に集中しようとしても、うまくいかない。心の中にいくつもの声が響いて邪魔する。 「奏(かな)ちゃん、冷たいんだ」「俺だ、俺が殺したんだ」「お父さん、大好きだよ」「あなた、どうして助けてくれなかったの……」 納品先は米国だ。納期まであと数週間しかない。 「待ってろよ。あっちの人がびっくりするような本棚、作ってやっからな」 電動のこぎりの切断音が、ざわめく心を少しだけ鎮めてくれる。でも、「自分だけが生き残った」という罪悪感が、ぬぐい去られることは決してない。 子どもたちに言った「父ちゃんがいるから、大丈夫」 2011年3月11日、改修を請け負っていた石巻市の水産会社からの帰途、トラックで走っていてもわかるほど地面が揺れた。 石巻市の自宅には、午前授業で帰宅していた中学1年生で13歳の長女・花さんが、伸一さんの母・恵子さん(80)と一緒にいた。 近くの渡波小学校で、4年生で10歳の長男・侃太(かんた)さんと2年生で8歳の次女・奏さんを引き取って自宅に連れ帰ると、連絡のつかない親戚の様子を見に行くことにした。 「父ちゃんがいるから、大丈夫だぞ」。余震を怖がる子どもたちを家に残し、トラックを走らせた。 親戚は不在で、引き返そうとしたところ、海の方角でパッと砂煙が上がるのが見えた。 「何だ、ありゃ?」 家や車が津波に押されて路上に流れ込んでくる。避けようとハンドルを切ったが、だめだった。 次の瞬間、トラックは巨大な水の塊に持ち上げられた。車内に閉じ込められないよう濁流の中に飛び込み、流れてきた屋根にしがみつく。 よじ登ったコンビニの屋上で数時間過ごしたあと、水につかりながら、近くの渡波保育所に向かった。 同じころ、妻の綾子さん(54)は、避難者でごった返す石巻市役所にいた。 看護助手として働く市内の病院で、激しい揺れに襲われた。家に帰ろうとJR石巻駅に向かうと、水がひざ上まできたため市役所に駆け込み、夜を明かした。 子どもたちが心配だったが、携帯電話には小学校から「子どもたちは体育館に避難しています」という一斉メールが届いていた。 力なく泣く母、泥にまみれた娘 翌朝、渡波保育所で夜を明かした伸一さんが自宅に向かうと、家は跡形もなく流されていた。 「誰かいませんか……」 力なく泣いている母が、胸に奏さんを抱いていた。 「奏ちゃん、冷たいんだ、冷たいんだ……」 伸一さんは、目の前の現実をのみ込めなかった。 聞くと、母は濁流にのみ込まれた直後に、気を失っていた。津波が引いた後、がれきになった家の中で孫を見つけたという。 泥にまみれた体を抱きしめると、「ほっぺにチュー」をせがんだ娘は氷のように冷たく、髪からは砂がぼろぼろとこぼれ出た。 「俺のせいだ。俺が学校から家に連れ戻しさえしなければ……」 奏さんを保育所に運んで布団に寝かせると、花さんと侃太さんを探すため、自宅の周辺へと戻った。 家の中で花さんを見つけ、壁を壊して引っ張り出すと、人を笑わせるのが好きで、いつもほほえんでいた顔は泥だらけだった。 「ごめんな。お父ちゃんがついていながら」。夜、保育所の2階で冷たくなった2人の娘を抱きながら、うなり続けた。 「侃太なら逃げているかも…」 砕かれた期待 綾子さんは結局、市役所の椅子で2晩を過ごした。 3日目の朝、渡波小学校に着くと、親戚が言った。「花ちゃんと奏ちゃん、だめだった。侃太くんはまだ見つかっていない」 突然ほおをひっぱたかれたように、悲しみも怒りもわかず涙さえ出ない。 保育所に向かうと、伸一さんがたき火を囲みながら待っていた。 「ごめん、花と奏、助けられなかった……」。2階では2人の娘が、先生のエプロンを掛けられて、横たわっていた。 「なぜ、助けてくれなかったの?」「侃太と奏は学校にいたはずでしょう?」 夫を問いただした直後、記憶を失った。 翌朝から、夫婦は自宅周辺で、侃太さんを探し回った。「侃太なら、どこかに走って、逃げていてくれるかもしれない」。心のどこかでそう期待していた。 引っ込み思案だった侃太さんは、足が速かった。「マラソンで1番になれるかもしれない」。近くの堤防で毎朝、父子で駆けっこの練習をしていた。 しかし約1週間後、保育所に自衛隊員が訪ねてきた。津波で流された家近くで小学生とみられる遺体が見つかったという。 綾子さんが自衛隊の車両に駆け寄ると、荷台に侃太さんが寝かされていた。住民が手渡してくれたタオルで、泣きながら必死に息子の顔をぬぐった。 旧青果花き市場に運ばれた三つの小さな遺体を前に、伸一さんは思った。「死んでしまいたい。もう、生きている意味なんてないじゃないか」 3月下旬、綾子さんは避難所に設置された電話で初めて、東京で暮らす両親に事実を伝えた。 「ごめんなさい、守れなかった」。孫を溺愛(できあい)していた父親にそう謝ると、電話口に母親が出た。 「お母さん……」。次の瞬間、震災後初めて、わんわん泣いた。 感情を失い、過ごした日々 差し込んだ一筋の光 震災後の日々を、夫と妻は感情を失い、ロボットのように過ごした。悪い夢を見ていると思い込もうとした。でも、わずかに眠って目を覚ますと、周りの光景は変わっていない。 […]
7万年の気候変動を封入 褐色のしま模様に刻まれた地球の歴史
有料記事 文・永井靖二 写真・柴田悠貴2023年3月11日 15時00分 7万年余に及ぶ気候変動を刻んだ地層のステンドグラスは、福井県の名勝・三方五湖(みかたごこ)の岸辺で褐色の光を放っていた。中央の白い帯は1万1653年前、「最終氷期」が明けた頃のものだ。 ラムサール条約登録湿地の三方五湖(みかたごこ)は、その名の通り五つの湖を指す。 最大の水月(すいげつ)湖は「奇跡の湖」と呼ばれる。流入河川がなく周囲の山で強風も届きにくい湖水は、水深5~7メートルより下が無酸素状態だ。加えて東側の活断層で、地盤は沈み続けている。そのため生物や流水に乱されず7万年余の間、水深も保ったまま1年に1枚、厚さ平均0・7ミリの地層が堆積(たいせき)した。 記事後半では、地元で人気のグルメスポット紹介や会員登録すると応募できるプレゼントもあります。3月19日(日)締め切り 「年縞(ねんこう)」と名付… この記事は有料記事です。残り1147文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Kensuke Kondo emerging as key member of Samurai Japan lineup at World Baseball Classic
Kensuke Kondo can get lost in the shuffle sometimes. As the No. 2 batter for Samurai Japan at the World Baseball Classic, Kondo is hitting behind leadoff man Lars Nootbaar, an MLB player who has quickly become one of the most popular players on the team. Shohei Ohtani bats behind […]
女性起業家、どうすれば増えますか? キャシー松井さんに聞く
政府は起業家に占める女性の割合を2025年までに30%以上に引き上げる目標を掲げ、政府系金融機関が優遇金利を設けたり、自治体が支援制度を打ち出したりしている。だが、それでも女性は資金調達に苦労する状況が目立ち、平均開業費用も男性との間で2割以上の差が出ている。 どうしたらいいのか。そもそもなぜ、女性起業家を増やした方がいいのか。ESG(環境・社会・企業統治)重視のベンチャーキャピタル(VC)「エムパワー・パートナーズ・ファンド」創業者の1人、キャシー松井さんに聞いた。 ――女性の起業家が増えない現状をどう見ていますか。 女性の起業家や、そこにお金を出す投資家が少ないのは世界的にも問題で、米国でも少ないです。 資金を出す側が多様でなければ、多様な投資家にお金が回ってゆきません。投資家はリスクをとってなるべく高いリターンを得なければならないわけですが、そこで自分が見慣れない、生まれ育ったバックグラウンドや考え方が必ずしも一致しない人がテーブルの反対側に座った場合、本当に事業計画を実現できるかどうか不安になります。事業がフェムテックや女性の健康といった領域だった場合、男性投資家がよくわからないと感じる、ということもあります。 こうしたことは、女性が投資家で男性が起業家の場合にも起き得るでしょう。しかし今、資金を提供する側は男性が圧倒的な多数派です。このため、「○○年までに○○億円を達成する」と同じように言った際に、女性起業家がより疑問視され、「本当に市場適合性があるのか」など、男性だとされないような質問を投資家から受けるということが起きています。それを示す調査結果も出ています。無意識の偏見ですね。 ――起業家が多様になることで、どんなことがもたらされると考えますか。 人権や平等という観点に加え… この記事は有料記事です。残り1813文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
スタートアップも男性優位のムラ社会 女性起業家は、投資家になった
それは「男子校のノリ」のように映った。 松村映子さん(39)は2011年、女性向けファッションのサブスクリプション(定額制)サービスを提供する会社を立ち上げた。 新卒でITコンサルに就職したが、両親がフリーランスなど会社勤めではなかったため、中高生のころから漠然と起業家を夢見ていた。 大企業のような組織と違い、起業の世界に性別はあまり関係ないと思っていたが、実際はそうではなかった。 スタートアップかいわいは「友達コネクション」がモノを言う狭くて小さいなコミュニティーだ。その「ムラ社会」の構成員はほとんどが男性。起業家仲間や投資家と朝までお酒を酌み交わし、徹夜明けで猛烈に仕事をすることが「美徳」とされていた。 飲み会に参加しなかったからといって、何か直接的な不利益があるわけではない。ただ、資金集めや会社経営の上で欠かせない付き合いだと痛感させられた。 ムラ社会では、投資する側も圧倒的に男性が多い。松村さんがサブスクのサービスで生理用品を展開しようと、資金を募っていたころのこと。男性投資家にこう言われた。 スタートアップの世界でも幅をきかせる男社会。起業をめざす女性を孤立させないため、女性たちが動き始めます 「生理の悩みは男の自分には… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
【写真まとめ】「これからも見守って」 東日本大震災から12年
東日本大震災から11日で12年となりました。関連死を含む死者・行方不明者は2万2212人。避難者は今も約3万1千人にのぼります。 当時、巨大な津波に襲われた沿岸部では11日、早朝から追悼のために訪れる人々がいました。 岩手県大船渡市では、菅野明美さん(69)が孫の船本裕介さん(当時18)の墓参りに訪れていました。孫が津波に流されて亡くなったのは、高校を卒業しまもなく漁師として働くことが決まっていた矢先のこと。「『働いたお金は一番最初におばあちゃんにあげる』と言うほどの家族思いだった」。静かにその死を悼んでいました。 仙台市若林区荒浜地区の海岸で日が昇る海を見つめていた岩谷亮さん(34)。娘の美桜さん(6)に震災のことを伝えようと初めて一緒に訪れたそうです。 宮城県名取市閖上地区の名取川沿いの防波堤で、日の出を見つめていた髙橋理恵子さんは、震災で宮城県東松島市に住む高校時代の同級生を亡くしました。十三回忌にあたる11日に慰霊の意味をこめ、朝日を見に来たそうです。「こんなに静かできれいな海なのに、あのときはなんで猛威をふるったんでしょうね」。水平線からのぼる太陽を見て、「これからも私たちのこと、見守ってください」と祈りを込めていました。 東北の被災地を中心に、各地の様子を写真でお伝えします。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Au Musée Guimet, l’art éphémère de l’éventail d’Utagawa Hiroshige
« Les Trente-Six Génies féminins de la poésie » (vers 1843-1846), d’Utagawa Hiroshige, feuilles d’éventail démontées. DOMINIQUE BALIKO/FUNDACJA JERZEGO LESKOWICZA C’est à un objet du quotidien du XIXe siècle japonais que le Musée national des arts asiatiques Guimet consacre sa nouvelle exposition, « Hiroshige et l’éventail, voyage dans le Japon du XIXe siècle ». Un accessoire […]
医療がなければ人は帰らない 片道5時間、福島に通い続けて12年
その距離300キロ以上。自宅の神奈川県茅ケ崎市から福島県南相馬市の診療所まで、毎週通う医師がいる。 週2日、新幹線とバスを乗り継いで 「中尾ちゃん」こと中尾誠利さん(52)。12年前の東京電力福島第一原発事故の直後に医療ボランティアとして現地に駆けつけ、孤独や不安を抱える住民の声を聴き続けてきた。 外科から内科まで、外来患者の診療を担う中尾さんのカルテには情報がびっしり。患者の体調のことだけでなく、家族関係や仕事の近況もメモする。 本業は産業医の指導などをするコンサルタント事務所(茅ケ崎市)の代表。拠点は神奈川だが、合間を縫って週に2日間、新幹線やバスを乗り継ぎ、片道5時間かけて南相馬市立総合病院付属小高診療所に通う。 震災直前に医師が不足していた南相馬市小高区の小高病院(当時)の募集に申し込み、2011年春からの赴任が決まっていた。同年5月、原発の20キロ圏内にある病院は避難指示区域内だったが、「行くしかない」と現地に向かった。職員も避難し、医師は常勤の4人しか残っていなかった。 熱中症、この病院がなければ… 区域内で初めて診療を再開し… この記事は有料記事です。残り849文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大地震、でも「迎えに行かないで」 もしも保育園に子どもがいたら
子どもを保育園に預けているときに、もしも大きな地震が来たら……。電気も通信手段も途絶え、保育園に連絡する手段がない。さて、どうする。専門家は「やみくもに迎えに行かないで」と呼びかけます。その理由とは。 2011年3月11日。川崎市内のある認可保育園は混乱の渦の中にいた。 当時いたのは、100人ほどの園児。近くの小学校のプールから水しぶきが上がるほど大きな揺れだった。職員たちは園児たちを園庭に避難させ、乳幼児には布団を上からかぶせた。 近隣の保護者たちは次々に迎えに来てくれた。職員は25人ほどいたが、家族がいる職員は帰宅してもらった。12、3人ほどで園児の対応にあたった。 一番困ったのは、情報の遮断だ。 電気は止まりテレビから情報が入らない。電話など通信手段も絶たれ、保護者たちとの連絡もできなかった。 交通機関が止まっており、すぐには迎えに来られない保護者もいた。残った子どもたちには備蓄していた食料と水を与えて一晩過ごした。子どもたちが全員帰宅したのは翌12日の午前中だったという。 保護者との連絡が取れない時には、原則保護者に迎えに来てもらうことを事前に取り決めている。園長は「保育園は安全だとは言い切れない」。家族がいる職員たちをなるべく帰宅させてあげたいという気持ちもある。 記者にも0歳児の娘がいる。保育園にいるときに、地震が起きたら、真っ先に迎えに行くだろう。 だが、保育園での危機管理に詳しい愛知県立大学看護学部の清水宣明教授は、「迎えに行ったら駄目。これは日本中で徹底させるべきことです」と断言する。 「まずは保育園からの連絡を… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル