「ここにしかいない生き物がたくさんいる」 若者とふるさとの海共有

 「きょうのビッグな発見。中学生が持ってきてくれました」 ゴカイ研究40年の鹿児島大名誉教授、佐藤正典さん(67)は4月22日、自ら企画した「野外実習」の成功を実感した。 底生生物(ベントス)と呼ばれる貝やゴカイ、ヨコエビなどを観察するのが目的。海底や干潟の泥にすみ、関心を集めることは少ないが、他の動物のエサになって生態系の底辺を支える重要な生き物たちだ。 場所は長崎県諫早市高来町の深海(ふかのみ)川河口から6キロほど東。国営諫早湾干拓事業で諫早湾を閉じた潮受け堤防のすぐ外側で、広大だった干潟の一部が残る。 佐藤さんにとって、諫早湾で行う久々の若者向け観察会だった。参加者は県内の高校生や中学生と、解説役の高校教師や元教師ら約15人。干潟を歩き回り、様々な「獲物」を見つけてきた。 「ビッグな発見」とは、参加…この記事は有料記事です。残り970文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「被告はひとごと」「家族の思い届いた」高2刺殺、父が振り返る公判

 神戸地裁で23日に判決が言い渡された、神戸・高2刺殺事件。堤将太さん(当時16)を事件で失った父・敏さん(64)は、その日の公判が終わるたびに会見を開き、心境を吐露した。事件から12年8カ月。裁判にかけた思いを、会見の言葉から振り返る。 【1日目(6月7日)=被告(30)の罪状認否、検察側の冒頭陳述、被告の父親に対する証人尋問】 ――被告が法廷に入ってきて、どう思ったか。 「一切目を合わそうとしませんでしたからね。ただ出てきて、ひとごとのような印象を受けました」 ――(被告の父に)思うように質問はできたか。 「ちょっと父親の態度がかけ離れ過ぎている。やっぱり無責任さが出てるし、もう話せば話すほど(こちらに)力が入ったようなところはありました」 ――裁判所に来る前に将太さんに語りかけたことは。 「いや今日は一緒に来てるつもりでおりますんで」 ――被告を当時17歳の元少年として、法廷でも名前が出されずに裁かれていることをどう受け止めるか。 「30歳の被告を少年法を適用した裁判でいいのかな。更生を目的とした裁判でいいのかなっていう思いはあります」 ――被告は「被害者の氏名や年齢、どこで亡くなったかわからない」と。 「罪を犯した、悪いことをしたという認識、意識もないんかなと思いました」 ――2日目に被告への質問がある。どういう姿勢で、返事をしてほしいか。 「もう今日もう見ていて、答えは期待できないんじゃないかと。そういう印象を受けました」 ――それでも真摯(しんし)に向き合ってほしい? 「それはそうです。ちゃんと答えて欲しいですよ。全て包み隠さず、話してほしい」 【2日目(8日)=被告人質問。敏さんも質問に臨んだ】 ――1日目と違って、かなり敏さん自身が落ち着いてみえた。 「(被告の父の)振る舞いにちょっと腹を立てたとこあったんで、かなり熱くなってましたけど、今日は、できるだけ落ち着いていこう、と自分に言い聞かせて。今日こそ、こっちがもう感情的になったらあかんと思ってたんで、それは気をつけてやりました」 ――今日一番聞きたかったことは。 「やはり、なんでうちの子を殺した、っていう。だから一番最初にそう聞いた。答えへんかった」 ――将太さんへの謝罪のような言葉が示された。 「謝罪にも何にもなってない…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「淀城」関連の護岸か、京都の桂川で遺構出土 江戸初期には川幅拡張

 桂川の下流部が江戸時代初頭の大規模な治水工事によって、現在の姿に近い形になったことがわかった。京都市伏見区の桂川西岸で江戸~明治時代の護岸遺構などが出土したと、京都市埋蔵文化財研究所が23日発表した。文献資料がほとんどない桂川の治水事業を知る上で貴重な発見だという。 調査をした淀地域は宇治川・木津川・桂川が交わる合流点で、古くから水運を利用した交通や軍事の要として栄えてきた。調査した桂川西岸からは、江戸時代前期・後期、明治時代の護岸遺構や、水の流れの方向を変えたり、勢いを弱めたりするための「水制」が出土した。江戸時代初頭には、少なくとも約10メートル川幅を広げる工事をしているなど、治水工事の具体的な様相が明らかになった。 当時の護岸構築材には舟材が転用されており、川と共に生きてきた地域の特徴を物語る遺物も出土した。泥の堆積(たいせき)状況などからみて、桂川の東側の河岸は現在の河岸よりもさらに東側に位置していたこともわかった。現在の桂川の姿に近い形になったのは江戸時代前期だという。 研究所の柏田有香調査係長は、豊臣秀吉が宇治川を付け替えて太閤堤を設置した安土桃山時代の治水事業を発端にした淀川水系の河川整備の一環である可能性があると指摘する。「桂川については資料がこれまでほとんどなかったため、初めてその実態の一部が明らかになった」と話す。 さらに、調査地の近くにあった淀城との関連も注目される。江戸時代初頭の治水工事は、元和9(1623)年松平定綱が淀城を築城した時期に近いことが出土した土器の年代から判明している。 京都産業大の鈴木康久教授(…この記事は有料記事です。残り244文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

Blue Jays pitcher Yusei Kikuchi matches MLB career high with seventh win

Toronto – Toronto Blue Jays pitcher Yusei Kikuchi earned his seventh win of the season…

「宇宙飛行士を本気で出したい」 元JAXA勤務、和歌山の県立高へ

 民間小型ロケット発射場ができたことをきっかけに本州最南端にある和歌山県串本町の県立串本古座高校(生徒数228人)に来春、宇宙をテーマに理数科目や環境、ビジネスなどを広く学ぶコースができる。その担当教諭に、神奈川県出身で宇宙航空研究開発機構(JAXA)に勤めていた藤島徹さん(55)が採用された。「人生を自分で考えて切り開く意気込みを持った生徒に来てほしい」と胸を膨らませている。 藤島さんは、乗り物が好きな少年だった。車から始まり、新幹線、飛行機、そして最後に関心はロケットへ。「行き着くところまで行ってしまった」と笑う。大学浪人時代の1986年、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故が起きた。事故に衝撃を受け「安全安心な乗り物を設計したい」と航空宇宙分野への思いを強めた。 日大理工学部で航空宇宙工学を専攻した。卒業後は子どもへの宇宙教育をしている「日本宇宙少年団」やJAXAの業務を請け負う一般財団法人「日本宇宙フォーラム」(東京)で働いた。出向でJAXAに計9年間勤務した経験も持つ。国際宇宙ステーション(ISS)の科学実験の運営、鹿児島県の種子島宇宙センターでのロケット打ち上げ撮影の管理、JAXAと大学や企業を結ぶ共同研究事業の運営などを担当した。 仕事のかたわら「日本宇宙少年団」の横浜分団のリーダーを長く務め、子どもたちに宇宙を通じて科学に興味をもってもらう活動もしてきた。串本古座高校が宇宙教育の担当教諭を探していると聞き、今後のキャリアについて半年考えて決断した。妻や娘2人を神奈川県の自宅に残して串本町に赴任した。 串本町には民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」があり、今夏に1号機の打ち上げが予定されている。高校の授業では、発射場を運営するスペースワン(東京)や大学の専門家らにも教壇に立ってもらう予定だ。 生徒は全国から募集する。藤島さんは、生徒たちに宇宙への興味を持ってもらい、大学などへ橋渡ししたいと考えている。「宇宙って面白いなと思ってもらえる授業にしたい。ゆくゆくは和歌山に帰って、宇宙関連産業に就職する生徒が出てほしい。和歌山から宇宙飛行士を本気で出したい」(伊藤秀樹)     ◇〈串本古座高校の宇宙探究コース〉2024年度、普通科に新設する。「航空宇宙工学」、「宇宙観測と利活用」、「衛星データ分析と活用」、「宇宙と国際理解」など宇宙に関する科目を3年間で7~11単位学習する予定。国公立や私立大学の理工系学部を主な進学先に想定。宇宙に関連する観光や経済、国際関係など文系への進学にも対応する方針。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

坂口安吾が愛した酒「越の露」復活 新潟第一酒造、ラベルに当人の書

 生きよ堕(お)ちよ――。魂の叫びのごとく朗々と、歌人の福島泰樹さん(80)が坂口安吾(1906~55)の『堕落論』を吟じた。永畑雅人さん(66)の鍵盤演奏に乗せた「絶叫朗読」だ。 世界で活躍する両人の公演は、5月20日に新潟県十日町市の大棟山美術博物館で催された「坂口安吾まつり」の場。同館は、ひなびた風情がどこか懐かしい松之山温泉のそばにある。 「信越国境を越えてまもない山のどん底に、松之山温泉というものがある」(『逃げたい心』) 新潟市出身の無頼派作家はこの地が好きで、若い頃によく訪れた。同館は、安吾を可愛がった姉の嫁ぎ先で鎌倉時代から続くという名士、村山家の屋敷だった。家人らとの交流は安吾に安らぎを与え、『黒谷村』『不連続殺人事件』など松之山をモチーフにした作品が生み出された。 安吾が46歳の時の一粒種で…この記事は有料記事です。残り1110文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

鹿児島・口永良部島の噴火警戒レベルを2「火口周辺規制」に引き上げ

2023年6月26日 13時27分 福岡管区気象台は26日、鹿児島県・口永良部島の噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げた。山体を震源とする火山性地震が17日からの10日間で100回に達するなど、火山活動が高まっているという。 気象台は新岳火口から約1キロの範囲での噴石の飛散と、火口の西側約2キロでの火砕流に警戒するよう呼びかけている。 口永良部島では2015年に爆発的噴火が発生し、全島民が一時、島外に避難した。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

ジェンダーの話って自分に関係ないと思ってる? 相談4千件の気づき

 多様な性の平等を推進するために東京都国立市が設置した「くにたち男女平等参画ステーション・パラソル」が、開設から5年を迎えた。活動の中心は「生きかた相談」などの相談事業だ。今月は多様な性のあり方を祝福する「プライド月間」。ステーション長の木山直子さん(53)に話を聞いた。 JR国立駅から徒歩1分。中央線の高架下にある「国立駅前くにたち・こくぶんじ市民プラザ」の一角に、パラソルはある。2018年4月に施行された多様な性の平等を推進する条例に基づき、同年5月に開設された。コワーキングスペースなどを運営する株式会社シーズプレイス(立川市)が、市からの委託を受け、相談事業や、ジェンダーや人権に関する講座や動画配信などを行っている。 「ジェンダーの話って、自分に関係ないと思っている人は多い。でも、相談の根底にはいつも、それぞれが持つジェンダー規範が関係していると感じます」 ステーション長で、相談員でもある木山さんは、この5年の印象をそう話す。 パラソルでは、弁護士による法律相談や、「SOGI(性的指向・性自認)相談」などの専門相談のほか、事前予約なしでも対応可能な「生きかた相談」を行っている。これまで寄せられた相談は、のべ4千件以上。夫婦・親子関係、職場や近所での悩みなど、さまざまな「生きづらさ」に耳を傾けてきた。 生きかた相談は、ジェンダーにテーマを絞っていない。ただ、「相談を受けていると、性別にとらわれず、生きている人はいないと改めて感じる」。女、男、母、父、息子、娘――。「みんな何かしら、幼い頃からすり込まれた規範がある」という。■「自分で人生を決めてこれな…この記事は有料記事です。残り1917文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

夢に29歳の息子、でも顔がわからない 家族5人が背負い続ける現実

コールドケース 神戸・高2刺殺事件 6月7日、神戸地裁。 高校2年だった堤将太さん(16)をナイフで刺殺したとして、殺人罪に問われた被告の男(30)の公判が始まった。土日をはさんで4日間、集中審理が続いた。 裁判員裁判では、検察側と弁護側がどんな主張をするか、事前に整理される。 今回の争点は二つ。 殺意はあったのかどうか。そして、刑事責任能力を問える精神状態だったのかどうか、だ。 「傷つけようとはしたが、ナイフで刺すと死んでしまうかもしれないとか、痛いとかは全く分からなかった」 被告は法廷でそう述べ、殺意を否認した。当時は幻聴や妄想があり、事件を起こしたのはそのせいだ、と主張した。    ◇ 被害者参加制度を使って公判に参加した将太さんの父・敏さん(64)は、被告に直接質問する機会を与えられた。 「将太を刺したとき、あなたはどんな気持ちでしたか」 「気持ちは、何もないです」 「将太は刺されながら『痛い、痛い』と言った。それを聞いて何を思いましたか」 「何も、思いませんでした」 「(逮捕するために)自宅に警察が来た時、どう思いましたか」 「何も感じなかったです」 「警察が来る理由に覚えがなかったから?」 「そうです」「警察から(逮捕容疑を)説明されて、事件のことを少しずつ思い出しました」 「将太がどれだけ痛かったか、つらかったか、苦しかったか分かりますか」 「分からないです」。同じ経験をしていないから、と付け加えた。 中央の証言台に座り、正面を向いたままの被告。その被告を、横の検察側の席から険しい表情で見つめる敏さん。2人の視線は交わらない。 敏さんは被告にさらに問う。 「今ここにいる私たちを見て、どう思いますか」 「自分が生きていて申し訳あ…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

痴漢抑止バッジコンテスト 原動力は被害を先送りした自分への悔恨

 直径57ミリの缶バッジが社会を変える。 一般社団法人「痴漢抑止活動センター」(事務局・大阪)の代表松永弥生さん(44)はそんな思いで突っ走ってきた。 2015年夏。幼なじみの投稿をSNSで見た。毎日痴漢に苦しんでいた高校生の娘が「痴漢は犯罪」と書いた手作りのカードをかばんにつけて電車に乗ったら、痴漢に遭わなくなったと書いてあった。 「彼女(娘さん)をひとりにしておきたくない」 その思いに駆られ、すぐに缶バッジの制作を幼なじみに提案。デザインコンテストとクラウドファンディングを合わせてやることにした。 記者会見をしたらネット記事になった。すると、コメント欄には「迷惑だ」「こんなのつけている女は迷惑」「冤罪(えんざい)が増える」など否定的なコメントが並んだ。ただ、中には「バッジでは冤罪は生まれない」と反論してくれる人もいて、うれしかった。 痴漢抑止活動センター(事務局・大阪)は毎年、痴漢抑止バッジデザインコンテスを毎年行っています。今年は9回目です。募集は8月1日からです。記事の後半では、センターの代表を務める松永弥生さんがどんな思いでコンテストを始めたか、その思いを聞いています。 当初は、デザインを募集して…この記事は有料記事です。残り1926文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル