地震で見え方が変わった故郷 第1志望に合格した中3が心に決めた夢

 見渡す限り、山ばかり。新商品が発売されても、売っている店が近くにない。退屈な毎日……。 石川県珠洲市の緑丘中学校3年の山元浩花さん(15)は将来の夢に向けて受験勉強をしていたが、これまで故郷で働きたいと思ったことはなかった。 でも、地震が起きて考えが一変した。第1志望の高校に合格し、12日、卒業式を迎える。 元日の夕。山元さんが自宅で社会科の参考書を開いていると、激しい揺れに襲われた。勉強机の下に潜り、悲鳴を上げながら収まるのを待った。 自宅は近くの港から2キロほど。テレビで津波警報が出たので、近所の人の車で急いで内陸に逃げた。初詣に出かけていた父の車と合流して車中泊し、翌日自宅に戻った。 倒壊を免れた自宅で、物が散乱した部屋を片付けていると、すぐに時間が過ぎる。「いまごろみんな机に向かってるのかな」。焦ってきた。集団避難を選ばなかったわけ 勉強は1月5日から再開。停…この記事は有料記事です。残り1063文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません能登半島地震1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

受験生の聖地「落ちない石」 壊した都会の大学生に住民執念の罰金刑

 巨石が手で押すとゴトゴトと揺れ動く。その様子から、「崖っぷちから落ちそうなのに、落ちない」と評判になり、受験生らが多く訪れていた高知市の「ゴトゴト石」。 そんな石を動かなくしたとして、関東の大学生6人が器物損壊罪で略式起訴され、高知簡裁から罰金刑を命じられた。 長年にわたり石を大切にしてきた住民たちの「怒り」が、刑事処分につながった。 高知市北部の土佐山地区(旧土佐山村、2005年編入)の山中にゴトゴト石はある。 球状で直径約1・5メートル、重さは推定6トン。 絶妙なバランスで崖の上にあり、人が押せば揺れるのに、起き上がりこぼしのように戻る。 「不思議な石」「受験生の聖地」として新聞やテレビで全国に紹介され、人口約880人の同地区の観光名所になっていた。 しかし、2022年11月27日、石が90度ほど水平方向に回転し、動かなくなっているのが見つかった。 高知地検によると、大学生6人は11月26~27日、石の底にノミなどの工具を突き立てたり、丸太を挟み込んだりして石を固定させて使用不能にした。 関係者によると、大学生は男5人と女1人で、ゴトゴト石を知り、「俺たちで落としてやろう」と26日朝にレンタカーで東京を出発した。 26日夜に高知へ着き、石を押してみたが、揺れるばかりで落ちない。大学生は「ゴトゴト石」を落とすことに執着しました。「地域の宝」をけがされた地元住民たちは怒り、行動を起こしました。 いったん愛媛県内の商業施設…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

恐怖を乗り越えた先に ブラインドランナー井内さん、パリを目指して

 生まれつき目が不自由なブラインドランナーの井内(いのうち)菜津美さん(34)=京都府宇治市=は、8月開幕のパリ・パラリンピック出場を目標に据える。駅のホームから転落するという恐怖の体験を乗り越え、自身初のパラでメダルを狙う。 井内さんは中学・高校時代は陸上部で、伴走者と中長距離を走った。2019年8月から、みずほフィナンシャルグループに所属。フルマラソンの日本記録(3時間12分55秒)、5千メートルのアジア記録(20分28秒06)、1500メートルの日本記録(5分30秒41)などを保持する。 思わぬことが起きたのは昨年11月5日。一人で白杖(はくじょう)をついて練習に向かう途中、電車を乗り換えるために降りた京阪本線七条駅のホームから転落した。目が見えないなか、電車の音が迫る。「みんなとさよならなんだ」と覚悟した。「あの経験より怖いことはない」 線路と線路の間で体を縮めて…この記事は有料記事です。残り864文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

能登半島地震、寺社の復興どうすれば? 信者に頼れず、行政支援なし

 能登半島地震では、多くの寺社も被害を受けた。高齢化が進む檀家(だんか)や氏子も被災し、再建に向けた寄付を頼みにくい。政教分離から行政の支援も期待できない。地域コミュニティーの中心であり、文化の継承に欠かせない寺社の再建は進むのか。 石川県輪島市で、大火に見舞われた「朝市」に近い長楽寺。本堂や庫裏が全壊し、2月下旬になっても撤去作業はほとんど進んでいない。 住職の上野共之(ともゆき)さん(69)は、崩れ落ちた本堂から仏具などを探し出してきたが、本尊は見つかっていない。 寺院は地震保険には加入していなかった。本堂や庫裏が広いため掛け金が高く、入れなかったという。再建には門徒(檀家)の協力が頼みだが、「自分の生活がどうなるかもわからない門徒さんに、寄付を頼むことは、しばらくは難しい」と話す。真宗王国、地震の前から維持難しく 石川県は、浄土真宗の中興の祖、蓮如(れんにょ)が室町時代に北陸で布教したことから「真宗王国」と呼ばれる。江戸時代には北前船の交易が盛んになり、経済的に豊かになったことで寺の規模が大きくなった。なかでも京都の東本願寺を本山とする真宗大谷派の寺が多い。 同派によると、輪島市や珠洲市など能登教区に353寺あるが、今回の地震で約9割の約320寺に被害があり、うち本堂や庫裏の大規模被害は約70寺に上る。 地域では過疎化が進み、門徒も減少。耐震化されていない本堂も多かった。そこへの地震だ。市仏教会の会長でもある上野さんは「もっと田舎のほうでは、廃寺や合併する寺も出てくるかもしれない」と話す。 寺だけでなく、神社の被害も大きい。石川県神社庁によると、輪島市、珠洲市、能登町、穴水町の奥能登には440社あり、大きな被害が出たという。 能登半島の先端にある須須(すず)神社(珠洲市)は、昨年5月の地震で壊れた建物もあり、復興を進めている最中だった。 元日の地震で社殿の二つが全壊。鳥居は壊れ、こま犬や灯籠(とうろう)も倒れた。 権禰宜(ごんねぎ)の多田千鶴さん(44)は、津波で甚大な被害が出た氏子らが身を寄せる避難所に物資を運ぶ。3月1日からはクラウドファンディングを始め、再建費用や地域のまちづくりに向けた資金を募っている。「地域の人とともに続いてきた神社。地域の文化を守っていくためにも、心のよりどころである神社仏閣が続くように支援してほしい」と話す。過去の震災では地域コミュニティー施設の再建支援という形で公的な補助が出ました。記事の後半で、支援策を探ります。 内閣府によると、国の被災者…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

能登半島地震で研究者が指摘 残るM7級、3メートルの津波のおそれ

 元日の能登半島地震から2カ月あまり、余震の数は減っていますが、まだ油断はできないと考える専門家もいます。東京大地震研究所の佐竹健治教授に聞きました。 ――マグニチュード(M)7・6の能登半島地震の発生直後は、テレビに出演し「後から来る津波が大きくなる可能性がある、日本海の津波は長く続く」などと解説しながら、避難を呼びかけました。 東日本大震災では、避難した後、家に物を取りに帰って、津波に襲われ亡くなった方がいたので、そういうことがないように呼びかけました。日本海で発生する津波は長引くことはわかっていたので。 ――その後、能登半島周辺で地震が起こる可能性が残っていると指摘しました。 地震後のシミュレーションで、能登半島北方沖の「NT4、5、6、8」と名付けた活断層が動いたとすると、津波を再現できました。その東には「NT2、3」という断層がありますが、こちらはほとんど動いていないという結果になりました。 地震が発生していない場所は、今後、発生する可能性があるということです。それははっきりと言えるので、伝えなければいけないと思い発表しました。NT2、3で地震が起これば、M7級になり、佐渡島を含む新潟県沿岸で3メートル程度の津波が予測されます。 ――地震前に海底活断層が調…この記事は有料記事です。残り1260文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません能登半島地震1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

東芝不正会計の株代訴訟で株主一転敗訴 買収で「原告の資格失った」

金子和史2024年3月6日 20時39分 東芝の不正会計問題で、株主が旧経営陣に、同社への損害賠償を求めた株主代表訴訟の控訴審判決が6日、東京高裁(中村也寸志裁判長)であった。東芝は昨年の一審判決後に日本産業パートナーズ(JIP)に買収され、東京証券取引所への上場を廃止。高裁は、この過程で保有株が1未満になった原告らが「原告適格」を失ったと判断。請求を一部認めた一審判決を取り消し、株主らの訴えを却下した。 2015年に発覚した不正会計問題で、東芝は旧経営陣に責任があるとして佐々木則夫元社長ら5人を提訴。個人株主が他の歴代幹部10人に株主代表訴訟を起こした。 東京地裁は昨年3月、東芝が訴えた3人と株主が訴えた2人の計5人の賠償責任を認め、計約3億円の支払いを命じた。 その後、東芝は国内投資ファンドのJIPに買収された。昨年11月には、JIPによる株式公開買い付けに応じなかった株主の保有株を強制的に買い取るのに必要な「株式併合」の実施を決定。翌月には9300万あった株式が1株に併合され、原告の持ち株も1未満となった。(金子和史)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

神岡鉱山内に産廃放置、国「不適切」指摘 撤去に1~2年

有料記事嶋田圭一郎 保坂知晃2024年3月7日 5時00分 岐阜県飛驒市の神岡鉱山内に鉄くずなどの産業廃棄物が放置されていたことが同鉱山を経営する神岡鉱業(同市)への取材でわかった。鉱害防止の観点から不適切だと昨年9月に国から指摘を受け、現場にあった有価物も含めて撤去を進めている。放置が始まった時期や総量は不明だが、作業を終えるのは2025年3月ごろになる見通しだという。 同鉱山は国内初の公害病「イタイイタイ病」の発生源で、同社は「環境保全を経営上の最重要課題」とホームページで掲げる。同社は取材に「現場は地下水が通っておらず、周辺環境への影響はない」としつつ、「環境全体に意識を高くもって取り組んでいたが、管理が行き届いていなかった。反省している」と説明した。 同社によると、昨年12月時点で現場からは廃車や廃重機、鉄くず、ケーブル、廃プラスチック、蛍光灯などが見つかった。要不要の分別を進めており、有価物と産廃が混在していた。ただ、有害物はなかったという。 現場は1990年以降に大規…この記事は有料記事です。残り882文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

なぜそこに住むの? 被災者への問いと「復興」が忘れている人の営み

福島季評 「被災者になる」というのは、難儀だ。 いちいち自分の状況を説明するのが、難儀だ。説明した後に同情を向けられるのが、難儀だ。とはいっても、無関心だったり、見当違いの反応を返されたりするのは、もっと難儀だ。 日々の起居に支援をしてもらわなくてはならないのが、難儀だ。感謝はしている。それでも、何度となく「ありがとうございます」と言い続けるうちに、心が少しずつ擦り減っていく気がする。「被災者」のリアクションを期待されるのが、難儀だ。でも、「被災者」であることを伝えなければ、もう大丈夫だと思われてしまうかもしれない。だから、「被災者」としての模範解答を返す。「応援ありがとうございます。大変助けられています。がんばりますので、今後もどうぞお力添えをお願いいたします」 息をつく間もない慌ただしい日々のなかで、ぽっかりとできた空き時間に、われ知らず大きなため息をつく。いままでどおりの穏やかな生活を送りたいだけなのに、「普通に暮らす」、それがなんだってこんなに果てしなく難しくなってしまったんだろう。 誰もが望んで「被災者」になるわけではない。それでも、ひとたび「被災者」になると、それまでとはまったく違う日常が続くことになる。やがて、すぐに「復興」が始まる。復興が進めば、きっと元のとおりとはいかなくとも、少しは落ち着いた暮らしが戻ってくるだろう。 けれど、しばしば「復興」は…この記事は有料記事です。残り1584文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません能登半島地震1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

能登の被災地で窃盗繰り返した疑い、3人逮捕 故人の形見も被害に

 能登半島地震の被災地で空き巣を繰り返したとして、愛知県警は、16~19歳の3人を住居侵入と窃盗の疑いで逮捕したと6日発表した。被害品にはカフスや指輪などがあり、故人の形見も含まれていたという。被災地を狙った組織的な窃盗グループが摘発されるのは初めてとみられる。 逮捕されたのは、名古屋市昭和区の無職少年(19)、ブラジル国籍で愛知県岩倉市の派遣社員少年(18)、中国籍で住居不定の無職少女(16)。3人は1月5日、石川県輪島市内の住宅2軒に侵入し、ブランデーや指輪などの金品(計約6万5千円)を盗んだ疑いがある。認否は明らかにされていない。県警は3人が被災地の混乱に乗じて窃盗を重ねたとみて調べる。 被害住宅2軒は隣接しており、いずれも住人は避難していて留守だった。同5日に輪島市内で「不審車を見つけた」と付近住民から交番に届け出があり、石川県警の警察官が少年らに職務質問。車内からバールが見つかるなどし、今回の事件が発覚した。 被災地では住宅などを狙った窃盗事件が相次いでおり、石川県内では震災後から3月5日までに避難所での置き引きなど51件の窃盗事件が発生。警察が街頭に防犯カメラを増設するなどして警戒を強めている。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません能登半島地震1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

父は送迎、母は死体損壊を容認か 札幌遺体切断事件で親子3人を起訴

有料記事石垣明真 新谷千布美2024年3月6日 21時05分 札幌市の繁華街・すすきののホテルで昨年7月、北海道内の会社員男性(当時62)を殺害し、頭部を持ち去ったなどとして札幌市の親子3人が殺人容疑などで逮捕された事件で、札幌地検は6日、無職田村瑠奈容疑者(30)を殺人、死体損壊、死体領得、死体遺棄の罪で起訴し、発表した。また父親の修容疑者(60)をそれぞれの幇助(ほうじょ)の罪、母親の浩子容疑者(61)を死体損壊幇助と死体遺棄幇助の罪で同日、起訴した。3人の認否は明らかにしていない。 北海道警は親子3人を殺人や死体損壊の疑いで逮捕し、送検していたが、同地検は父母の関与について、瑠奈容疑者の手助けにとどまると判断したとみられる。浩子容疑者の殺人罪については不起訴処分とした。 起訴状などによると、瑠奈容疑者は昨年7月1日深夜、札幌市中央区のホテルの一室で男性を刃物で突き刺し、出血性ショックで死亡させて殺害。その後、男性の首をのこぎりなどで切断し、頭部を自宅まで運んで損壊し、遺棄したとされる。 修容疑者は、瑠奈容疑者の男性を殺害する計画を知りながらのこぎりなどを一緒に購入。現場から自宅まで瑠奈容疑者を車で送迎したとされる。 浩子容疑者は、自宅内に頭部を隠すことを容認し、その後同月7日夜に瑠奈容疑者が頭部を損壊する際にビデオ撮影を求められ、修容疑者に撮影させたとされる。 地検は、昨年8月末から今年…この記事は有料記事です。残り287文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル