会員記事 朝日新聞デジタル編集長・伊藤大地2021年8月1日 12時00分 メディア空間考 伊藤大地(朝日新聞デジタル編集長) 大坂なおみ選手が、五輪の聖火台に火をともした。政府や組織委をめぐるゴタゴタが、これでチャラになったわけではない。しかし、画期的な一瞬であったことは、間違いない。それは、トップ選手だからでも、女性だからでも、多様なバックグラウンドを持つからでもない。メンタルの不調を訴え、一時、競技から離れたアスリートが代表したことに、意義があった、と私は思う。 大坂選手は5月、全仏オープンを棄権。自らのツイッターでメンタルの不調と、会見の対応が心理的負担となっていることを訴え、コートから離れていた。東京五輪はその復帰戦だった。 プロスポーツにおいて、メディア対応は選手の仕事のうち。その点は大坂選手を含め、多くの選手が認めている。しかし大坂選手が提起した問題の論点はそこではない。トップアスリートであっても、アスリートとして以前に、人間として尊重してほしい、ということだった。 私たちはアスリートを讃(たた)えていたつもりだったが、それが苦しみの原因となっていたとしたら。オリンピアンともなれば、生まれつきの才能に恵まれ、壮絶なトレーニングに耐え、強靱(きょうじん)なメンタルを備えた、宇宙人のように扱われることも多い。観戦する多くの人々も、企業も、すべてを競技のために犠牲にする姿を、前提のように共有し、「アスリート物語」として消費する。五輪やサッカーW杯のように、4年に1度、国の代表として戦う国際舞台ならなおのこと。私たちメディアはアスリートの冠辞に「超人」やら「ストイック」やら、そんな言葉をどれだけ使ってきたことか。 「大坂選手が上げた声は、世界を変えている」 確信した出来事があった。 米国体操女子のスター、シモ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:767文字/全文:1507文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
被爆した「一夫」は私だ 手帳求める100歳のカズオ氏
76年前の広島で原爆投下の瞬間を見た100歳の男性が7月、東京都に被爆者健康手帳の取得を申請した。広島市の戦災誌にも本人の被爆証言があるが、名前の誤記などを理由に一度は申請が却下されていた。がんを患う中、新たな証拠に基づいた今回の再申請は受理され、都は手帳交付に向けた調査を始めた。 男性は東京都調布市の岩下運雄(かずお)さん。東京帝大在学時に学徒出陣し、陸軍船舶司令部(暁部隊)の見習士官になった。原爆が投下された1945年8月6日は、爆心地から約4キロ南の宇品港で、輸送潜航艇の出航準備をしていた。突然頭上がピカッと光り、熱くなった。 《太陽のような火の玉を見た。瞬間その火の玉の下に火の玉と地上を結んだように火柱が立った》 《出航し、直ちに潜航。呉寄りの沖で浮上して見たら広島上空茸雲(きのこぐも)》 その証言は、広島市が71年に発行した「広島原爆戦災誌」に「岩下一夫氏談」として収録された。このとき、名前が誤記された経緯は判明していない。 潜航艇は原爆の4日後に広島… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:993文字/全文:1436文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
物書きなれず、実家に戻った子 会話できず途方に暮れる
60代女性です。30代後半の息子のことで相談します。 高校で不登校となり、大検を受けて東京の大学に入りました。大学は文学系のサークルにも入り楽しくやっていたようですが、物書きになるとの希望を持って就活はほとんどせず、アルバイトなどで10年以上過ごしました。書く仕事はものにはならず、生活も厳しくなったのか、実家に戻ってきました。 今は臨時採用の公務員の仕事を得て毎晩遅く帰ってきます。いつ仕事がなくなるかは分からず、本人も続けたい仕事ではないと言っています。深夜はネットゲームなど趣味に時間を費やし、最近は家族との会話もほとんどありません。食事の時間も入浴の時間もずらし、休日はどこかに出かけていき、遅く帰ってきます。部屋で炭酸飲料を飲みながらジャンクフードを食べているようで、どんどん太っています。不健康な暮らしをわざとしているようにも思えます。 私たち夫婦は元教員で、子どもの暮らしに寄り添っていたとは言えません。そのため、親に弱音を吐くことはあまりありませんでした。今も弱みを見せたくないようで、生活全般に干渉されることを嫌います。 私は朝起こすこと、食事を作ること、当たり障りのない会話くらいしかできません。もともと知識が豊富でよくしゃべる息子だったのですが……。今の状態に途方に暮れています。 回答者 政治学者・姜尚中さん 「上を見ればキリがない。下を見れば後がない」。進退窮まった大人たちが天を仰ぐように嘆いていた時によく耳にした言葉です。 あなたのお子さん、と言って… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:915文字/全文:1576文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
未成年者の大麻事件、大阪で急増 過去最悪のペースに
茶井祐輝2021年8月1日 9時46分 大阪府警は、今年上半期の大麻取締法違反容疑で府警が逮捕、書類送検した未成年者が75人だったと明らかにした。1990年以降で最多だった昨年同期の約1・4倍に上る。府警はオンラインで薬物乱用防止教室を開くなど対策をしている。 少年課によると、大麻取締法違反容疑で逮捕、書類送検された未成年者は2014年以降、増加傾向で昨年は114人。今年上半期には全年代の34%を占めた。 府警は新型コロナの感染拡大を受けて、主にオンラインで薬物についての教室を開催している。7月26日には、大阪市中央区の追手門学院大手前中・高校で計29クラス(約1千人)に少年課員がオンラインで大麻の健康被害などについて語った。 同課の浦広一郎警部は「大麻の危険性を改めて知ってもらいたかった」と話した。(茶井祐輝) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
川辺川ダム巡り市民ら抗議 町長に「自分の考えない?」
村上伸一2021年8月1日 9時55分 昨年7月の記録的豪雨で被災した熊本県の球磨川水系流域の12市町村長でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」が、川辺川への流水型ダムの早期完成を求める要望書を国や県に提出したことに対し、建設に反対する流域の市民団体が30日、協議会長の森本完一・錦町長に抗議書を手渡した。 団体は「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(中島康代表)と「美しい球磨川を守る市民の会」(出水晃代表)。 抗議書は、流水型ダムの早期完成の要望自体が、流域住民の意思に基づかない12市町村長の個人的な見解だと指摘。協議会が要望書の中で「流水型ダムが従来のダムに比べて環境への負荷は軽減される」と断言していることを、「専門家でもないのになぜこのようなことを言えるのか」などと強く批判している。 抗議書を受け取った森本町長は「(協議)会員に伝えておく」と答えたが、約10人の市民らが「自分の考えはないのか」などと反発し、10分ほど言い合いとなった。(村上伸一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
秋田竿燈も青森ねぶたも中止 夏祭りの土産物の活路は
石平道典2021年8月1日 10時00分 新型コロナウイルスの影響で、夏の風物詩の行事が相次いで中止されている。そんな中、東北各地の夏祭りで売られるはずだった工芸品や土産物を通信販売する特設サイトが、8月2日から1カ月限定でオープンする。自宅にいながら東北の夏を感じてほしいという思いが込められている。 コロナ禍で、東北三大祭りとして知られる「秋田竿燈(かんとう)まつり」と「青森ねぶた祭」は、昨年に続いて中止に。「仙台七夕まつり」は8月6~8日に実施予定だが、宮城県外からの来場自粛を呼びかけている。 「東北の工芸品や土産物は、イベントや観光によって客の手に渡るものがほとんど。夏祭りの中止で行き渡らなくなった品々を届けたい」。特設サイトを運営する、青森県八戸市の文具・事務機器販売会社「金入(かねいり)」の企画担当、岩井巽(たつみ)さん(28)は話す。 同社は東北6県の伝統工芸品や地場食品の販売も手がけており、コロナで販路を失うなどした各県の品々を集めた通販サイト「#tohokuru/トホクル」(https://tohokuru.jp/)を昨年4月に立ち上げた。サイト名は「あなたのおうちに東北が来る」という意味を込めた。作り手が出品希望を出し、全国の客から予約を受けて商品を発送する仕組みで、延べ1500人以上が利用したという。 今回、トホクル内に特設サイト「東北の祭り、東北の夏。2021」(https://j.mp/3h2Ak4G)をオープン。上ボシ武内製飴所(青森市)の玉ようかん、東北工芸製作所(仙台市)の風鈴、京屋染物店(岩手県一関市)の染め物など、100種類以上の商品を掲載する。9月1日まで開設し、商品は9月中旬ごろに発送する予定だ。 岩井さんは「いまは東北に来られなくても、自宅で東北の夏を感じてもらえるよう全国に品々を届け、作り手の皆さんの励みにもなれば」と話している。(石平道典) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪「おもてなし」中止 津田塾大生の起死回生はIT
コロナ禍で、東京五輪は国内で予定されていた多くの事前合宿が中止となり、海外選手たちとの交流が制限された。海外からの観戦客の受け入れも断念しており、様々な「おもてなしイベント」が中止に追い込まれた。 津田塾大学の総合政策学部がある千駄ケ谷キャンパス(東京都渋谷区)は、国立競技場や東京体育館から「最も近い大学キャンパス」を売りに、学生約190人が交流イベント「梅五輪プロジェクト」https://umegorin.com/を企画してきた。当初は訪日観光客らを招いて、日本文化を発信するイベントを五輪期間中に3日間ほど開催する予定だった。 だが、コロナ禍で一変した… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:584文字/全文:868文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「その涙むかつく」と生徒に発言 中学の教員ら懲戒処分
堀越理菜2021年8月1日 7時24分 熊本市は30日、熊本市立学校の教諭3人を戒告の懲戒処分にし、発表した。 市教育委員会によると、小学校の男性教諭(40)は3月、児童の胸ぐらをつかんで一方的に指導。その際に児童は体勢を崩して遊具に左足をぶつけたという。校長も厳重注意。▽中学校の男性教諭(33)は昨年、担当する部活動の生徒たちを指導した際「使えない」など生徒のプライドを傷つける言葉を使い、精神的苦痛を与えたという。校長も厳重注意。▽中学校の女性教諭(41)は4月、担任する生徒数人を叱責(しっせき)した際、涙を浮かべた生徒に「その涙むかつく」と発言し、精神的苦痛を与えたという。 いずれも6月に行われた市体罰等審議会で体罰や暴言に認定されていた。(堀越理菜) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
介護家族に衝撃 8月から負担急増「なぜ、ここまで…」
ここまで負担が増えるとは――。特別養護老人ホームなどで暮らす高齢者のうち、一部の人の利用料が、8月から大幅に上がる。制度見直しによって、介護保険施設の食費や部屋代への補助が減額・縮小されるためだ。在宅介護でショートステイ(短期入所)を使う人にも影響が及び、介護家族に衝撃が広がっている。 「月2万2千円近い値上げは大きい。制度改正のたびに負担が増え、憤りを感じています」 金沢市の特別養護老人ホーム「やすらぎホーム」に母親(97)が入居しているという男性(73)は話す。母が受け取る亡き父の遺族年金が年120万円を超すため、8月から食費への補助が減額される見込みだ。2人部屋で月額6万円前後だった利用料金(介護保険の1割負担と食費・部屋代、雑費)は、8万円以上に増える。 同じ法人が運営する同市の「なんぶやすらぎホーム」に母親(87)が入居する男性(61)も、「なぜここまで一気に負担が増えるのか。納得できない」とショックを隠さない。 母の預貯金が基準の500万円を上回るため、8月以降は補助が受けられなくなる見通しだ。個室で月額約10万円だった利用料金(介護保険の1割負担や食費・部屋代、雑費)は、月4万数千円の値上げになる計算だ。母の年金収入は年120万円を超えているため、預貯金が減って再び補助対象になっても、食費は従来より2万2千円近く増えることになる。 なぜ、これほどの値上げにな… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:2267文字/全文:2868文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「夢に見たのに」 五輪迎えた国旗メーカーの嘆き
コロナ禍の五輪になったことを悲しむのは選手だけではない。都内にある国旗メーカーの老舗もその一つ。無人の客席と在庫の山に心を痛める一方で、旗屋として揺るがない気持ちもあるという。(藤野隆晃) 15人が働く群馬県沼田市のある工場では1年半前まで、国旗を作るミシンの音が鳴り続けていた。 国旗メーカー「東京製旗」。東京オリンピック(五輪)での需要をあてこんで、各国の国旗や手旗など約30万枚を作った。例年なら3年分にあたる。 しかし水の泡になった。 五輪は無観客開催となった。行き場を失った旗は段ボールにしまわれたまま、工場倉庫や都内の営業所に2メートルほどの高さに積み上げられている。4代目社長の小林達夫さん(64)は「スタジアムでうちの旗が振られている。そんな場面を夢に見ていた。すごく残念」と悲しむ。 1937年に創業した当時の東京製旗=同社提供 創業は1937年。40年の「紀元2600年」を祝う行事や軍部の伸長などで、日の丸需要が高まっていた。ただ、45年の東京大空襲で工場や自宅は全焼。日の丸掲揚を許可制にする連合国軍総司令部(GHQ)の制限が49年に解除されると、事業を再開した。51年のサンフランシスコ講和条約、59年の皇太子ご成婚などイベントが続いた。 1950年代の東京製旗。天日干しで日の丸を乾燥させた=同社提供 中でも大きかったのが、64… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:689文字/全文:1230文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル