コロナ禍によって国内の自殺者は約3200人増えたとする試算を、東京大学の仲田泰祐准教授(経済学)らのグループがまとめ、公表した。計算上は今後も増える見通し。 警察庁のまとめによると、新型コロナウイルス感染症が広がった昨年3月~今年5月、国内で自殺した人は約2万7千人。日本では失業率と自殺の数に強い相関が知られており、グループは、コロナ禍以前に複数の民間機関が公表していた失業率の予測をもとに自殺者数を推計し、実際の自殺者数との差を計算したところ、約3200人になったという。 また、最新の失業率予測をもとに今後の自殺者数を試算すると、今年6月から2024年末までに、コロナ禍以前の予測と比べて2100人増える結果になった。失業率以外のさまざまな要因が自殺に関係している可能性を考えると、増加分が5千人になることもありうるという。コロナ感染による死亡はこれまで約1万5千人が確認されている。 リポートはウェブで閲覧できる(https://covid19outputjapan.github.io/JP/files/FujiiNakata_Suicides_Slides_20210720.pdf)。(嘉幡久敬) 不安や悩みの主な相談窓口 ◆よりそいホットライン (0120・279・338) (岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226) ◆こころの健康相談統一ダイヤル (0570・064・556) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
原発地元「はしご外された」 エネルギー基本計画原案
関西電力美浜原発。40年超運転を実施した3号機(手前)と廃炉になった1号機、2号機(奥)。地元では原発の建て替え(リプレース)を求めている=2021年6月20日、福井県美浜町、朝日放送テレビヘリから、矢木隆晴撮影 エネルギー基本計画の改定原案が21日、公表された。原発の新増設、建て替え(リプレース)は盛り込まれなかった。運転開始から40年を超える老朽原発の再稼働に協力した地元関係者はリプレースを望んでおり、「はしごを外された」と国への恨み節も漏れた。 40年超運転に同意したのに 「新増設、リプレース(建て替え)のことは明確にすべきだと申し上げたが、書かれてない。確認はこれからしていこうと思う」。福井県の杉本達治知事は原案について、21日の記者会見でこう述べた。 福井では6月、運転開始から40年を超える老朽原発の美浜3号機(美浜町)が再稼働した。東京電力福島第一原発事故後、原発の運転を原則40年としたルールのもとで初めてだった。 再稼働に同意する前日、杉本知事は梶山弘志経済産業相と面談。梶山氏は基本計画にも触れ、「新増設、リプレース含め議論している。原子力政策の将来像や、その道筋のさらなる明確化に向けて覚悟を持って取り組む」と伝えた。 同意当日、杉本知事は「意気込みを示していただいた」と発言。「志という意味で、国が原発をどうしていくのか明言していただくこと」を重視したと話していた。 記者会見で話す福井県の杉本達治知事=2021年7月21日午前11時1分、福井市、堀川敬部撮影 原発以外の産業に乏しい立地地域を抱える福井県の関係者らは今回、新増設やリプレースが明記され、原発の積極的な活用が促されるとの期待を抱いていた。 7月上旬に新増設の記載見送りの方針が報じられた直後に杉本知事は上京。梶山氏に「力強い言葉を頂いて同意させていただいた。後退はあってはいけない」と伝えてもいた。 21日の会見で「かなりお約束いただいた内容が取り込まれている」と原案を評価した杉本知事。だが結局、新増設などの文言はなかった。 ある県議は「はしごを外された。40年超の原発再稼働の際の知事の判断について、正当性まで疑義が生じる事態だ」と憤った。 美浜町の山口治太郎前町長(… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
バブル方式に穴?インドネシア代表の練習相手、寮に帰宅
長妻昭明2021年7月22日 9時10分 東京五輪に出場するバドミントンのインドネシア代表が熊本市で事前キャンプをした際、県内の実業団選手が練習相手をしていた。練習後は実業団の寮に帰り、不要不急の外出を控えているという。 県への取材でわかった。海外の代表選手や関係者は新型コロナウイルス感染対策のため、外部との接触を避ける「バブル方式」を取ることが国の手引きで求められている。 県観光企画課によると、練習はインドネシアバドミントン協会の依頼により県が調整した。担当者は「実業団選手はワクチンを2回打ち、毎日PCR検査を受けてもらった上で、外食はしないよう指導していた。問題はなかった」と説明している。 インドネシア代表は9日~19日に熊本市に滞在。宿泊先のフロアは一般客から隔離され、外出は練習会場のみに制限するなど、外部との接触を遮断していた。 実業団選手4人は13日~18日に練習に参加し、寮に帰った。練習には県外の実業団選手5人も参加しており、代表チームと同じホテルに泊まった。県内外の実業団選手は18日の練習終了から2週間、不要不急の外出を控えているという。 アルゼンチンの柔道女子チームが事前キャンプをした茨城県境町では、練習相手の実業団選手はチームと同じホテルに宿泊し、外部と接触しない対策を取っている。(長妻昭明) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
取り締まり用無線が免許切れ その間検挙の反則金返還へ
高橋豪2021年7月22日 9時35分 山口県警の速度取り締まりで使われる28の無線局で、無線免許の有効期間が過ぎたまま再申請がなされていなかった。県警は期限切れ中に検挙した162件の違反の告知を取り消し、計約200万円の反則金を還付する。中国四国管区警察局と県警が16日発表した。 県警交通指導課によると、還付の対象となるのは6月1~7日に県内45カ所で61回行われた定置式レーダーによる取り締まり。県警は対象者に個別に連絡を取り、手続きを進める。 速度違反の現認と、停車を促す警察官同士の通話に使う無線局の免許が5月末で切れたのに申請漏れがあった。総務省中国総合通信局は7月16日、電波法に違反するとして免許を管理する管区警察局に書面で指導した。管区警察局は6月8日に県警に報告し、同日中に申請と承認を終えたという。(高橋豪) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「米国の声」実は一部の声 その外圧どこから来たの?
有料会員記事 聞き手=稲垣直人 聞き手=編集委員・塩倉裕2021年7月22日 5時00分 コロナ禍の東京五輪開催をめぐり、「外圧」という言葉が久々に注目された。推進派も反対派も、外からの声が事態を変えてくれることを願った。2021年のいま、外圧の正体とは何か。 「なぜ今」「誰によって」 背景の吟味を 猿田佐世さん(シンクタンク「新外交イニシアティブ」〈ND〉代表) 東京五輪・パラリンピックの開催について、菅義偉首相は6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)で「全首脳から力強い支持を頂いた」と言いました。注意しなければならないのは、このような海外の「お墨付き」は、日本の政治家や官僚たちが自分たちの政策・方針を推し進めるための常套(じょうとう)手段だということです。 今回も官僚が根回ししたのでしょう。日本が「安心安全に開催する」と強調すれば、目くじらを立てて反対する外国の首脳はいない。それを「全首脳の支持」と言うのは一種の外圧利用です。こうした「日本政府製」の外圧の例は挙げればキリがありません。 なお、外圧の圧倒的多数は「米国発」です。日本が時間とお金をかけて米国に働きかけ、「米国の意向」として発信されます。 外圧について考えていきます。この後、「受けてきたのは日本だけではない」と語る評論家・中野剛志さんや、「日本って、人権やジェンダーといった面で世界からの声に鈍感でしょ?」と指摘する文芸評論家・斎藤美奈子さんが登場します。 日本政府は、米国の有力なシ… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:3268文字/全文:3753文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「復興五輪は破綻している」 被災地と絶たれたつながり
ソフトボールの日本―豪州戦は無観客で行われた=2021年7月21日午前、福島県営あづま球場、朝日新聞社ヘリから、迫和義撮影 観客のいないスタンド。「復興五輪」というフレーズに思い描いたのは、こんな光景だっただろうか。東日本大震災の被災地、宮城・福島で21日、東京五輪の開幕に先立つ競技が始まった。震災から10年。被災者たちの思いが交錯した。 満開迎えるも無観客 何度も「残念」 福島県営あづま球場(福島市)では、ソフトボールの日本―豪州戦があった。藤田倭(やまと)選手は「福島の地でソフトボールが出来るのがうれしい」と試合後に話した。 三回裏、内藤実穂選手が2点本塁打を放つと、日本側ベンチから拍手や歓声がわきあがった。その音がよく球場に響く。取り囲む約1万4千席の観客席は無人。組織委員会は盛り上げの一助にと、ベンチ裏に設置したスピーカーから「ざわざわ」と人混みのようなノイズ音をわざと流し続けた。 球場の観客スペースに設置されたスピーカー=2021年7月21日午後4時33分、福島市の福島県営あづま球場 球場の近くに住む阿部保昭さん(77)は「復興に向かう姿を多くの人に見てほしかった」と無念さをにじませた。 地域起こし団体の会長として… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1178文字/全文:1589文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「先生、見て!」 保育士2年目、園児から教わったこと
大学を卒業して保育士になった、さいおなおさん。 幼いころから自分より小さい子の世話をするのが好きで、よく一緒に遊んでいた。 そのころからなんとなく「保育園の先生になりたいな」という気持ちがあって、保育科のある4年制大学へ進み、夢をかなえた。 保育士2年目で2歳児クラスを担任。日々、目まぐるしく変わる子どもたちを見るのが楽しかった。 何をしても予想外のことを返してくれるから、対応するのは大変だったが、喜びの方が上回っていた。 思い知らされた出来事 そうは言っても、世間のイメージ通り、保育士の仕事は激務だ。 子どもたちと接する時間以外にも、事務仕事がたくさんあった。 一人一人に向き合い続けると仕事が終わらないので、自然と「いなす」ことを覚え、時間を確保するように。 そんなある日、「保育士失格だな」と思い知らされた出来事があった。 園児の女の子を、迎えに来た母親に引き渡す時のこと。 「ママ!」と抱きつく娘に… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1446文字/全文:1865文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪会場で掲げた感謝 ちょんまげ隊長と東北の10年
東京五輪の競技が始まった21日。サッカー女子の試合が行われた宮城スタジアム(宮城県利府町)のスタンドに、横断幕が広げられた。「Thank you for your support JAPAN is moving forward with HOPE」。支援をありがとう、日本は希望とともに進みます――。 掲げたのは、千葉県柏市の靴屋、角田寛和さん(58)。「ちょんまげ隊長ツン」と名乗り、その名の通りの格好で2008年の北京五輪から、五輪とサッカーW杯の現地観戦を続けてきた。 宮城とのつながりは、2011年にさかのぼる。 3月11日。 SNSで流れてくる被災地の現状に、いてもたってもいられなくなった。履く靴がないという声を聞き、約600足を車に詰めて、宮城県の塩釜市や名取市、岩沼市を巡った。 避難所になっている学校の校庭に、ぼんやりと座っている小学生たちがいた。「道化になれたら」という思いでかぶっていたちょんまげに、子どもたちが集まった。なかの一人が、ちょんまげを奪ったまま、なかなか返してくれない。帰ってほしくないのかと思い、涙が出た。「返してよ。大丈夫、また来週来るから」と気づいたら口にしていた。 約束が次の約束につながり、それから3~4カ月間は毎週末、その後は月に1回のペースで東北に通いつめた。避難所の要望を聞きながら扇風機や洗濯機などを届け、訪問は10年間で150回を超えた。 11年の年末のことだ。 宮城・牡鹿半島の子どもたちを地元のJリーグチーム「ベガルタ仙台」の試合に連れて行くバスツアーを企画した。 参加したのは親子約30人。行きは興味がなさそうにしていた子どもも、帰りの車内ではすっかり笑顔になっていた。津波で妻と息子を亡くした男性が去り際に「すごく楽しかった」と言ってくれた。スポーツには人を元気にする力があると強く感じた。 海外のスポーツチームなどから被災地に寄せられた支援やメッセージに感謝の思いを示そうと、翌12年に日本で開かれたサッカー女子U20W杯の会場で、横断幕を掲げた。英語やスペイン語、ポルトガル語、ハングル、中国語……。取り組みは海外にも発信されたという。「スポーツを通じてエールを送り合える。これが国際交流かと感じた」 スポーツを通じた国際交流に思い入れがあるのは、もう一つ理由がある。 初めて五輪を生で見た08年… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪高検の曽木検事長が会見「適正な捜査・公判を指導」
森岡みづほ2021年7月21日 20時30分 大阪高検検事長に16日に就任した曽木徹也氏(61)が21日会見した。大規模な殺傷事件や経済事件、虐待事件などを挙げ「複雑な事案も多数発生している。捜査・公判を適正に行えるよう指導したい」と語った。 曽木氏は東京都出身で早稲田大学法学部を卒業後、1986年に任官。東京地検検事正、高松高検検事長などを歴任した。 郵便不正事件をめぐる証拠改ざん事件が発覚した翌年の2011年、大阪地検特捜部長に就任して以来の大阪勤務となる。曽木氏は「部下たちは反省しつつ、信頼を回復すべく仕事をしてくれた」と当時を振り返り、「大阪は人もざっくばらんで気取りがない。再び大阪で勤務でき、うれしく思っている」と語った。(森岡みづほ) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪ソフト川畑、母校も応援 窓開け声出しは1人だけ
東京五輪の開幕に先駆け、福島県で21日午前にあったソフトボールの日本―豪州戦に、内野手として出場した川畑瞳選手(デンソー)の母校・神村学園(鹿児島県いちき串木野市)では、生徒ら400人がテレビ観戦し、声を出さずに応援した。 この日は終業式で全校生徒が登校。観戦は新型コロナ対策のため3年生とソフトボール部員に限定し、いすの間隔をあけて消毒を徹底。窓も開けて行われた。 高等部の山田浩一校長は「全校生徒が一緒になって感動を味わってもらいたかったけど、やむを得ず最後の年の3年生だけにした。心の中でしっかり応援してほしい」と話した。 大声を防ぐため、ソフトボール部の主将久保初希さん(17)が1人だけ声を出すことに。マスク越しにマイクで「がんばれ、がんばれ、カ・ワ・バ・タ!」と声援を送り、生徒たちは手拍子で合わせた。 試合は8―1のコールド勝ち。久保さんは「先輩がオリンピック代表になったのは私たちの誇り。これからの活躍が楽しみです」と期待を寄せた。 この日は川畑選手の父で同校… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:160文字/全文:604文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル