長男夫婦や孫も一緒に暮らす3階建ての一軒家。82歳の男が選んだのは、自ら介護していた79歳の妻の殺害だった。 「妻をあやめました」。事件は、被告の男からの110番通報で発覚した。被告の裁判員裁判は今年5月、東京地裁で始まった。起訴内容によると、2020年12月2日午前7時ごろ、東京都内の自宅ベッドで、妻の首を絞めて窒息死させたとされる。車いすに座って出廷した被告は、殺人の罪を認めた。 弁護人「命を奪って、どうしようと思ったのですか」 被告「私も一緒に天国へ行って、2人が病気から解放されればいい。そんな気持ちがありました」 42年連れ添った妻を殺害するまでに、なにがあったのか。検察の冒頭陳述や証拠として採用された捜査資料などから振り返る。 大学を卒業した被告は、信用金庫の職員として勤め、60歳で定年退職した。妻とは1979年に結婚。2014年ごろに長男夫婦と同居を始め、8歳と6歳の小学生の孫とともに3世代計6人で生活した。家族の関係は良好だった。 妻は19年から、全身の皮膚や内臓が硬くなる難病「全身性強皮症」で入退院を繰り返すようになった。翌20年の秋に肺炎が悪化して入院したが、自宅療養を望んですぐに退院した。 要介護認定は2番目に重い区分で、自宅には連日、介護スタッフと看護師が訪れた。午前9時に介護スタッフ、10時に看護師、午後3時に再び介護スタッフ、最後は5時に看護師が来た。 弁護人「介護スタッフや看護師がいないのは何時間ぐらいですか」 被告「日中はけっこう来ていただいたけど、夜遅くになると、こっちで見るしかありませんでした」 弁護人「トイレはベッド周りで済ませられましたか」 被告「それが、しなかったんです」 弁護人「なぜですか」 被告「部屋でにおいがするのがいやだっていうことで……」 療養中もリハビリに取り組むなど前向きだった妻はベッド脇のポータブルトイレの使用を嫌がったため、被告は毎夜、歩行器を使う妻を支えながら約5メートル先のトイレまで連れて行った。 長年連れ添った妻を介護していた被告ですが、自らも視力を失うなど、体調が思わしくありませんでした。法廷ではどんなやりとりがあり、裁判員はどのような判断を示したのでしょうか。 さらに一晩に10回、異変が… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
上半期の警察官・職員の懲戒、過去最少 コロナ禍影響か
2021年7月15日 10時30分 今年上半期(1~6月)に懲戒処分を受けた全国の警察官と警察職員は81人で、昨年の同時期から33人減った。警察庁が15日発表した。18人が逮捕されたが、処分者、逮捕者ともに統計が残る2000年以降では最も少なかった。 警察庁は「コロナ禍で外出する機会が減ったことが影響した可能性はある」としている。 処分の種別では免職が8人(昨年上半期から9人減)、停職が24人(同1人減)、減給が32人(同21人減)、戒告が17人(同2人減)。処分の理由は、盗撮や強制わいせつ、セクハラなどの「異性関係」が昨年から半減して21人。「窃盗・詐欺・横領等」は11人減の13人、「交通事故・違反」は5人減の11人だった。 逮捕の容疑は「わいせつ関係」が6人、飲酒運転などの「交通関係」が4人などだった。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
学術会議問題とは何か 任命拒否された加藤陽子氏が語る
編集委員・塩倉裕2021年7月15日 5時00分 なぜ任命拒否は行われたのか――。日本学術会議の会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題をめぐり、6人のうちの1人で歴史学者の加藤陽子・東京大学教授が朝日新聞社のインタビューに応じた。加藤さんは、任命拒否した理由を説明しようとせず、批判されても見直しに応じない現政権の姿勢を批判した。 日本学術会議は理学・工学や人文・社会など幅広い科学者が集う組織で、政府に政策提言する役割を担ってきた。菅首相は2020年秋、会議が新会員候補として推薦した候補者105人のうち6人を除外して任命する異例の決定をした。除外されたのは加藤さんのほか、宇野重規・東京大教授(政治思想史)、芦名定道・京都大教授(宗教学)、岡田正則・早稲田大教授(行政法学)、小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)、松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)。 問題は国会などで大きく取り上げられたが、菅首相は任命拒否の理由について「人事に関することで、お答えは差し控える」などとして具体的に説明していない。6人は拒否の理由や経緯が記録された文書の開示を政府に請求したが、政府は6月、不開示とする決定を通知した。 加藤さんは自身が任命拒否された理由について今回、「私が国民の前で(行政の問題点を)説明できる人間だったことが、不都合だったのではないか」と推測した。 除外されたのは、なぜ「6人」だったのか。この人数について加藤さんは、政権側の「シグナル」である可能性を指摘している。(編集委員・塩倉裕) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
虐待の痛みを知るホクト 迷子の柴犬に差し伸べられた手
柴犬「ホクト」と出会ったのは昨年12月、寒い日の夜だった。 日付が変わるころ、仕事を終えた儀同しょうこさん(42)は、東京都東村山市で車を走らせていた。 すると突然、目の前を何かが横切った。 急ブレーキをかけながら、しっぽのようなものが一瞬見えた。 車を止めて外に出ると、犬がいた。ボロボロの見た目でやせ細っていた。 飼い主が探しているかもしれない。 そう思って警察に連絡し、動物病院へ連れて行くことにした。 警察が飼い主を見つけてくれたが、動物病院で治療中であることを伝えると一方的に電話を切られた。 それから連絡がとれなくなり、3カ月後に儀同さんが引き取ることが決まった。 名前は聞けなかったため、ホクトと名付けた。 前の飼い主と暮らしたいのか、自分と暮らしたいのか、気持ちはわからない。 でも、ホクト自身の願いがかなうといいな、という思いから北斗七星にちなんで命名した。 心を開いてくれた瞬間 ホクトは人間に近づこうとしなかった。 長い柄のほうきを手にすると、急におびえた。 物を落とした時のガチャンという音を聞いただけで、ガタガタと震え出した。 なでようとするといつもビクビクして、どう甘えていいか分からないように見えた。 もしかしたら、虐待されていたのかもしれない。 そう思ったから、近づく時や触る時は必ず、先に声をかけるようにした。 「怒らないからね」「これから首輪をつけて散歩に行くよ」といった具合で。 1カ月半ほど経ったころ、初めてホクトの方から行動してくれたことがあった。 散歩の途中、脚を拭いてあげたタオルをしまおうと背を向けていた時のこと。 前脚でチョイチョイと、背中をたたいてきた。 やっと信頼してもらえたんだ。そう思えた忘れられない瞬間だ。 6月の「事件」、迷子に 6月22日の朝、自宅周辺を散歩中に「事件」が起こった。 通りすがった男性が突然「お… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
川で姉妹を二分 国の線引きに再び「ノー」 黒い雨訴訟
会員記事 戸田和敬、松尾葉奈、岡田将平2021年7月15日 6時45分 国の線引きに再び司法がノーを突きつけた。「黒い雨に遭った人は被爆者だ」と認めた14日の広島高裁判決。原爆投下から76年、法廷での戦いを強いられてきた原告らは早期の政治決着を願った。 「長い間、自分たちの証言が真実だと訴えてきた。もうこれで終わりにしたい」。原告の1人、広島市中区の前田千賀さん(79)が向き合ってきたのは、川を隔てて姉妹を二分した国の不合理さだ。 あの日、前田さんは母と妹の3人で、爆心地から19・9キロの水内村(現・広島市佐伯区湯来町)の自宅にいた。四つ上の姉は自宅近くの川を渡ったところにいた。突然の爆風に驚いた母は、幼い娘2人を連れて庭へ逃げた。焼け焦げた紙切れなどに続き、空から降ってきたのが黒い雨だった。水を引いている裏山、米や芋などを育てる田畑――。雨は一帯に降り注いだ。 前田さんが黒い雨の影響を意識し始めたのは、還暦を記念した中学校の同窓会がきっかけだった。100人ほどいた名簿には25人近い同窓生の名前がなかった。「こんなに亡くなるものか」。自身も中学生のとき、原因不明の鼻血に悩まされていた。そのとき、頭をよぎったのが父の活動だった。 川で線引き、姉だけが援護対象に 1976年に国が示した「線… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:1186文字/全文:1707文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「黒い雨に遭った人は被爆者」広島高裁、疾病要件も外す
戸田和敬、米田優人2021年7月14日 19時36分 広島への原爆投下後、放射性物質を含む「黒い雨」を浴びたとして、住民ら84人が被爆者と認めるよう求めた訴訟の控訴審判決が14日、広島高裁であった。西井和徒裁判長は「黒い雨に遭った人は、被爆者にあたる」として、84人全員への被爆者健康手帳の交付を命じた昨年7月の一審・広島地裁判決を支持。国から手帳の交付事務を任されている広島県と広島市の控訴を棄却した。 広島の黒い雨を巡り、高裁が判断するのは初めて。 黒い雨が降った一部の区域では、特例として被爆者と認める仕組みはあるが、原告らはこの区域から外れていた。広島市などは、区域の6倍の範囲で降ったと推定。この範囲で雨を浴びた人は今も約1万3千人いるとみる。一審判決は、黒い雨に遭い、がんなどの疾病にかかれば被爆者にあたるとしたが、高裁判決では疾病の要件がなく、より幅広く被爆者と認められた。新たな申請者が出ることも予想され、国の援護行政のあり方が問われそうだ。 西井裁判長はまず、被爆者援護法の根底には、国が特殊な戦争被害を救済するという国家補償的配慮があり、幅広く救う趣旨に沿って定められたと確認。原爆の放射能による健康被害を否定できなければ被爆者にあたるとし、放射能の影響を受けた「科学的な合理性」が必要だとする被告側の主張を退けた。 また、たとえ黒い雨を浴びていなくても、空気中の放射性物質を吸ったり、汚染された水や野菜を飲食したりする「内部被曝(ひばく)」によって健康被害を受ける可能性があったと指摘。広島に原爆が投下された後、黒い雨に遭った人は被爆者にあたるとした。 そのうえで、黒い雨が降った範囲について、国の援護対象区域から外れていても、黒い雨が降らなかったとするのは相当ではないとし、実際の降雨地域はより広いと認定。住民らは、証言などをふまえ、雨の降り始めからやむまでの間、いずれかの時点で降雨地域にいたと認められると判断し、県と市が住民らの手帳申請を却下したのは違法だと結論づけた。 国は一審判決後、検討会を設け、援護対象区域の拡大を視野に検証を進めている。厚生労働省は「国側の主張が認められなかったと認識している。今後の対応については関係省庁、広島県及び広島市と協議して対応して参りたい」とした。(戸田和敬、米田優人) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「本来被爆者とすべき」 広島高裁「黒い雨」判決要旨
広島への原爆投下後に降った「黒い雨」で、国が援護対象としていた「大雨地域」以外の人も被爆者と認めた14日の広島高裁の判決要旨は次の通り。 【原告全員を被爆者と認めた一審判決について、国などが「十分な科学的知見に基づいていない」などと主張したことについて】 被爆者を定義する被爆者援護法1条のうち3号の「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」は、言い換えれば、「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができない事情の下に置かれていた者」と解される。 この条文は、旧原爆医療法(1957年制定)から引き継いだものだ。この法律は原爆の被害が他の戦争被害と異なるという人道上の見地から、政治的な観点で制定された法律であり、科学的知見のみによって立つものでなかったことは明らかである。 科学的知見が重要であることを否定するものではないが、被爆者に該当するか否かの判断にあたっては、原爆の放射能により、健康被害が生ずることを否定できるか否かという観点から知見を用いるべきである。 該当すると認められるためには、特定の放射線の曝露(ばくろ)態様の下にあったこと、その態様が原爆の放射能による健康被害が生ずることを否定できないものであったことを立証することで足りる。 【「黒い雨」に遭った者は被爆者に該当するか】 「黒い雨」に放射性降下物が含まれていた可能性があったことから、雨に直接打たれた者は無論のこと、たとえ打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸引したり、地上に到達した放射性微粒子が入った水を飲んだり、放射性微粒子が付いた野菜を摂取したりすることで、内部被曝(ひばく)による健康被害を受ける可能性があったこと(ただし、被曝線量を推定することは非常に困難である)が認められる。そうすると、広島の原爆投下後に「黒い雨」に遭った者は、被爆者に該当する。 【「黒い雨」の範囲】 国などは、1時間以上雨が降り続いたとされる「大雨地域」内を援護対象とする特例措置が設けられたことをもって、区域外の者は該当しないことが当然の前提となっていたかのような主張もする。しかし論理的には、本来被爆者健康手帳を交付すべき者であったにもかかわらず、あえて交付せず特例措置とした疑いが強いといわざるをえない。 (大雨が降ったとされる)「宇田雨域」の範囲外であるからといって、「黒い雨」が降らなかったとするのは相当ではない。(宇田雨域より広い範囲に雨が降ったと主張している)「増田雨域」と「大瀧雨域」にも、「黒い雨」が降った蓋然(がいぜん)性があるというべきである。 個別に検討すると、原告はいずれも雨が降る間のいずれかの時点で降雨域にいたと認められるから、「黒い雨」に遭ったといえ、被爆者健康手帳の交付を義務づけるのが相当である。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福井・東尋坊で自殺装い殺人 21歳元少年に懲役19年
鈴木洋和2021年7月14日 20時30分 福井県坂井市の東尋坊で2019年、知人男性を自殺に見せかけて殺したとして、殺人や傷害などの罪に問われた元少年(21)に対する裁判員裁判の判決が14日、大津地裁であった。大西直樹裁判長は「(犯行グループで)主導的な役割を果たした」として、求刑通り懲役19年を言い渡した。 判決によると、元少年は19年10月、ほかの少年ら6人と共謀し、滋賀県内で嶋田友輝さん(当時20)=同県東近江市=を木製バットで殴ったり、地面に横たわらせて車で足をひいたりするなどの暴行を加えた。さらに車のトランクに監禁して東尋坊へ連れて行き、高さ約20メートルの崖から海に飛び降りさせて殺害した。 この事件ではこれまでに、他の少年ら6人に実刑判決が言い渡され、うち5人が確定、1人が控訴している。大西裁判長は、元少年がグループ全体の意思決定をしていたと認定。判決の言い渡し後、「執拗(しつよう)に暴行を繰り返され、どれほど苦しかったか。嶋田さんの絶望感や痛みを想像しましたか。過ちはあまりにも重大かつ深刻で取り返しがつかない」と説諭した。(鈴木洋和) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪開会式「きらびやかなものから変化」コンセプト発表
2021年7月14日 20時31分 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の中村英正運営統括は14日、東京・国立競技場で23日夜に行われる五輪開会式の演出について「きらびやかなものからコンセプトを愚直に伝えるものに変化した」と述べた。 組織委はこの日、パラリンピックを含む開閉会式4式典共通のコンセプトを「Moving Forward(前を向いて生きる力)」と発表。五輪開会式は「United by Emotion(感動でつなぐ力)」、閉会式は「Worlds we share(多様な世界の共有)」がコンセプトになる。 また、演出を統括するエグゼクティブプロデューサーをリオデジャネイロ五輪閉会式の引き継ぎ式などに関わった日置貴之氏、聖火台制作はデザイナーの佐藤オオキ氏が務めると発表した。 開閉会式の演出を巡っては昨年末、狂言師の野村萬斎さん(現アドバイザー)率いる7人のチームが解散。パラリンピックの担当だったクリエーティブディレクターの佐々木宏氏に権限を一本化していた。しかし佐々木氏は今年3月、出演予定だったタレントの容姿を侮辱するようなメッセージを演出チームのLINEに送った責任をとって辞任した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
速度違反見逃しなどで3警官を懲戒処分 北海道警
2021年7月14日 21時00分 警察官が私用で運転する車の速度超過違反を見逃したとして、北海道警は、方面本部の30代の男性巡査部長を犯人隠避と証拠隠滅の疑いで書類送検し、減給100分の10(6カ月)の懲戒処分にしたと、14日発表した。 監察官室によると、巡査部長は、道内の国道で交通違反の取り締まりをしていた昨年8月30日午後8時20分ごろ、30代の男性巡査部長が速度超過したのを見逃し、同9月3日に速度を記録した文書を破棄した疑いがある。巡査部長は「手続きが面倒だった」と話しているという。道警は見逃された巡査部長も戒告の懲戒処分とした。 また、物損事故を起こして逃げたとして、道警は20代の男性巡査長を道交法違反(事故不申告)の疑いで書類送検し、停職6カ月の懲戒処分とした。事故の約2時間後に呼気検査を受け、摘発の基準値未満の酒気を帯びていたという。15日付で依願退職する。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル