科学者の責任とは?問い続けた大学講義 38年の歴史に幕
もしも自分の所属する組織が公害や薬害に加担していたら、あなたはどうしますか――。そんな問いかけで学生たちに科学者の責任を訴え続けてきた大阪市立大学の木野茂さん(80)の講義が、38年間の幕を閉じた。問題の当事者から話を聞き、討論や意見発表で考える力を鍛えた学生は総計1万人を超えたという。 「この授業でこれまで知らなかったことを学び、多くのことに気付きました」「他者の言葉を聞くことで様々な見方が得られ、初めて自分自身の考えと向き合えることもありました」 木野さんの今期の講義「ドキュメンタリー・環境と生命」が最終回を迎えた今月2日、学生たちが最後の意見発表で口々に語った。 受講生は34人。水俣病や難民問題などの記録映像を見て、お互いの意見を評価し合ったのが講義の前半。後半では「セクシュアルマイノリティーと教育」「出生前診断は行われるべきか?」など、班ごとにテーマを決めて現状や背景への見解をまとめた研究成果を発表し、学生が自分たちで質疑や討論を仕切った。 「自分の頭で考えること」「権威を無批判に信じないこと」の大切さを一貫して訴えてきた木野さんが試行錯誤し、たどり着いた授業のスタイルだ。 もとは宇宙物理学を専攻して…この記事は有料会員記事です。残り1370文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル