日本で生まれたアカウミガメは、どのように北米大陸の海岸までたどり着くのか。詳細が不明なアカウミガメの回遊を解明しようと、名古屋港水族館(名古屋市港区)や海外の研究者らで作るチームが調査に乗り出す。チームが注目しているのはエルニーニョ現象による海水温の影響だ。 アカウミガメは世界の温帯・亜熱帯域に生息するが、絶滅が危ぶまれている。北太平洋での産卵場は日本の沿岸域にほぼ限られている。日本で生まれたアカウミガメは、北米大陸の西海岸まで太平洋を約1万2千キロ回遊することで知られるが、ルートなど詳しいことは分かっていない。 同館は1995年にアカウミガメの屋内での産卵、繁殖に世界で初めて成功した。米国の研究者などが97年から2013年にかけて行った調査にも、03年から参加。この調査では、回遊ルートの解明に向け、日本沿岸や米ハワイ近海などから位置情報がわかる送信機を取り付けた計231匹を放流した。 放流したアカウミガメの多くは、北太平洋中央部にとどまった。アカウミガメが多数確認されている米カリフォルニア半島沿岸までたどり着いたのは6匹だけだった。 6匹の分析から導いた仮説は その後の分析で、この6匹は… この記事は有料記事です。残り541文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戦争で故郷追われる人々は今も 写真家がたどるルーツと記憶の旅
時津剛2023年2月1日 18時00分 「北方領土の日」の2月7日を前に、歯舞群島にルーツをもつ写真家が、写真展「島々の記憶 ~故郷への想い、巡る旅~」(富士フイルムフォトサロン札幌、2月3~8日)を開く。色丹島や国後島など北方領土の元島民20人のポートレートや島の風景など、約40点を展示する。 東京都在住の山田淳子さん(40)。出身地の富山県には元島民が暮らす地域があり、5年前に、北海道釧路市に住む親類から、歯舞群島の志発島で曽祖母が5人の子どもを育てたという話を聞き「島を見たい、自分のルーツを知りたい」と思うようになったという。2019年にビザなし交流で色丹島を訪れたことを皮切りに、これまで北海道や富山に住む元島民40人を訪ね歩き、写真とともに証言を記録してきた。 2020年以降、コロナ禍で島に上陸できない状況の中、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。色丹島の元島民がつぶやいた「昔、ソ連兵が島に入ってきた時と重なる」という言葉が心に残る。「国家や戦争に翻弄(ほんろう)され、故郷を追われる人々がいるのは昔も今も変わりません」 終戦から78年。ロシアによる実効支配は続き、元島民の平均年齢は80代後半に達する。「死ぬ前にもう一度島を見たい、島のことを知ってほしいという人たちがいます。これからも多くの元島民に会って話を聞き、その思いを伝えていきたい」。自身のルーツに思いをはせながら、島々の記憶を巡る旅を続けるつもりだ。(時津剛) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
300年の歴史持つ温泉郷に危機 「原因不明」温度と湯量に謎の変化
青森県弘前市の中心市街地から車で約30分。雪の壁が続く山道を越えた岩木山の南麓(なんろく)に「嶽(だけ)温泉」はある。300年以上の歴史があるとされる小さな温泉郷に、昨年末から大きな問題が持ち上がっている。 硫黄の香りがほのかに漂う入り口を入ると、6軒の旅館が身を寄せ合うように立つ。だが明かりは消え、玄関前に除雪されていない雪が、そのまま積み上がっているところもある。 「全国旅行支援もあって、コロナ禍で減った客も戻りつつあったのにやりきれない」。江戸末期に創業された「小島旅館」当主で、嶽温泉旅館組合の小嶋庸平組合長は、苦しい胸の内を明かす。 小嶋さんによると、嶽温泉には温度と泉質の異なる四つの源泉があり、各旅館ではこれまで、源泉を混ぜ合わせて、風呂の温度や泉質を調整してきた。 ところが昨年12月28日以… この記事は有料記事です。残り581文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
96歳の管理人「4人の孤独死を見た」 震災28年、老いる復興住宅
有料記事 田添聖史 井岡諒 玉置太郎2023年2月1日 14時00分 96歳になる大櫛(おおぐし)久子さんの一人暮らしの部屋には、同じ団地の住民から、しばしば電話がある。 「お米ちょうだい」 「ヘルパーが来たら、代わりに家の鍵を開けて」 「救急車を呼んで」 大櫛さんの住む神戸市営住宅は、阪神・淡路大震災の被災者向けの「復興住宅」だ。高層団地が立ち並ぶ地域にあり、約180世帯が暮らす。 入居から23年。高齢者が増えた住宅で、大櫛さんは管理人を務めている。 1995年1月17日の地震で、大櫛さんが住んでいた神戸市兵庫区のマンションは倒壊。避難所、親族宅、仮設住宅を転々とした。99年、5回目の抽選で、東灘区の復興住宅を当てた。 被災者の入居から2年ほどたっていたが、自治会はなく、敷地にゴミが散乱していた。 「このままでは本人がつぶれる」 「安心して住める環境とちゃ… この記事は有料記事です。残り1772文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
宮台さん「踏ん切りつきにくい」 襲撃容疑者とみられる男の死亡受け
大内悟史2023年2月1日 14時31分 東京都立大教授で社会学者の宮台真司さん(63)は1日、自身が襲撃された事件の容疑者とみられる男が死亡したことを受け、ネット配信の動画を通じてコメントを発表した。 宮台さんは、死亡の一報について、「けさ9時に警視庁の方が来て、犯人死亡とその周辺の情報をいただいた」と明かした。容疑者とみられる男の死亡が判明したことについては、「家族や関係者の方々に危害を加えられる可能性がなくなり、とてもほっとしている」と、捜査の進展に安心した表情を見せた。 宮台さんは一方で、「気持ちの踏ん切りがつきにくい感じ」があると話した。「どこまで(犯行に至る)動機が分かるのか、よく分からない。もし動機が分かれば、今後、表現者やそのほかの方々がどういうことに気をつけなければいけないか、というある程度の教訓が得られる。あるいは、世の中にどういう動機をもつ人がどう分布しているのかについて新しい情報が得られる。両方とも不確かになってしまう可能性がある」と述べ、「釈然としない気持ちのまま、問題を解決できた気持ちにならないまま、先に進んでしまうのが残念だ」と苦しい胸の内を明かした。 番組は「ビデオニュースドットコム」が自社サイトやユーチューブなどを通じて配信し、宮台さんとジャーナリストの神保哲生さんが出演した。(大内悟史) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
加熱するラン活 トレンドは「多様化」「ジェンダーレス」ともう一つ
人気ランドセルメーカーの土屋鞄(かばん)製造所(東京都足立区)は31日、来年春に入学する子ども向けに3月1日から発売するランドセル全52種類を発表した。理想のランドセルを求める「ラン活」は年々過熱するが、今年の注目トレンドは「多様化」「ジェンダーレス」に加え「軽さ」だという。 東京都中央区で行われた発表会にはディープレッドやネイビー、カーキなど約40色のランドセルが並んだ。同社によると、「男の子は黒、女の子は赤」という固定観念がなくなり、好みの多様化と多色化が進んでいるという。 小川裕一朗・ランドセル事業企画部長は「多様化の背景には、子どもの個性を認めたい、伸ばしたいという心理があり、ジェンダーレスの波が来ている」と説明する。 来年度入学向けの販売価格は6万~10万円台。店舗と同社の電子商取引サイト(https://tsuchiya-randoseru.jp)で販売する。同社は1965年創業で、ランドセルは全て職人による手作りという。 2021年から「自由な色選… この記事は有料記事です。残り503文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「性別欄」が苦痛だった山崎ナオコーラさん 人の数だけ性別はある
有料記事 聞き手・高重治香2023年2月1日 11時30分 入学願書や履歴書の性別欄をなくしたり、「男性」「女性」以外の選択肢を加えたり、性別欄が変わってきました。幼い頃から性別欄の存在に苦しさや憤りを感じてきたという、作家の山崎ナオコーラさんに話を聞きました。 ――子どもの頃から、性別欄に性別を記入することが苦しかったとエッセーで書いていました。 「小学1年生ぐらいの時から、性別を問われることが苦痛でした。自分では女の子とも男の子とも思っていないのに、聞かれたら言葉で返さなければならない。申込書などの書類で性別に丸をつけるのもつらかったです。でも、世の中そういうものなのかと思って仕方なくつけていました。男女別の名簿や、ランドセルが黒と赤に分かれていることも含めて、人間は一人一人違うのに、性別でまとめられる感じが苦痛でした」 ――大人になってからはどうですか。 「この数年、書類に性別欄があっても、問題なさそうな時は記入していません。子どもの学校や自治体の書類で『父親』か『母親』かを記入する欄があっても、『親』と書いて出しています。それでとがめられたことはありません。たとえば病院の問診票であれば、性別を書く意味が分かるので書いています。でも、性別を聞いても何の情報になるのかわからないようなシーンで性別を聞いている書類が、とても多いと思います。本人の特定のためなら、生年月日だけでいいのではないでしょうか。自治体など組織の中でも個人個人の考え方はもう進んでいるのに、なんとなく性別欄という形式が残ってしまっているのではないかと感じます」 ――近年は、「その他」や「答えない/選ばない」という項目がある性別欄も増えました。 「『その他』という選択肢に… この記事は有料記事です。残り1588文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広がる「半農半X」 農作業もアートやうどんも楽しむ独自のかけ算
農業に携わりながら、自分のやりたいことを実践する「半農半X(はんのうはんエックス)」という生き方がある。生き方に悩んだ男性の提唱から広がり、広く注目を集め始め、岡山県内でも取り組む人たちが出てきた。 半農半Xは、身の丈にあった小規模な農業を生活に取り入れつつ、やりがいを持てる別の仕事やボランティアなど(X)にエネルギーを傾ける生き方を指す。細かな定義は無い。ベランダ菜園と仕事の組み合わせでも、Xがいくつあってもいい。都会でも地方でも実現可能。兼業農家の中で、農業以外の活動にやりがいを感じていれば、それは半農半Xと呼ぶことができる。 生み出したのは、京都府綾部市出身で、半農半X研究所代表の塩見直紀さん(57)=山口県下関市=だ。兼業農家の家庭に生まれ、大学卒業後に大阪の通販会社に入社。20代後半で自身の人生や地球温暖化などの環境問題とどう向き合うか模索を続けていた。 そして1990年代半ば、作家・翻訳家の星川淳さんの「半農半著」という言葉に出合った。農業に携わりながら他の天職を全うする方向に「これだ!」と感じ、「半農半X」という概念が固まった。 お金で買えないぜいたく 塩見さんがこの考えを周囲に… この記事は有料記事です。残り1840文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
東京・神奈川で中学入試 受験率は上昇? 開成、この5年で最多
東京と神奈川で1日、私立中学入試がスタートした。進学塾・栄光ゼミナールによると、1日午前には、首都圏の約220校で試験があるほか、公立中高一貫校や国立大付属中の一部でも入試がある。 開成中(東京都荒川区)では、午前7時に門が開くと、受験生らが続々と入っていった。門の前では受験票を確認したり、付き添いの親らが「頑張ろう」と声をかけたりしていた。東京都三鷹市の受験生(12)は「ここが第1志望。最後まで諦めずにできるところを頑張る」と話した。同中では昨年より志願者が83人増え、過去5年で最多の1289人となった。 中学受験生は、近年増え続け… この記事は有料記事です。残り387文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
理不尽な校則、生徒主体の見直しに疑問 識者「校長の一言で済む話」
校則を変えるのは、生徒か、学校か――。近年、「下着を白に限定」「冬でもマフラーの着用禁止」などの理不尽な「ブラック校則」が社会問題になるなか、全国で校則を見直す動きが広がっている。ただ、名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)は、生徒を主体とした校則の見直しが「美談」にされているとして警鐘を鳴らす。 理不尽な校則を子どもたちに変えさせるのは「理不尽」 今、校則改革の物語のほとんどは、子どもたちが主体となって校則を変えていくものになっています。でも、「まずは先生が変わらないといけない」というメッセージを色んな人に理解してもらいたいと思っています。 僕は教育学者として、子どもたちが主体的であることはすごく大事なことだと思います。校則をゼロから作るときに、子どもたちが「このルールは必要だね」と議論するのはすごく素敵だし、それだったらやってもらいたいと思います。 一方で、今は理不尽な校則が多いなかで、それを子どもたちに変えさせるのは「一体どれだけ理不尽なのか」と思います。 ある高校の生徒会では、腕まくりを解禁してもらうために5年かかったそうです。「そんなの自由じゃん」と僕は思いますが、子どもたちに5年も努力させて、少しの自由だけを認めて、「子どもたちが主体的に動きました」と美談になっている。 でも、こんなのは地獄絵図だと僕は思います。「腕まくりは好きにすればいい」という校長の一言で済むことなんです。 理不尽な校則がなくならないのは、先生や学校だけの責任ではない――。記事の続きで内田教授は、校則を厳格化してしまう社会の構造的問題を明らかにし、「校則のあるべき姿」について語ります。 校則における加害者、被害者の構図で言えば、被害者に変えさせて、それが美談になるというのは教育上も非常に良くありません。コストパフォーマンスからしても、5年かけてこの程度のことが実るだけなら、僕は校則改革はやらなくていいし、他のものにエネルギーを使ったほうがいいと思います。別に他の色んな場面でも、子どもの主体性は発揮できます。 先生「ルールなくしたら何が起きるか…」 理不尽な校則がなくならない理由の一つは、先生がまだまだ子どもを信じ切れていないのだと思います。 背景には1980年代ごろに… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル