部下からメールが届いたのは、昼ご飯を食べ終えたあとだった。自室でゆっくりしていると、「北海道の知床半島沖で観光船が浸水」と連絡があった。 4月23日午後2時ごろのことだ。国土交通省の坂巻健太・大臣官房審議官(当時)にとって、長い日々の始まりだった。 午後6時ごろ、今度は上司から連絡が入った。「現地対策本部長として、明朝7時に羽田を発つ飛行機で現地へ行くように」 すぐに出勤した。誰を現地に連れて行くかなど、省内での打ち合わせに追われた。着替えを取りに帰宅できたのは翌24日の午前5時ごろ。息つく間もなく羽田空港に向かった。 乗客の関係者は現地に来ているのか。事業者の様子は。家族対応はどうなっているのか。何もわからないままだった。 自分の未熟さ、悔いた 女満別空港(北海道大空町)… この記事は有料記事です。残り1377文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「今も苦しむ自衛官のため」性被害訴え 23歳の勇気、改善に生かせ
訓練中などの性被害を訴えていた元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(23)が、加害を認めた男性隊員4人から謝罪を17日に受けた。自衛隊での性暴力やハラスメントは繰り返されており、今回も氷山の一角だ。「今も苦しむ自衛官のために」と五ノ井さんは、リスクを承知で実名で訴えた。 「胸をつかまれキスをされた」「大量にお酒を飲まされホテルに連れて行かれた」 現役隊員らが対象のネットアンケートへの自由記述だ。五ノ井さんは7~8月、オンライン署名サイト「Change.org(チェンジドットオーグ)」の協力で、隊内におけるハラスメントの経験を調べた。146人から回答があった。 ハラスメントの種類(複数回答)はパワハラが101件でセクハラが87件。女性の回答者の9割弱がセクハラまたはマタハラを経験していた。未成年に飲酒させることや、強制性交にあたるような記述もあった。 浮かび上がるのは自浄作用のなさだ。上司らに相談しても、「訴えを公にしたり大ごとにしない方がいいと助言された」という回答もあった。被害をきっかけに退職を選んだ人も複数いたという。 五ノ井さんの事例でも、上司… この記事は有料記事です。残り717文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
殺人容疑で逮捕の工藤会系組幹部「暴力団では珍しい経歴」 王将事件
「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する王将フードサービス社長だった大東(おおひがし)隆行さん(当時72)が2013年12月に射殺された事件で、特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄容疑者(56)が殺人容疑で京都府警に逮捕された。 関係者によると、田中容疑者は福岡県出身。都内の大学を中退後、旅行会社などに勤め、主に関西地方で働いていた。関係者は「暴力団としては珍しい経歴」と話す。 その後、工藤会の傘下組織を紹介してもらったことを機に、構成員になったと言われている。13年の事件当時、工藤会で主要組織の幹部を務めていたという。 口が堅いとの評判、組織内で信用集めたか 福岡県警OBなどによると… この記事は有料記事です。残り424文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
パトカー先導ノンストップ 2頭の「VIP待遇」 パンダ来日50年
ジャイアントパンダが日本に初めてやってきてから28日で50年を迎えた。中国からカンカンとランランを迎えた上野動物園(東京都台東区)では、輸送の際に2頭を入れた箱の展示が始まった。日中友好の証しとされた2頭は、「VIP待遇」で運ばれていた。 ■飼育法も大きさも分からない… この記事は有料記事です。残り1708文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「共生社会」の未来とは 半世紀前から唱えてきた地から見えるもの
半世紀前から「共生社会」を唱えた地から見えるもの=藤原伸雄 東京五輪・パラリンピックで掲げられた「共生社会」。半世紀前に、その理念をもとに創設された会社がある。今年50周年を迎えた「オムロン太陽」(大分県別府市)。会社の歩みは、障害者が生活しやすい環境が街に広がっていく歴史とも重なっている。 車いすの社員らが行き交う社内で、入社3年目の大野友滉さん(29)が車いすでも仕事がしやすい高さの作業台で、もくもくと電子部品の組み立て作業を進めていた。別の作業レーンでは、聴覚障害を持つ9年目の柳田詩織さん(27)が他の社員と打ち合わせをしている。健常者の社員がメモパッドに文字を書き、柳田さんに示すと、右手の手のひらで胸をなで下ろし、「わかりました」と柳田さんが手話で伝えた。他の社員が「ありがとう」と手話で返答した。 いずれも日常の風景だ。同社は社会福祉法人「太陽の家」(同市)を創設した故・中村裕博士と、オムロン(京都市)創業者の故・立石一真さんが共同出資し、1972年4月8日に創業した。現在、社員72人のうち32人が身体や聴覚、精神などに障害がある。 オムロンの主力製品の制御機器用ソケットやスイッチ、センサー類を生産する。2020年度の売り上げは14億9千万円で営業利益は約7千万円にのぼる。 特徴的なのは、給与水準に障害の種別や等級は反映されないことだ。健常者も障害者も同じ給与体系で、オムロン太陽の立石郁雄社長(55)は「人を仕事に合わせるのではなく、仕事を人に合わせている」という。 障害がある社員にできないことがあれば、できるように工夫し、社員一人ひとりの個性や能力を引き上げる努力をしているという。手が使えなければ、足で作業できる仕事を生み出す。社員同士で話し合い、作業ラインを進化させている。 会社の設立とともに、周辺の施設も変わっていく。 創業から5年後の1977年… この記事は有料記事です。残り1534文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ひったくり犯に狙われた街、今は昔 スーツケースの音が風景を変えた
大阪市内で最大の繁華街の一つ、ミナミ。その中心である道頓堀から東に数百メートル行くと、中央区島之内(しまのうち)地区に入る。飲食店は少なくなり、マンションや中小の事業所が多い一角だ。 「ここはかつて、『日本一のひったくり道路』なんて言われていたんです」 40年以上ここで暮らし、地元自治会の事務局を務める川口渇弘(かつひろ)さん(77)は話す。 発生が多かったことは大阪府警のデータからも明らかだ。2008年(48件)から17年(15件)まで、府内の地域別では島之内が最多だった。 20年前の体験「恐ろしさ消えない」 ミナミと目と鼻の先にある島之内には、繁華街で働く人が多く暮らしている。 かつてよくひったくりに狙われたのは、そういう人たちが夜、勤務を終えて帰ってきたころだった。 ミナミでスナックを営み、かつて島之内に住んでいた女性(70)=奈良県生駒市=は、約30年前の被害体験を語ってくれた。 初秋の夜だった。店の営業を終え、午前4時ごろ、売上金約20万円が入ったバッグを肩にかけ、暗い路地を歩いていた。少し酔っていた。 「音も気配もなくて。あっ、と思った一瞬やった」 かつてひったくり多発エリアだった大阪市の島之内地区。しかし、今は様子が違います。記者が現場を歩いてみると、ひったくり激減には思いもしない要因が絡んでいました。 突然ぐっと体がこわばった… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「かわいい」だけでは勝てない 「ミス」の枠を壊した新「ミスコン」
エントリーは女性だけ、ステージ上でウェディングドレス――。「女性らしさ」や容姿が評価の中心だった大学のミスコンテストが、変わりつつある。 男子学生や性的マイノリティーの学生らにも門戸を広げ、採点基準も変更。多様性が重視される時代に合わせ、学生らが脱ミスコンに動いている。 採点基準を変更 埼玉大(さいたま市桜区)は今年から応募要件や評価基準を変更し、性別不問で実施することになった。名称も「ミスコンテスト」から「Saidai Contest(埼大コンテスト)」に変えた。 「これまでは『かわいい』というだけで参加できたが、それだとダンスなど特技があって『表現』を追求したい人らは外れてしまうため、基準の幅を広げた」。運営する学生団体の責任者・木本真冬花さん(20)は、こう説明する。 2020年度までコンテスト… この記事は有料記事です。残り1392文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戦争被害者に寄り添い歌う 五十鈴中が全日本合唱コンへ選んだ曲
第75回全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)は29日、青森市で開幕する。30日に中部支部代表として三重県内から中学校部門同声合唱の部に出場する伊勢市立五十鈴中の合唱部を紹介する。 たとえ太陽が輝かないときも、私は太陽(希望)を信じる――。 第2次世界大戦時にドイツにあった強制収容所の壁に書かれていた言葉をもとにした英語の曲「Even When He Is Silent」(たとえ神が沈黙し給(たま)うときも、アルネセン作曲)は、2曲目として選んだ曲だ。 五十鈴中の合唱部を指導して18年目で、現在は部活動指導員として指揮者を務める河俣和子さん(67)が「五十鈴の子たちのたっぷりとした響きに合う曲を」と、今年1月に選んだ。 翌月ロシアがウクライナに侵… この記事は有料記事です。残り450文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
バスケ部を辞めて始めた農業 中学生の心奪った「森のキャビア」
「森のキャビア」と呼ばれる豪州原産の柑橘(かんきつ)系フルーツ「フィンガーライム」の栽培に15歳の少年が挑んでいる。 小さな円筒形の実を割ると、中から粒がいっぱいの実が現れる。高級食材のキャビアに似ていることから、「森のキャビア」とも呼ばれる。欧米で人気に火がつき、国内では和歌山などで数年前から栽培が始まっている。 栽培に取り組むのは、高知県土佐市に住む、県立春野高1年、長尾秀一郎さん。中学1年生だった2020年3月、テレビ番組でフィンガーライムを目にし、すぐに近くの苗木屋で3本ほど購入した。 フィンガーライムの魅力はキラキラと光る果肉だ。白身魚のカルパッチョやケーキに絞ってかけると映える。流通量が少ないので、高い単価での販売も期待できる。 高知県土佐市の市街地を一望できる山を、長尾さんは家族とチェーンソーとのこぎりで2年かけて開墾した。雑木と雑草が生い茂る800平方メートルほどの荒れ地を「果樹園」に変えた。 ちょうど、中学に入って始めたバスケットボール部を半年でやめた時だった。週末を持て余し、山へ通い始めた。 「木を切るのが楽しくて山の… この記事は有料記事です。残り682文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「危機を機会に」 東大未来ビジョン研究センター長・城山英明さん
2022年10月28日 7時00分 国際シンポジウム「朝日地球会議2022」(朝日新聞社主催)では、特別共催者として東京大学未来ビジョン研究センターの城山英明センター長が登壇し、危機を機会としていく大切さについて話した。 朝日地球会議2022の情報はこちらから 今年で7回目を迎えた「朝日地球会議」。「希望と行動が世界を変える」をメインテーマに10月16日から4日間配信しました。ご視聴ありがとうございました。主なプログラムのアーカイブ動画は10月下旬から視聴できます。 気候変動や安全保障などのリスクは複合的で相互に影響しています。ウクライナ戦争で小麦の供給が減ったため食糧価格が上昇しており、気候危機や戦争に対して柔軟な食糧システムをどう作るかが課題となっています。エネルギーでは、化石燃料に回帰する動きがある一方、再生可能エネルギーや省エネを促進して新しいシステム作りにつながる可能性もあります。危機をいかに機会としていくのか――。朝日地球会議を通じて、企業、ビジネスを含め様々な関係者とともに、考えるきっかけにしていただきたいと考えています。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル